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Nothing But Requiem 背眼の魔女  作者: Nothing But Requiem
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第九話『忘却の彼方』①

 不治の病から生還を果たした女子高生の真琴は、後遺症で人の心が読める『読心』の能力を手に入れる。 家族や友人の心の声を聞いて傷つき、苦しむ真琴。 そんな真琴はある日、妖しく輝く月の下で謎の美少女アリオと運命的な出会いを果たすー。 今、魔女が暗躍する帝都に、再び魔銃『ブルトガング』の銃声が響き渡る。

 御代高校新校舎の三階に在る教室の窓から、真琴は外を見ていた。

 昼休みの賑わいも真琴には全く関係が無かった。真琴は完全に孤立した存在だった。それでも、相変わらず、様々な『声』が真琴の脳裏へと流れ込んでくる。

 すべてが鬱陶しくて、億劫だ。

 クラスメートの声も、授業も、何もかもが真琴を苛立たせる。

 クラスの喧騒も、真琴にとっては欺瞞の嵐でしかない。

 真琴が最も気に入らないのは……。

 藤乃院雅という可憐な存在が死に瀕しているというのに、皆が『我、関せず』という態度に見えることだ。そして、その雑音が氾濫する中に自分自身が居る事。

 真琴は昨日から一睡もしていない。それは、あの永遠とも思える『死』の夢を恐れたからだ。

 今なら解る。

 あの夢に見た『無数の死』は真琴に移植された臓器の記憶なのだろう。正確に言えば『元の持ち主の最期の記憶』を真琴は見たのだ。

 自分は『無数の死』の上に生かされている。いや、生死を弄ぶニーナに生かされている。そう考えると、真琴はとても惨めな気分になった。そんな惨めな自分でも、ニーナの仕事を手伝うと決めれば、雅を救うことができる。


──そう、雅を救えるんだ!!


 真琴は顔を上げると踵を返し、教室の入口へと向かった。その双眸には昏くて強い意志が宿っていた。

 『ニーナの仕事を手伝う』

 それは今ある日常を切り捨てる事だ。


「アリオは認めないだろうな……」


 教室を出る真琴はそう小さく呟くと、旧校舎へと向かった。

 アリオに別れを告げる為に。


×   ×   ×


 新校舎の裏口を出た真琴は驚愕して目を見張った。

 そこには解体の進んだ旧校舎の姿が在った。

 木造部分は全て取り壊され鉄筋やコンクリートの基礎部分が露わになっている。そして、数台の重機が稼働していた。

 旧校舎の規模を考えれば、工事が昨日、今日、始まったとは思えない。

 真琴は通りかかった女生徒を呼び止めた。


「ねぇ!! 旧校舎の解体って、いつから始まったの!?」

「え!?」


 呼び止められた女生徒は怪訝な顔で真琴を見た。


「いつからって……。もう、2週間位、経つんじゃないかな……」

「2週間!?」

「う、うん……」


 真琴は訳が分からなくなった。

 つい先日、旧校舎の図書室を訪れ、『探偵クラブ エリオット』に入部したのだから猶更だ。


「もう行ってイイ?」

「あ、ゴメン。教えてくれてありがとう……」


 女生徒が立ち去った後、真琴は呆然と旧校舎だった跡を見つめた。


──そんな筈は無い!!


 真琴は足早に職員室へと向かった。

 しかし、職員室で確認しても、旧校舎の解体が始まったのは2週間前と告げられた。それどころか、『探偵クラブ エリオット』なんていう部活すら確認できなかった。

 さらには……。

 瀬戸零、アリオ・トーマ・クルスという生徒も在籍していないという。


──どういう事なの!?


 混乱する中で真琴は「そう言えば……」と、思い当たった。

 それはアリオと零が自分以外の生徒と一緒に居る所を見た事が無いのだ。

 零は『黄昏の世界』という異空間を操る悪魔だ。人間の記憶を操作できてもおかしくは無い。


──でも……それなら、何故わたしは記憶を失ってないの……。


 真琴は呆然として廊下を歩いた。


 キーン、コーン、カーン。


 午後の授業が始まる予冷が校舎内に響いた。

 と、同時に真琴を強烈な違和感が襲った。

 それは『黄昏の世界』へと誘われた時に感じる違和感だった。

 案の定、真琴の周りからは自分の教室へと向かう生徒や先生たちが消えている。そして、廊下の窓からは紅い光が差し込んでいた。

 真琴は校内を疾駆し、アリオやセーレの姿を探した。

 しかし、アリオとセーレの姿はどこにも見当たらなかった。


「アリオ!! セーレ!!」


 叫んで呼びかけてみても、聞こえるのは反響する自分の声だけだった。

 焦燥感に駆られながら、教室を覗いて回った真琴は、窓から校庭を見た。

 すると……。

 グラウンドに壮麗な馬車が停まっている。

 そして、馬車の前では、銀髪の少女が一人、佇んでいた。

第九話『忘却の彼方』②へ

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