いと
足元に少しだけ浸る水
暗くて
黒くて
それでもそれは水と分かる
これから私を呑み込んでいくもの
見渡す限りの闇
目の前こそ果て
何も見えないからこそ
何でもあるかもしれないし
何もないかもしれない
踏み出した先が断崖であっても
この先はどこまで続いていても
捉えられない私には同じこと
知覚できないものは
無いものと同じこと
遥か上
手の届かない場所
僅かに光る細い糸
この世界の唯一の光
一生懸命に伸ばそうとしている
紡ごうとしている
手を伸ばそうとは思わない
この手に届くのなら
触れたいとは思うけれど
それまではただ
あの光が輝いていることの幸せだけを受け止める
私を包む光
そこから縒り合わせることのできる糸
紡いで足元の水に垂らす
波打つ波紋
糸は水の中に呑まれていく
この糸に救いはない
この糸の先に結ばれているものは
小さな心の種
私には咲かせることが出来ないけれど
誰かのもとでなら
咲くことが出来るかもしれないもの
届いてほしいと思う
一つ
二つ
三つ
私を包むこの光が
消えない内に一つでも多く
垂らした糸が届くのか
それは分からないけれど
私の頭上に浮かぶ糸
これもそんな思いで紡がれているのだろうか
それともただ私のためだけに
紡いでくれているのだろうか
ねぇ 見知らぬあなた
その糸の先に
私のこの糸を紡いでもいい?
私の紡いだこの糸と種
私がいなくても繋がるように
紡いだ先の見知らぬ誰かが
いつかこの糸を手にしたその時
光の花を咲かせる事が出来るように
踝まで浸る水
黒くて
怖くて
それでもまだ大丈夫と分かる
これから私を呑み込んでいくもの
見渡す限りの闇
頭上に儚げに浮かぶ
ただ一つの淡い光
見失いそうな程にか細い糸
私のただ一つの希望
この胸の内から紡ぐ
光の糸と同じもの
あぁ 見知らぬあなた
その糸の光
少しだけ触れてもいい?
きっと後悔するけれど
きっと後悔すると思うから
あなたのその光を胸に
私の糸を紡ぎたいの
私の光とあなたの光が
同じ気持ちで縒り合わさるように
私は確かにここに居たと
この糸の内に残せるように
いつかその種は花を咲かす
そう信じるから
「見えない」事は怖くない
数多の暗闇も
数多の光も
この先が見えない事は同じだから
望むこと
希むこと
それは単なる願いかもしれないけれど
それは根拠のない思いだけれど
信じて歩く
私を
私を見守ってくれているあなたを
あなたたちを