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小話・アリシアと聖域

コメディです。完全なるコメディです。

カッとなって、ストレス発散に書きました。

今は後悔しています。…反省はしていませんが。

頭を空っぽにしてお読みください。

(そうじゃないと後悔します(笑))


※前編、後編を一つにしました。

 ▽▽▽より下の部分が後編に当たります。

『いい?アリシア。この右目のことは誰かに言ってはダメよ?これはママとアリィだけの内緒のお話なの』


遠い〈アリシア〉の記憶の中で、見目麗しい緑眼の女性が微笑んだ。


『誰にも…?エディにもパパにも?』


まだ舌足らずな私が、暖かな胸の中からその女性を見上げて問いかけた。さらりとした茶髪が女性の美しさと儚さを引き立てる。ベットの上から起き上がることの少ないその女性は、私の記憶の中で暖かい記憶の代表のような人だ。


『えぇ、ダメなの。これは私とレイデス様だけの約束。大切な貴方を、守るために…』

『わたしの、ため…?』

『えぇ。きっといつか、この言葉の意味を分かる日が来る。そして貴方は大切な人を守るために、その力を使うの』


ほっそりとした手で私の頬を救い上げた女性は、私のダイアモンドに決意を秘めたエメラルドを映してそう言う。

彼女の掌から伝わる温もりが、どうしようもなく心地いい。


『力……大切な、人…』

『私は未来の貴方に託すわ。これが聖域へ向かうたった一つの道しるべ―』



「ぜぇ…っ、はぁっ。ぜぇ…っ!」


吸い込む空気が薄くなるのを感じる。ようやっと険しすぎる岩山の先が見えてきたが、その前に窒息死する未来さえ見え始めた。


「ほ、ほんとに…っ!こんなところにっ!聖域がっ!あるのぉっ⁉」


苛立ちをぶつけるように叫べば、その反動で苦しくなる肺と空虚に響く自身の声だけが滑稽に自分へと返ってきた。


「くそぅ…星霊王め。なんでこんな変な場所に聖域なんて作るのよぅ…!」


ミリとしての記憶が戻って三か月。私はかつて母が言っていた言葉の意味を探るため、残された手掛かりだけを頼りに、よもや人が歩くとは思えない道を歩き続けていた。

…ちなみに。父上やエドワードには叔母の家へ行くと言って家を出てきた。

約束した時間は一週間。全く手掛かりも得られないまま、三日目に突入するという無情な現実だけが私の心を苦しめていた。


「…ふぅ、はぁ…」


呼吸を整える。一歩でも先へ、少しでも前へ。

そこに彼女の残した真実が、あるはずだから…。

ただ自分だけを信じて、死と隣り合わせの崖を歩き続ける。もはや植物さえ見られなくなってきた頂上付近。


「!?」


それは突然の出来事だった。まるで時空の裂け目に落ちていくような感覚。目を開けていられないほどの閃光が辺りを満たし―次の瞬間。私は、全く別の場所へいた。


「…こ、こは………?」


緑の生い茂る綺麗な森の中、一人。

ピチピチと透き通る声で鳴く鳥と、肌を撫でる綺麗な空気だけが夢でないことを告げている。

一分弱という時間を経てようやく理解した私は、その澄み渡る新鮮な空気を肺一杯に満たして叫んだ。


「もう一体っ、なんなのよーーーーーっ!!!!」


急に発せられた大声に、見たこともない鮮やな色の鳥が一斉に青空へと飛び立つのを眺めながら、私は自身のこれからに頭を悩ませるのであった。



▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



「へぇ~、そうなの。じゃあ貴方はココに住んでるのね」

「キュッ、キュキュキュゥっ!」

「はぅぅ~、癒されるわ~!」


森の中に転送されてから早一刻。無計画に森の中を歩き回っていた私は、一匹の愛らしいキツネ…のようななにかに出会った。

キツネのような何か、と言ったのは私の知っているキツネではなく、尻尾が二本に分かれているからだ。

フワフワとする毛並は青銀色で、尻尾にかけて水色になっている。見上げてくるつぶらな瞳もまた水色で、この瞳に見られると、この子のためなら何でもできてしまう気がしてしまう愛らしさだ。


