第六話
優しく抱きかかえるように捕まえ
かばんからタオルを取り出し三毛猫を拭く。
「全身雨に濡れちゃって、寒かったろ」
おそらく人間の言葉なんかわからないだろう。
それでも優しく語りかけ全身を拭いてあげた。
拭き終えたら
「にゃ~」と一言。
お礼のつもりだろうか?と思い微笑んだ。
とは言えこの雨、今日一杯は振り続けるだろう。
このままここに置いていったら雨に濡れてしまうだろうし、
覚悟はしていたが連れて帰るか。
ペットはダメなアパートだが、1日2日くらいなら大丈夫だろう。
まぁ、大家に見つかった瞬間“死”ってことだ。
とても分かりやすい。うん。
先ほど放り投げた傘をさし三毛猫を抱きかかえた。
「少し走るか」
雨は先ほどと変わらない勢いで降り続いている。
片手で傘をさし、片手で三毛猫を抱きかかえ家まで走って帰る。
家の近くにあるバス停で三毛猫を窒息させないようにタオルに包む。
少しリュックの中を整理してスペースを作りそこに三毛猫を入れた。
傘を閉じ左手に持った。
「ここからは自室までノンストップだ」
そう言って、大きく深呼吸をした。
息を吸って、吐いて、吸って、吐いて、吸って
息を肺の中一杯に取り込んで右足から踏み出した。
雨は先ほどと同じくらい降っているが全然気にならない。
むしろ体にあたる雨は心地いいくらいのものに感じられた。
心配事も悩み事もすべてが、この雨によって洗い流されたようだ。
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