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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第四章・武道大会(個人戦)

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六割まで

 エルクは走った。

 目的地はただ一つ。闘技場舞台。

 そこに、ロロが……ロロファルドがいる。

 闘技場内に入ると、ロロファルドが舞台の中央に立っていた。


「ロロ!!」

「あ、エルクさん」


 ロロは、先程と同じ……エルクとふざけあったのと同じ笑みを浮かべていた。

 足下には、無数に転がる死体。

 壁際に、エルシ教頭の死体も転がっていた。

 エルクは歯噛みする。空を見上げると、得体の知れない『黒い球』が、生徒たちを吸い込んでいるのが見える。教師や護衛の騎士たちが必死の抵抗をしているのも見えた。

 黒い騎士。恐らく、ヤトの鎧武者と同じ……だが、数が桁違いだ。


『暇な時でいいからさ、その子たちを『始末』してくれない?』


 ピピーナは、そう言った。


「くそ……っ!!」


 女神聖教。

 ピピーナが力を与えた七人の『チートスキル』持ち、七天使徒。

 ロロファルドを、エルクは倒さなければならない。

 だが……相手は、つい先ほどまで笑い合っていた、ロロなのだ。


「ね、エルクさん。エルクさんも、『女神聖教』に来ませんか? エルクさんがいれば、ボクたちの組織も……」

「ロロ!! こんなことやめろ。こんなこと、ピピーナが望んでるわけないだろうが!!」

「女神様を呼び捨てすんじゃねぇぞコラァァァァァッ!! テメェ、何様のつもりなんじゃワレェェェ!? め、女神様、女神様を名指し、名指しだとぉアァァァァァッ!?」


 ロロは、顔を歪め吠えた。

 女の子らしい顔が、凶悪に歪む。

 だが、すぐに呼吸を整え、にっこり笑った。


「エルクさん。やっぱりあなた、女神の使徒だったんですね」

「女神の使徒?」

「とぼけちゃって。エルクさんもなんでしょ? あの空間で(・・・・・)、女神様から『チートスキル』を授かった、そして生き返ったんでしょ?」

「俺は、何ももらっていない」

「またまた!! ま、話はあとでゆっくりと。今は、信者を集めるのに忙しいんです。エルクさんと本気で戦ってみたい気持ちはあるけどね……ね、エルクさん」

「……なんだよ」

「ボクと、一緒に来ませんか? これは本気の勧誘です」

「…………」


 ロロはエルクに向けて手を差し伸べる。


「ボク以外にも六人います。女神様から『チートスキル』を授かった仲間が。ボクたちは絶望し、命を諦めかけたことがある……そんな時です。女神様が、ボクらに……う、うぅぅ、ボクらに、奇跡を授けてくれた。あぁ、あぁぁっ!! あの時のうれしさ、眩しさはもう、もう……っ!!」

「…………」


 ロロは涙を流し出す。

 異常。これがロロの本性。

 どうすべきか、エルクは悩む。


「エルクさん。エルクさんも、女神聖教の本部へ行きましょう? そこに行けば、ボクらの仲間が『女神ピピーナ様』の素晴らしさを教えてくれる。神官長は、素晴らしい方で」

「洗脳、か? あんな風に攫った信者たちを押さえつける方法なんて、洗脳くらいしかないもんな。俺でもわかるし、授業でも習った……『洗脳』スキルは、所持するだけで犯罪だ!!」


 スキル『洗脳』は、所持するだけで大罪である。

 もちろん、生まれ持ったスキルである以上仕方ない。なので、洗脳スキルを持って生まれた人間は、スキルの使用を許可しない代わりに、両親を含め一生困らないだけの生活を約束される。

