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47・執事様と遭遇(2)

物語が大きく変わっていきます!

やっと書きたいところが書ける…っ!

「あは、分かっちゃうんだ?」


ふっと小さく吐き出した息は、場違いなまでに明るい声によってかき消された。


肩までの銀髪は緩いハーフアップで結ばれている。

暗闇の中で発光するように輝く髪と同色の銀眼。

少年というよりかは青年という言葉が似合いそうな彼は、魔術を使うことなく素の力のみで建物の上から降りてきたらしい。足音さえ立てずに宙を舞う姿は宛ら麗しい蝶のようだ。

いかにも軽薄そうな見た目をした彼は、ちょっと気怠そうに笑って二人と向き合った。


「〈星宝・シルバー〉…」


シリウスを背に庇うように立ちながら、体に緊張を走らせる。ちょっと前まで喧嘩大会に出場していたこともあるせいか、体はいとも簡単に警戒態勢へと移った。


「―僕たちに何か御用ですか」


銀髪の青年を睨むアリシアの半歩後ろでシリウスは静かにそう問いかけた。

端的な言葉にも関わらず威厳を感じる彼の言葉に、青年は一瞬瞠目してパッと笑顔を咲かせた。


「んー、用ってほどでもないんだけどね!なんかうちの子が世話になったみたいだから、会いに来ちゃった!」


嘘くさい笑みを張り付けた彼は笑っていない瞳で少女たちをじっと見つめていた。

背中に冷や汗が流れる。

もし今この人と―いや、こと人とこの人の後ろにいる〈彼〉と戦うことになったとしたら、億が一にも勝てる可能性はない。

本調子とは程遠い上に、先の戦いでまだ魔力が復活していなかった。


「…会いに来て、どうしようと?紫の少年を開放してほしいと願うくらいならば攫ってしまえばいいではないですか」


王城への攻撃。

それは紛れもない反逆罪であり、何人たりともその罪から逃れることはできない。


それくらい子供でも分かるようなことだ。

アリシアたちに開放の意向がないことなど考えるまでもない。

―それなのに、彼らは会いに来た。


「うん!勿論、君たちと話し合いをするくらいなら最初から自分たちで奪いに行くよ。でもね…」

「―――今話したいのはそれじゃない」


瞬間、空気が変わった。

動くことさえできずに、アリシアは全身に電気が走るのをただ感じていた。

頭から足先まで雷が落ち空のようにビリビリと痛む。

小刻みに震えるそれが、突如として現れた彼の存在の異質さを表していた。


「……っ」


喉の奥でゴキュリと音がする。

何とか少しだけ視線を動かしてみれば、そこには暗闇のような漆黒の長髪があった。


(―――勝てない。絶対に、敵わない)


一目散に走り去りたくなる衝動を必死に抑え込む。

背後にいる大切な存在のために、アリシアは怯える本能に逆らって〈彼〉へと視線を移した。


―それは、黄金なんて言葉では表せないほどの輝きであった。

揺れるはちみつ色の中に、幾千もの星が散りばめられている。いやそれだけではない。星の中に赤い炎さえ揺れているように見えた。

輝くその瞳は角度によってちょっとずつ変わっており、ゴールドなんて言葉がとても陳腐なものに思えた。


表情のない大人びた端麗なその顔からアリシアは視線を逸らせなかった。


はっと息を飲むアリシアと同じように、黒髪のその青年も息を飲んでピタリと動きを止めた。

そのまま金眼を見開くと、彼ははくりと口を動かしてグッと唇をかみしめた。

何かを切望するようなその表情に、アリシアは遠のいていた現実が戻ってくるような気がした。


「………それで。話したいこと、とは?」


シリウスの堅い声が閑散とした商店街の中に響く。

いつの間にか全身から発汗していたアリシアは、ぐっと踏みしめたレンガの道がひどく冷たいもののように思えた。

昼間と同じほどの緊張感が戦ってもいないこの場に漂っていた。心臓の音がいやに大きく感じた。


「簡単に言おう」


すべてを見通したかのような青年の瞳が、シリウスへと投げかけられる。

存在だけで動きを止めてしまうほどの圧を放っているというのに、シリウスは何でもないかのようにその金眼を見つめ返した。


そして暗闇の中、甘いバスの声が静寂を満たした。



「一年とたたないうちに()()()()()し、()()()()()する」



遠くで封印されていた本が、開かれる気配がする。

理解を拒む頭とは反対に、少年と少女の身体には鳥肌が立っていた。



みなさん長らくお待たせいたしました。

情勢に仕事が追い付かず、いつの間にか年を越し、またひと月も経ってしまいました。

少しでも楽しんでいただければ光栄です。

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