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8・執事様と攻略対象(2)


「それじゃあ二人とも準備は良いね?」


四人しかいない訓練場に響くのはよく澄んだシリウスの声。


「―はい」


アリシアは先と同じように木刀を構え、正面にいる敵―オリバーを警戒した。


「大丈夫っス!」


一方こちらは戦えることが嬉しくて仕方がないように剣を構え、アリシアへ向き合った。


「それじゃあ、試合開始っ!!」


***


「はぁ…はぁ……はぁ……シア、はっ、化け物っスか……?」


試合開始から三十分後。

五・六回の試合を終えたオリバーは満身創痍の姿で寝転がっていた。


「あはは…流石シア。一方的な試合になっていたね…」


体の小ささと俊敏さ、剣の利点を生かして懐に潜り込み一瞬で決着をつけた一回目や、双方武器を手放した体術戦へ持ち込んだ三回目などを振り返ってシリウスとカイルは遠い目をした。


「まぁオリバー様は大雑把な面があるので、回避するのも入り込むのも簡単でしたしね」


地を這うオリバーとは反対に、汗一つで特に疲れた様子もないアリシアが言う。


「はぁ…訓練を積んだオリバーが手も足も出ないとは…。とてもスピネル公爵家の御令嬢とは思えませんね…」

「「はぁ!?」」


さらりとアリシアの秘密を暴露したカイルにアリシアとオリバーが叫んだ。


「なっ―シアが令嬢…?!そんなわけないっスよ!カイルっち!!」

「そっ、そうですよ!カイル様!執事である私が公爵令嬢など…」


『信じられない』とばかりに反論するオリバーにアリシアも便乗する。が、次期宰相最有力候補様はそんなに甘くなかった。


「―はぁ。一番はその真紅の髪ですね。その美しい赤色はスピネル公爵家特有のものなのです。」


(そ、そんなの聞いていませんーーっ!父上っ!!)


この髪色が公爵家特有だと知っていたならば変色魔術をかけてきたというのに。


「第二にシアは〈星宝〉持ちでしょう?」

「な――っ!?」

「〈オパール〉持ちであるオリバーと一般人が戦ったら、オリバーの圧勝に決まっているのです。しかし私たちのように〈星宝〉を持っていれば互角に戦える」

「―つまり、魔術なしでオリバー様に勝った私はスピネル公爵家の〈星宝〉持ち、だと」

「はい。ちなみにエディ様なら先ほど貴方の父上の書斎でお会いしましたよ?お勉強熱心な弟様ですね」

「―――はぁ…」


攻略対象は腹黒の性悪が多いのだろうか。

この追い込まれていく感覚は好きになれそうにはない。

アリシアは覚悟を決めるように大きなため息を一つつき、すっと息を呑んだ。


「―改めまして。シリウス様付き執事のアリシア=スピネルと申します。星霊王様より〈サファイヤ〉の星宝を賜りました。…騙してしまったこと、お詫び申し上げます。シリウス様に仕えるものとして、どうぞよろしくお願いします」


アリシアは令嬢であることを証明するため、執事訓練と同時に習ったカーテシーをする。…尤も、執事服姿じゃ様にもなっていないが。


「なッ⁉︎マジで令嬢だったんスか⁈信じらんねっス!」


オリバーの寸頓狂な声が響いた。

…まぁ、近衛騎士団団長の息子として努力してきた彼が初めて負けた相手が公爵令嬢じゃ、その驚き様も無理はない。


橙の瞳を大きく見開くオリバーと対称的に、令嬢であると見破ったカイルはニヤリと笑った。


「…と、言いつつ。私は予めシリウス殿下から聞かされていたのですが」

「はいぃ⁉︎」

「今の貴方はどこからどう見ても完璧な執事です。バレたりしないでしょうから、安心してください」

「なぁ―!?」


(あれほど自信満々に推理しておいて、先に答えを知っていた、だとぉ―!?)


"教えた"ことを教えてくれなかったシリウスや、性悪にもアリシアを追い詰めて行ったカイルに対して苛立ちと呆れが積もる。


「クックック……ポーカーフェイスはまだまだですね」


自身の頬がピクピク痙攣するのを感じながら、個性が強い二人の"幼馴染み"との初対面を果たしのだった。



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