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Nothing But Requiem 背眼の魔女  作者: Nothing But Requiem
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第四話『夢の先に在るもの』①

 不治の病から生還を果たした女子高生の真琴は、後遺症で人の心が読める『読心』の能力を手に入れる。家族や友人の心の声を聞いて傷つき、苦しむ真琴。そんな真琴はある日、妖しく輝く月の下で謎の美少女アリオと運命的な出会いを果たす──。今、魔女が暗躍する帝都に、再び魔銃『ブルトガング』の銃声が響き渡る。

「どこへ行っていたんだ真琴!!」


 片桐家本宅の大広間に片桐直冬の怒声が響き渡った。

 直冬の前では真琴がその両手をギュッと握りしめ、俯いていた。

 片桐家の使用人たちも直冬の怒気に肩を竦め、遠巻きに様子を伺っている。


「そうよ真琴……。護衛も付けずにこんな時間まで出歩くなんて……」


 直冬の傍らに立つ母親の敦子も呆れ顔で言った。

 真琴は必死になって帰宅が遅れた理由を思い出そうとした。

 しかし……。

 アリオと途中まで一緒に帰ったことまでは覚えている。高架線の下を一緒に歩き、アリオの歌を聞いた。しかし、その後を全く覚えていない。いきなり記憶が飛び、気付けば自宅の玄関前に立っていたのだ。

 説明の出来ない事態に真琴は沈黙するしかなかった。そして、その沈黙を直冬は反抗として捉えた。


「こんなに遅くなるなら、藤乃院家みたいな没落貴族の娘なんかと仲良くするな!!」


 それは直冬の本心だった。真琴には世間体を気にする両親の『声』だけが聞こえてくる。

 語気を荒げる直冬を真琴は睨んだ。


「雅は関係ないでしょ!!」

「死ぬと決まった娘と付き合うな。お前はあんな娘と違う!!」


 直冬の言葉には取り付く島もない。

 真琴は下唇を噛んだ。


「もう……いいよ」


 力なく言うと真琴は直冬に背を向けた。


「勝手に話を終わらせるな!! いいか、しばらく藤乃院の娘と会うのは禁止だ!! わかったな!? これは片桐家の家長としての命令だ!!」


 直冬の怒声を諦めにも似た気持ちで聞きながら、真琴は徒労感で重い足取りを自室へと向けた。

 真琴にとって明白な事。

 それは唯一、心を許せるのは家族ではなく、雅だけという事実だった。


×  ×  ×


 シャワーを浴び、白のレースワンピースに着替えると真琴は5階に在る自室へと入った。

 見事な彫刻が施された勉強机に天蓋付きのベッド。直冬が貴族の部屋を模して作った自室は広く、豪華な調度品が設えてある。しかし、真琴には温度の感じられない無機質な部屋にしか思えない。

 真琴は窓辺へと近づくと、窓を開け、桟に腰かけた。

 涼しい夜風が真琴の頬を撫で、カーテンを躍らせた。


──何もかもがままならない……。


 滅入る事が続き、着慣れた寝間着ですら重く感じる。

 真琴は窓辺に置かれたスクールカバンからタバコを取り出すと火を点けた。


 ジ、ジ、ジ。


 呼吸に合わせて小さく燃える炎を見つめながら、真琴はスマホを取り出した。

 取り出した弾みで、スマホに取り付けられた天使のキーホルダーが揺れる。


──……雅。


 真琴の指先が天使に触れる寸前で停止した。


 ヴ、ヴ、ヴ。


 真琴の心中を知ってか知らずか、スマホに振動が走り、画面が白く光った。

 見ると、雅からメッセージが来ている。

 いつもは帰宅してからメッセージをやり取りしている。日課となっているメッセージが無い事に雅は心配しているかもしれない。そう思いながら真琴はメッセージを開いた。


『真琴、まだ帰ってないのかな? いつも遅くまで居てくれるけど、やっぱり心配だよ……』


 案の定、雅のメッセージは真琴を心配するものだった。


『今日は真琴の気持ちを考えないでゴメン』


 メッセージの最後は真琴とのやり取りを悔やむものだった。

 こんな時、真琴は返事の仕方が思いつかない。

 本当は『雅、わたしの方こそゴメン』と伝えたかったが、真琴はその術を知らなかった。


──今日はもう遅いし……。今度、雅に会ったら、その時に伝えよう……。


 もっともらしい理由を見つけ強引に納得すると、真琴はタバコの火を消しベッドに横になった。 疲労がかなり蓄積されていたのだろう。眼を瞑ると真琴はすぐに眠りへと落ちていった。

第四話『夢の先に在るもの』②へ

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