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ルッキズム狂想曲〜哀しき女達の場合〜  作者: 地野千塩


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エピローグ あるカウンセラーの独り言

 美容整形外科にカウンセラーとして務める井崎京子は、自宅でお湯を沸かしていた。


 やかんから湯気が立ち始めていた。京子それを確認すると、火を止め、ティーカップにお湯を注いでいく。


 ティーカップの中へ濃いピンク色が広がる。ローズヒップティーだ。ビタミンC爆弾とも言われているお茶で色合いも派手だ。


 最近、京子がハマっているお茶だった。


 今の時代はルッキズム。


 それに伴い美容整形外科でもトラブルが相次ぎ、京子のようなカウンセラーの需要も高い。クライアントも後をたたず、最近はお昼も食べずに仕事を頑張っていた。


 そんな京子にとっては、ローズヒップティーを飲みリラックスする時間は癒しそのものだ。


 ローズヒップティーは美容にいいとクライアントから教えて貰ったのだが、カフェインも入っていないし、味もジュースのような濃さもあり、リラックスタイムのお供になっていた。


 京子はリビングにティーカップをもっていき、ソファに腰をおろすと、リラックスタイムを楽しむ。


 こんな時間でも仕事のクライアント達の顔が浮かんでしまう。


 特にローズヒップティーを見ていると、最近作った「若返りの薬」を連想してしまう。


 クライアントの一人からそんなような噂を聞き、調べてみた。


 動物を殺す必要もあったので諦めたが、これを使って「プラシーボ」でもしようと思った。


「プラシーボ」とは偽薬の事だ。昔、小麦粉で作った薬を患者に飲ませても健康効果があったという実験がある。人は案外思い込みに左右されやすいようだ。


 クライアントでもルッキズムに追い詰められ、精神疾患にかかったような状態のものもいた。そんなクライアント達に若返り薬と言い、渡していた。


 小さな瓶にローズヒップティーを入れたもので、実際はそんな効果は無い。


 それでも京子が上手いこと言いくるめて若返りの薬を飲ませると、シミやそばかすが消えたものもいて、なかなか興味深い。こんなAIが発達した今でも科学で説明できない事もあるようだ。


「ふう、さすがビタミン爆弾ね。若返りの薬じゃないけれど、最近私の肌の調子も良い気がする」


 京子はローズヒップティーを口に含み、安堵のため息をこぼす。


「あなたも若返りの薬、飲んでみる? プラシーボ効果ぐらいはあるかもね? まあ、聖母になるか魔女になるかは、あなた次第」


 ルッキズムに囚われたクライアントの数々の顔を思い浮かべ、さらにローズヒップティーを飲む。


 その表情は聖母のように穏やかだった。


ご覧いただきありがとうございます。完結です。次からは番外編です。本編よりもゴッタ煮闇鍋風の番外編です。


今は新作作成中です。本作と違ってフワフワなお花畑の話の予定です。




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