「あら、もうクッキーを食べ終えてしまったの?…仕方ないわね。ほら、マカロンよ。私の大好きなお菓子なの」


異空間収納から大切に取り出したカラフルな宝石をそっと青銀のキツネ―キュウ(私命名)へと差し出す。本当は私の非常食だが、別にちゃんとしたご飯も持ってきているし、こんなことがあっても良いだろう。


「キュゥ~~~!!」

「あらあら、これじゃあまるで私が餌付けしているみたいじゃないの…」

「キュっ!」

「もう、肯定しないっ!」


スリスリを寄ってくる極上の毛並みをそっとなぞれば、ふわっとした弾力が全体から伝わってくる。


(―うん。本当にいい毛並だわ。売ったら高そうね)


黙々とマカロンを咀嚼するキュウをぼんやりと眺めながら、未だ現実味の帯びない美しい森の空を眺めていた。

髪を攫って行く風は、現実のものとは思えないほど心地がいい。


「あ~ぁ…。どこにいるんだろ、星霊王様…。っていうか、まずココ何処だし」


もう星霊王に会うのは諦めて帰路を探した方がいいのかもしれない。

ここに来るまでに三日かかったのだ。帰りにも同じくらいかかると考えていいだろう。

そうすると…この先の見えない森の中から現実への道を探して帰ることになる。

ーうん。もう色んな意味で、色んなことを、諦めるべきなのかもしれない。


「キュ…?キュっ、キュキュキュキュゥ!」

「…?どうしたの?キュウちゃん」


ぼんやりとした思考の中、急に叫び始めたキュウに驚きつつ、尋ねる。

残りわずかとなったマカロンを急いで口へと詰め込んだキュウは私の膝から立ち上がると、二、三歩歩いて振り返った。


「キュウ、キュっ!キュキュキュキュキュー!!」

「ん…?どこ行くの。キュウちゃん…っ?!」





『よく来たな。アメリアの娘、アリシアよ』


そしてキュウについてきた私は今、白緑色の中性的な美貌を混乱した思考の中で眺めている。

神秘的な空気の漂う泉に半分ほど浸かったままの青年は、ぞっとする程澄んだダイアモンドの瞳を私へ向けている。


「え、えぇ……?」

『我は星霊王、レイデス。お前の望み、叶えてやろう』

「えぇぇぇぇぇ………??」

『――なんだ?娘』


何時までも訝し気な半目をしている私を不審に思ったらしい(自称)星霊王、レイデス様は私に問い掛けた。


(いやさ…確かに私も彼を探してここまで来たわけだけど……これは、流石に…)


「つかぬことをお伺いしますが…。えーっと、本物??」


ずっと堪えていた疑問が簡単に口から滑り落ちていく。

やっちゃった、と青くなる私と反対に、白緑色の青年はポカンとした顔で唖然としている。少ししてやっと理解が出来たのか、青年は頬を痙攣させて青筋を立てた。


『あ・た・り・ま・え・だ・ろ・ッ⁉バカか⁉お前にはこの魔力も見えんのか⁉』

「痛ッ‼いたたたた―ッ⁉いや、見える…見えマスけど…っ!取り敢えず痛い!痛いからッ⁉離してください―ッ⁈⁈」


私のこめかみに手を当ててグリグリと押してくる彼の手を叩きながら「ギブッ!ギブぅッ⁉」と叫び続ける。

…うぅ。バカになった。絶対脳細胞死んだ。

っていうか、人々を守る星霊王なのに私に危害を加えるなんて、酷くない⁉


私の頭を犠牲として、幾分気も紛れたのか、大きくため息をついた星霊王様はどこか哀れなものを見る目で私を見下ろした。


『…はぁ。魔力が見えるのならば星霊王だと分かるだろうが。聖域に住める上位精霊がどれだけ限られているかも知らんのか』


(いや、めっちゃ言うやん…)


「あー…。疑ってしまって、すみませんでした。えぇっと、ところで、何で私の名前を?」

『―お前はアメリアの娘だろう?』

「え?あ、はい」


急に変わった話題に戸惑いながら、何とか返事をする。


『我は昔、アメリアと契約こそしていなかったが、友であったからな』

「えぇ⁉お母様と友達ッ⁉ずるい―じゃなくて、凄いですね!」


思わず漏れそうになった本音を何とか隠す。

星霊王様と友達とか、お母様凄いよ!

