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第5話『変わった組み合わせ』

***



「ありがとうね。まさか下まで()ろしておいてくれてるとは思わなかったわ」


 翌日、学校内のゴミ集積庫の隣で、佐藤先生は私と樹希(いつき)ちゃんにそう言った。


 本当は人体模型が自分から飛び降りてくれたんですけど、なんて言えるはずもなく。

 私はただ笑顔を返すことしかできなかった。



 ――私の銃は《退魔の銃》。

 人体模型に宿った負の魂だけを払った。

 ゴミ集積庫の中に収めた人体模型は、もう動く事はない。


 ……この後()は、この窮屈な場所で、粗大ゴミとして回収される時を待つだけなのだ。



「最初に聞いた時は、夜露(よつゆ)さんだけで運んだのかと思って驚いたけど。

 朝雛(あさひな)さんも手伝ってくれたのね?

 二人とはいえ、階段とか、大変だったでしょ?」


 佐藤先生からそう訊ねられると、樹希(いつき)ちゃんは頭上に疑問符を浮かべるような、キョトンとした顔で口を開く。


「人体模型クンが勝手に動いてくれたんで、ラクでしたよ?」


 あまりにも自然にそう言ってのけた樹希(いつき)ちゃんに、私も先生も固まった。



「……え? いやいや、そんな訳……」


 ようやく言葉を絞り出す佐藤先生。

 対して樹希(いつき)ちゃんは、悪戯っぽく白い歯を見せる。


「……どう思います?」


「……無いわよ、ね……?」


 言いながらも、先生は恐る恐る人体模型に視線を移す。

 そんな先生の挙動に、ついに耐えられなくなったのか、樹希(いつき)ちゃんは声を上げて笑った。


「あはは! 無いですよー! 冗談です! 冗談!」


「やめてよ! もぉ!

 私、ホラーとかオカルトとか……そういうの信じてないんだからッ!」


「ですよねー! あたしも()()()()()!」



 朗らかに笑う樹希(いつき)ちゃんの横で、私は苦々しく笑う事しかできない。

 なんか、さっきから私、一言も喋ってないな。



 なんて考えていると、ふと佐藤先生が不思議そうに私達を見つめているのに気付いた。


「……」

 

「ど、どうかしましたか……?」


 ようやく喋った一言が、これ。

 すると先生は「うーん」と小さく(うな)りながら。



「いやね、なんかあなた達、変わった組み合わせだなぁと思って」



「そうですよね……」

「そうですか?」


 私と樹希(いつき)ちゃんの声が重なった。


 伏し目がちに先生の言葉を肯定してしまった私。

 一方で、隣の樹希(いつき)ちゃんは首を傾げている。

 どうしたんだろう? ……意味がわからなかったのかな?



 私達の両極な返事に、先生はぽかんと口を開けるが、すぐにいつもの微笑みを取り戻す。


「……ううん。変な事言ってごめんなさい。

 なんでもないわ。気にしないで」





 ――《対怪(タイカイ)》が活躍する機会なんて、本当は無い方がいい。

 それでもやっぱり、そうは問屋が卸さない訳で――。


 私達の高校生活は、まだ始まったばかり。



 〜 To be continued 〜

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