表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

10.篤翔

カマナの一言

『セナちょっと寝過ぎ…僕の出番ないじゃん』

 目の前にいる、目のぱっちりとした可憐な女子を見つめる。その子はおもむろに弁当箱を取り出すと、俺に「はい、どーぞ」とにこやかに笑いながらそれを渡してきた。


 俺は実に困っている。何もこの女の子が嫌だとか、なぜ弁当を渡してくるのかがわからないとかそんな理由じゃない。


――問題はこれが、俺の親友の瀬名だってことだ。瀬名とは小学校以来の親友で、これまでずっと一緒にいた、俺にとってかけがえのない存在。


 だから、俺がめんどくさがりで購買に行くのもめんどくさがって昼飯を抜くこともしばしばあることを知っている。そんな瀬名は、高校に入ってから俺に弁当を作ってくれるようになった。


 …まあ、普通はありえないんだろうとは思う。でも、瀬名の作る弁当は美味かったし、栄養まで考えられていて、そんな瀬名に甘えていつもありがたく受け取っていた。


 ただ、今はどうだろう。いくら瀬名だと分かっているとは言え、こんなに見目麗しい女子から弁当を渡されて意識しない男がいるんだろうか…


「いつもありがとうね、瀬名」


「本当にいつものことじゃないか。礼なんかいらないよ。それより、今日はだし巻き卵にしてみたんだ。篤翔の口に合うといいな」


 椅子に座っている俺に合わせて少し身を屈めながら「へへ」と笑いかけてくる瀬名。正直言ってすごく可愛い。今俺の顔はどうなっているんだろうか? 変な顔してないよな……


 ちなみに、瀬名が女子になったと知ったのはつい昨日のことだ。その日は家でのんびりと趣味の読書に耽っていたのだが、普段人なんかこない時間にインターホンを鳴らしてくる人がいた。その時は家に誰も居なかったし、俺が出るしかないかなんて思いながら玄関に向かいつつ何気なくドアを開けてみれば、一人の女の子がそこには立っていた。


 腰まで伸びた艶やかな髪。大きくてくりくりとした目。陶磁器のような白い肌。そこには、誰に見せたって美少女だと評されるような女の子が立っていた。だが俺は、その絶対に面識のない女の子になぜか見覚えがあった。そのあやふやな疑問はすっと俺の口から出ていた。


「瀬名……?」


 10年連れ添った俺の親友。涼風 瀬名。俺はその少女に、その男を幻視した。


 その少女は、俺の言葉を受けてピシッと固まってしまった。当然だろう、急に自分じゃない名前で呼ばれたんだ。でも、この子は何しに来たんだろうか。


「あ、いや、ごめんね。えっと、うちになにか――」


 その瞬間は一瞬だった。俺には何が何だか分からなかった。その女の子は急に動き出したと思ったら、次の瞬間には俺の胸の中にいたんだ。あんまり急なことで、俺はそのまま両手を上に挙げて降参のポーズで固まってしまった。その時の心臓はこれまでにないほど早鐘を打っていたのを覚えている。


 それから落ち着いて話を聞こうとすると、その少女は自分が瀬名だと言う。初めは俄かに信じ難いものがあったが、自分の直感や雰囲気で、今目の前にいる女の子は間違いなく瀬名なんだと認めた。


 病気やその類ではないらしい。でも、本人はあまり気負いしておらず、その顔にはもう諦めのような表情を宿していた。多分、どうして自分がそうなっているのか、もう知っているんだろう。なんとなくそう思った。理屈とかではない。10年一緒にいた上での経験と勘だ。


「まあ、見てくれが変わっても瀬名は瀬名だ。俺はお前といるよ」


 とにかく、今は瀬名に寄り添ってやることが一番だと思った俺は、そんなことを言って瀬名に笑いかけた。もちろん、励ますためだけにそう言ったのではない。これが俺の本心だ。瀬名ほどいいやつは、そういるものじゃないからな。


「あ、ああ、頼りにしてるよ」


 瀬名は所在なさげに儚げに笑っていた。瀬名は女子になってから表情が色濃く出るようになった気がする。だからだろうか、そんな瀬名を守ってやりたいって気持ちがあった。もう俺は、そんな瀬名を女として見ていたんだ。そして、そんな俺が許せなかった。


「俺もいつだってお前を頼りにしてる。例え、女子になったって何も変わらないだろ?」


 これは半分自分に言い聞かせたものだ。例え瀬名が女子になったって、俺らの関係は変わらない。今までのように、お互い支え合っていけると。


「………ありがとよ」


 その笑顔はある意味トドメだったかもしれない。触れれば壊れてしまいそうな、しかしその笑顔からは瀬名の強かさや可憐さがこれでもかと溢れ出していた。その笑顔は、俺のここまでの心をバラバラに壊してしまうほどの威力があった。この時、俺の中ではもう、淡い恋心が生まれていた。


「………なんのことだ?」


 そして、俺は自分を誤魔化すように瀬名に笑いかけていた。いつものように拳を交わす。だが、そのぶつかった拳はいつものものではなく、柔らかく、明らかに女性のものだった。


 今まで恋とかそういったものに興味はなかった。告白だって受けたことも何度もある。ただ、好きとか付き合うとか俺にはよく分からなかった。だから断ってきたが…


「なぁ、篤翔? 良かったらさ、向こうで一緒にご飯食べないか?」


 屈託無く笑う親友の女の子。俺はどうやら、あっけなくこの親友にやられてしまったらしい。……正直、この親友が可愛すぎて困る。

作品内の時間ですと、6月なので体育祭ですね。体育祭、どういった展開にしようか………うーーーん。


感想のほうお願いします!あ、それと、主人公の名前は涼風です! なぜか途中から普通に涼川と書いていて混乱させてしまい申し訳ありません!

重ね重ねすみませんが、感想!!!聞かせてください!!!おねがいしまーーす!!!


「男子じゃなくなったけど、いつも通りでいいよね?」もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