もしも生きていたのなら、どうやって出会ったのか、とか聞いてみたかったなぁ~。


『……お前、本音を隠そうとは思わんのか?』

「それで?どうして私を?」

『………。アメリアからの頼みであったのだ。彼女の腹にいる時から、お主の星宝が強力であることは分かっておったからな。もしもアリシアが尋ねてきたら、よろしく頼む様に、と』

「なるほど!ということは、もしかして私とー!」


契約してくれるんじゃない⁉

急に開けた未来に私は思わず前のめりになりながら、星霊王様の言葉の続きを待つ。

しかし、彼の曖昧な返事は私の想像を裏切るものだった。


『………いや。なんだろうな。アメリアの頼みだと思っても、こう釈然としないというか…』

「え?」

『アメリアには悪いが、我には無理だな』

「えぇぇぇ…ッ⁉」


(そんなのあり⁉こんなに大変な思いをしてきたのに!)


「せっかくここまで来たのに⁉私のマカロンやクッキーも犠牲にしたのに⁉」


思わず敬語も忘れて私は星霊王様に突っかかっていた。

彼はげんなりとした顔をしながら、私に着々と返していく。


『一番に出てくるのはそこなのか…。お前本当にアメリアの娘か?全く似ていない気がするんだが』

「お願いしますぅッ!星霊王様‼この通り!土下座するからぁ…ッ!」


湖の前の綺麗な芝生の上に額をこすりつけて、上目使いに星霊王様を見る。

可愛い幼女の上目使いに少しくらい反応を示してくれると思いきや、彼はもっと呆れた顔をして私に問い掛けてきた。


『お前にプライドというものはないのか…?』

「プライドで生きていけるとでも思っているの?フッ、そんなわけないでしょ」

『何故、我は五歳の女子にどや顔されながら諭されているのだろう…』

「一生のお願いです!えーっと…レイテス様…?」

『レ・イ・デ・ス・だッ⁉それが人にものを頼む態度なのか⁉』

「そうです!霊です様!お願いします」

『名前は会っているけどイントネーションが違う⁉』


なんか漫才みたいになって仕舞っている気がしないでもないが、やっぱり未来のことを考えてちゃんとお願いした方がいいだろう。

改めて決心した私はレイデス様へ向かってスーパーウルトラハイパー土下座★を披露した。


「えー…細かいですねぇ…。じゃあ…お願いします!レイデス様!!……これでいいですか?」

『我に聞くな⁉自分で考えろぉッ!』


風の魔術で補助しながら五メートルの高さから土下座をする神技を見せたというのに…。

まさかこれでもダメなんて、星霊王様は格が違うらしい。


ついに開き直った私は、すくっと立ち上がって星霊王様へと手を伸ばした。


「フッ、仕方ない。この私と契約する権利を上げましょう」

『…もう我帰っていいか?』

「あぁぁあーーーー!!ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ…ッ!ちょっと調子に乗っただけなんですぅ!見捨てないでくださいぃぃぃ…!!」

『―本当にもう、嫌だこの子…』


大号泣して泥だらけになりながらレイデス様にしがみつく私と、若干涙目になりながら逃げようとするレイデス様の鬼ごっこはそれからしばらく続き…。


粘り勝ちというか、何というかで。私は無事にレイデスと契約することが出来たのでした。

ちゃんちゃん。




アリシア「ふっふ~ん!どうですか、お母様!私、やりましたよ‼」

レイデス「改めて見ると我とアリシアの出会い、凄いなッ⁉」


改めなくても『酷い』です。

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