第十二話『復讐という名の希望』
不治の病から生還を果たした女子高生の真琴は、後遺症で人の心が読める『読心』の能力を手に入れる。 家族や友人の心の声を聞いて傷つき、苦しむ真琴。 そんな真琴はある日、妖しく輝く月の下で謎の美少女アリオと運命的な出会いを果たすー。 今、魔女が暗躍する帝都に、再び魔銃『ブルトガング』の銃声が響き渡る。
一連の出来事は全ては事故とされ、ニーナの名前がネットやテレビに出ることも無かった。
結局、遺体が見つからないまま、雅の葬儀が執り行われる事となった。
葬儀に参列する人たちの嘆きの声が心に響く。
真琴は献花台に花を供えると雅を想って手を合わせた。
もう涙が出ることはない。
――でも、ここは心がざわつく。
献花を終えると、真琴は人込みを嫌って外へ出た。
「真琴ちゃん……」
玄関で真琴は雅の両親に呼び止められた。
「真琴ちゃん……これ……雅が渡して欲しいって……」
そう言って両親は天使の片羽のアクセサリーが付いたキーホルダーを真琴に手渡した。その羽は真琴のキーホルダーに付いている片羽のアクセサリーと対になっている。
「ありがとうございます……」
「こちらこそ。真琴ちゃん、お別れを言いに来てくれて、ありがとう」
雅の両親に挨拶をして外へ出ると、外は雨が降りしきっていた。
空も雅の死を悲しんで泣いているのだろうか……。
そんな事を考えながら真琴は、制服のポケットから天使のキーホルダーを取り出した。
カチ。
真琴は二つの片羽のアクセサリーを持つと、組み合わせた。
そこに、羽ばたく天使の羽が完成する。
真琴は繋がった天使の羽を握り込むと、傘もささずに歩き始めた。
やはり、涙はもう枯れた。
今、有るのは絶え間ない喪失感と……怒りだけだ。
心カプセルの中で生き続けてさえいれば、いつかは雅を救えたかもしれない。
真琴はそう思えてならなかった。
──わたしは……雅を救えたんだ!! アリオが邪魔さえしなければ!!
アリオは一縷の望みすら奪い去った。
真琴はなお一層強く、キーホルダーを握りしめた。
その時。
ふと、真琴は自分を呼ぶ、誰かの声が聞こえた気がした。
振り向くと、そこにはアスタロトが立っている。
「ずぶ濡れじゃないですか。風邪でも引いたら大変ですよ」
アスタロトは真琴に追い付くと、その手をかざした。すると、一瞬にして真琴の服は乾いた。それに、真琴の周囲に全く雨が落ちてこない。
「何の用?」
感情の籠らない声で言うと、真琴は歩き始めた。
アスタロトは真琴の歩調に合わせて付いてくる。
「良い事を思いつきまして。あなた……わたくしと契約しませんか?」
真琴の足がピタリと止まった。
「お互い、アリオとセーレには因縁が有るはずです……。利害は一致するはずですよ」
アスタロトは悪魔的な笑みを浮かべた。
そして……。
「復讐を願うのなら……叶えましょう」
そう付け加えると、アスタロトは鞘に収められた赤い柄の長刀を真琴の眼の前に差し出した。
刀の柄の先では髑髏の装飾が妖しく嗤っている。
それは紛れもなく、『世界の欠片』……『妖刀緋雨』だった。
『妖刀緋雨』を前にして、真琴はキーホルダーをそっとポケットへしまい込んだ。
「……」
真琴は無言で頷くと、『妖刀緋雨』をその手に取った。
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