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ルッキズム狂想曲〜哀しき女達の場合〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・文豪Aの憂鬱

 大正末期から昭和中期まで活躍した文豪・Aがいた。


 Aの作品は素晴らしいが、破天荒な私生活は度々問題になり、文学賞欲しさに先輩作家に激しい訴えを繰り返したり、服薬自殺をしてみたり、薬物中毒になったりしていた。


 そんなAだったが、2028年の世に転生した。


 パッと目を引く美少年でAIには常に「イケメン」と言われていた。


 それに関しては両親は鼻高だったが、奇抜な言動を繰り返し、発達障害や精神障害と診断され、精神病院で過ごす事も多かった。


 元々文才はある。


 入院時、とあるライトノベルの新人賞に応募したら、大賞を受賞。順調に作品の人気が出るが、AはSNS上で問題発言、特に同性愛者への差別発言が炎上し、決まっていたアニメ化もぽしゃった。作品も回収され、事実上、Aの作家活動は墓場と化したわけだ。


 その後、Aは発達障害者として低い賃金で作業所で働いていたが、女性問題を起こし、そこでも出禁となる。もっとも顔を活かして女に食わせて貰っていたので生活は問題なかったが。Aは皮肉にもルッキズムの世に救われていた面もあった。


 違う世の中だったらAも文豪として認められていたが、今はキレイキレイを求めるルッキズム社会。Aの居場所はヒモが欲しい女以外に無い。


 小説家も問題発言もしないAIにとって代わられた。出版社も手間や金が節約できてコスパもいいが、似たようなキレイキレイな毒にも薬にもならない作品しかなく、元から酷かった出版不況は、手がつけられないほど落ち込んでしまった。当然、新しい才能も出る事はなく文化は衰退し、気づけば政府が作った戦争プロパガンダのような作品だらけ。「差別をなくそう」「みんな平等」という綺麗事も巡り巡り戦争の引き金を引く事もあるのだ。キレイなものも度が過ぎれば毒になる。Aだけではなく文化自体が墓場と化した。


 そんな中、Aの文豪時代の作品は「人と違って尖っている、刺さる」と言われるぐらいだ。Aの作品はライトノベルのものも含めて再評価されつつあった。


「だから、作者の人格と作品は別物って言ってるだろ。おまえら、キレイキレイなルッキズムに走って文化殺して満足か? そのツケは必ず払う事になるぞ」


 Aはそう呟くが、もう誰も耳を傾けていない。日本は戦争をはじめ、一般市民も戦場や工場に行かされているからだ。もっともAは障害者手帳のおかげで戦場にいく事は無く命拾いし、反戦小説執筆に明け暮れていていたが、焼け石に水だろう。


 今は図書館も戦争プロパガンダ作品だらけ。こうして文化は失墜し、戦争へ走っていく。


 今日も日本人の頭の上に爆弾が落とされた。キレイキレイなルッキズムも何処かに消えてしまった。


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