 ロロは、つまらなそうに言う。


「ま、正解です。洗脳しちゃえば、どんなに嫌がっても言うこと聞いちゃいます」

「ロロ……ッ!!」

「怖いなぁ」


 ロロは肩をすくめ、ナイフを指先で弄ぶ。

 すると、ロロの隣に黒い穴が空き、そこから一人の少女が現れた。


「や、メイザース」

「その名前やめて。リリィって呼んで」

「はいはい。で、どうだい?」

「もうすこしで終わり。でも、数多すぎて全員は無理。がんばって二百人くらいかなぁ」

「少なっ……え、それだけなの?」

「選別しながらだから仕方ないの。で……誰? これ」

「エルクさん。すっごく強い人なんだ。たぶん、ボクらと同じ『使徒』だ」

「えー?」


 リリィ・メイザース。

 十四歳くらいの少女だろうか。豪華絢爛なローブを纏い、大きな魔女帽子を被っている。手には巨大な杖を持ち、エルクを胡散臭そうに見つめていた。

 女神聖教、七天使徒。『聖典泰星(せいてんたいせい)』を司る神官。

 ロロは、メイザースに言う。


「メイザース。エルクさんを拘束して。本部に連れて帰る」

「本気?」

「うん。エルクさんも、ボクらの味方になる。女神様のためだ」

「ならいい」

「……っ!!」


 メイザースが杖を向ける。

 すると、またしても『黒い穴』が開き、そこから人が現れた。

 エルクは、驚愕した。


「え……エレナ、先輩?」

「ごめんね、エルクくん」

「───……エマ!?」


 エレナの背後には、エマが立っていた。

 目の焦点が合っていない。フラフラしながら、ようやくと言った感じで立っている。

 ロロは首を傾げた。


「うわ、何したの?」

「ちょっと薬嗅がせただけ。エルクくんのこと、いろいろ知ってそうだったから……でも、ハズレね。エルクくん、本当に『念動力』しか持ってないみたい。女神様の使徒っていうのも考えられないわ……『あの世界』に行ったなら、チートスキルを得ないとおかしいもの」

「エマ!!」


 エルクが右腕をエマへ向ける。

 だが───ロロは笑った。


「じゃあ、いらないか」


 エマが引き寄せられない。

 エルクは驚愕に目を見開き───ロロが、ナイフをエマの胸に突き刺した。


「あ───」

「あ、こら。もう……」


 どさりと、エマが倒れた。

 血だまりが広がる。

 エルクは、呆然として動けなかった。


「エマ? エマ……」

「あーあ。やっちゃった。ロロってばひどい」

「あはは。メイザース、覚えておきなよ。神官長の『洗脳』は、空っぽのほうが入りやすい(・・・・・)んだって。エルクさん、この子のこと気にしてたみたいだし……目の前で殺したら、きっと心が壊れるかなって」

「悪趣味」

「同感。この子、けっこう可愛かったのに」


 エルクは、倒れ血を流し動かないエマを、ジッと見つめた。

 そして、目の前にいる三人。

 ロロ、メイザース、エレナを見る。


「…………」


 ◇◇◇◇◇◇


『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』

『全力は六割まで、いいわね?』


 ◇◇◇◇◇◇




「………………………………七割半(・・・)




 ◇◇◇◇◇◇


 それは、怖気だった。


「「「───っっ!?」」」


 ロロ、エレナ、メイザースがエルクを見た。

 エルクは……眼帯マスクを着け、フードを被る。

 左目だけしか素肌が見えない。だが、その左目もまた、真っ黒に染まっていた。

 ロロは、思わずナイフを構える。


「な、なんだ? さ、寒い……」

「…………ね、ねぇ、ヤバくない?」

「…………鑑定」


 メイザースが、エルクに向けて『鑑定』魔法を使った───次の瞬間。


「ぅ!? っげぇあっ!? ごぼぼっ、げっぼぉぉあ!?」


 吐血、嘔吐。

 舞台を吐瀉物と血が汚す。

 メイザースは、ガタガタ震えながら言った。


()壊れてる(・・・・)スキルが(・・・・)壊れ狂ってる(・・・・・・)……」

「ど、どういう……」

「ね、念動力だよ。こいつのスキル、念動力……でも、ヤバい。これ、ヤバい。こいつ、関わっちゃいけない。こいつ、女神様の使徒なんかじゃない……ロロ、エレナ、やば───」


 バゴン!! 

 メイザースが、消えた。

 エルクの念動力で、壁に叩き付けられて失神したのだ。

 

「殺す」


 両手を広げ、どす黒いオーラを纏いながら、死の使いである『死烏(スケアクロウ)』は両手を広げた。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] うーん、主人公最強もののストレスフリーかと思ったけど結構シリアスな展開に…… とりあえず彼女が助かることを祈る
[一言] え、失神で済ませるんだ
[一言] ピピーナもチートをやった奴らがこんなゲロヤバ集団になるとは思ってなかっただろうなぁ。 自分が力を与えた奴がゲロヤバになってるのに不干渉を貫かなきゃいけないストレスやばそう。 ピピーナ様ハゲる…
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