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ルッキズム狂想曲〜哀しき女達の場合〜  作者: 地野千塩


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番外編短編・熟女

 AIだけでなく、配膳ロボットや配達ロボットなどの発展も凄まじい昨今。飲食店もほとんどが大手チェーンばかりの今だが、昔ながらの接客で人気を集めるカフェがあった。


 店主の綾子は、四十過ぎの地味な雰囲気の女性だったが、客の話をよく聞き、カウンセリングカフェとも呼ばれているぐらいだった。


 結局、人の話を聞き共感や愛情を示す事は、AIやロボットにはできない。今後もカウンセラーのように人にしかできない仕事の需要が高まっていくと言われていた。


「綾子さん、今日もAIもブスとか判定されて大ショックです」


 晶穂はまだ大学生だったが、今の時代はルッキズム。カフェに通い、カウンター席に座って綾子へ相談する事が多かった。


「大丈夫よ。ルックスなんて単なる入れ物。重要なのは中身よ」

「そうですかね」

「よくいるじゃない? 若さに胡座をかいて何にも勉強せず、コミュ力も磨かないで受け身で待ってるだけの女って。歳とった時こういう女は悲惨だから。いわゆる子供おばさんってやつよ」


 綾子はホッとするような笑顔で語る。


 そう言われる安心する一方、危機感も出てきた。このままではダメだ、と。若さに胡座をかいたらダメだ。


 こんな風に話を聞いてくれる綾子は、実は男性ファンもとても多い。恋いる客もいて、モテるようだった。


「綾子さーん」


 今日も会社経営者のハイスペ男性も来ていた。イケメンでスキのない彼だが、綾子を目の前にすると、目尻が下がり、意外と子供っぽい。


「若い女なんてヤるのはいいけど、奢ったら当たり前の顔するし、傲慢だし、話もつまらないし、寛容さもない。俺は熟女が好きだわ。建前では若い女が好きっていうけど、男だって本音では甘えたいんだよ。これを与えられる女は、歳食った後時でも需要がある」


 彼のそんな話を聞いていると、世間の言うルッキズムとやらも洗脳だった気もしてきた。


 晶穂は相変わずAIにブスと言われていたが、まあ、良いかと肩の力が抜けてきた。


 最近は整形について調べていたので、そんな広告が山のようにネットに出てきが。


 今でも整形したい気持ちはゼロではないが、限りなく低くなってきた。


 確かに見た目は重要。今の時代はルッキズム。美人に税金をブスには福祉の時代だが、それだけでは無いはず。

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