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白い肌  作者: ゆずさくら


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(33)

「やっぱり、白いでしょう?」

 佐東さんに腕をださせ、奥さんと俺も同じように袖をめくってテーブルに並べる。

 俺と佐東さんだけが白く、白いと思っていた奥さんの腕は以外に焼けていた。

 いや、焼けていたというか、奥さんの肌は生活するうえでは十分色が白い。

 俺と佐東さんが抜けているように白いということだ。

「記憶障害とかはなかったですか?」

「いや、そんなことは一切……」

 いつ、いつ俺がこの病気に掛かったというのだ、俺が佐東さんにうつしたとか、そういう事なのか。

「記憶にある限り、記憶障害のようなことは」

 最近、幻覚は見たが、とは言い出せなかった。

「あなたが孝明に病気をうつしたんじゃ」

「何を言うんですか」

 俺は身を乗り出して言った。

「……」

 奥さんは、急に体を引いて口を手で押さえて黙り込んだ。

 態度から、近づいたら病気がうつってしまう、と思ったのだろう。

「佐東さんに聞きたいことが」

 呼ばれたのが分かったようにこっちを向いた。

「佐東さん、記憶があるかわからないですけど……」

 俺はスマフォを取り出して、加茂の奥さんの写真を見せた。

「あっ」

「覚えてますか? あの夜、佐東さんこの人に会いましたか?」

「?」

 スマフォをめくって、探偵社にあったデータを見せた。

 最初の反応より強いものはなかった。

 奥さんの画像SNSにもっといい写真がないか、切り替えて見せた。

「あっ! これ」

 佐東さんがスマフォを指さした。

「?」

 俺もそれをのぞき込んだ。

 頭の中がまるで空っぽになり、星空が頭にうかんできた。何か俺のなかの感情、のどを動かそうとするが、息が吐きだされるだけで、声にならなかった。

「くー、すーぅうぅ」

 同じことを思ったのか佐東さんが言いかけて、のどを押さえて、せき込んだ。

 奥さんはキョトンとした顔でこちらを見つめる。

「この写真がどうしたんですか? ただ道路が写っているだけ」

「何って、ここに……」

 俺はもう一度スマフォの画像を見た。

 それはただの・・・道路の・・・写真・・だった(・・・)

 自分の中の変化に戸惑い、ぞっと寒気を感じた。

 俺は確かに今さっき、この画像を読んだ(・・・)

「いや、あの……」

 スマフォの画面を自分でじっくり確認した。

 あの意味の分からなかった写真だ。

 ついさっきは、これに意味が、いや、音が隠されているような気がしていた。

 写真が何かを伝えようとしていた。

 俺は、佐東さんに画面を向けた。

「ぐっ、くすーすうーう」

 佐東さんはのどを押さえながら、何かを告げようとしていた。

 しかし音にならなかった。

 くすーすう。それが、何を意味するのか、今の自分の中にある常識では、分からなかった。

 奥さんは変人を見るようなめで俺を見、憐れむような表情で佐東さんを見た。

「佐東さん、これ、なんて書いてあるんです?」

 佐東さんが目をそむける。

「ちょっと、今すごく肝心なことがわかりかけてるんじゃないですか! 佐東さん!」

 スマフォを突きつけた。

 佐東さんは、急に俺の手を払った。

 不意を突かれた俺のスマフォが床に落ちていく。

 乾いた音が店に響いた。

「怖いよ。この人怖い」

「大丈夫よ、孝明。この人は敵じゃないから」

 佐東さんは奥さんの二の腕にしがみついた。

 床のスマフォを拾ってみてみる。特に傷ついてもいなかった。少し安心した。

「奥さん、この写真を送りますから、佐東さんに何が書いてあるか、聞いてもらえませんか。わかったら僕に連絡をしてください」

 佐東さんのスマフォへ加茂の奥さんのSNSの写真のうち、道路を撮ったと思われる写真を送った。

「今送りました。確認できますか」

 奥さんが佐藤さんのスマフォを開いて、画像を確認する。

「見せてください」

 奥さんと俺で佐東さんのスマフォをのぞき込みながら確認する。

 佐東さんが興味をもったように隙間からのぞき込んでくる。

「……場所だよ。集合しろって。みんな集まれって」

「!」

 奥さんも、俺も佐東さんを振り返った。

 びっくりしたように、佐東さんは自身の口に手をあてた。

「なんですか、どういうことですか? 場所ってどこですか?」

「……」

 佐東さんは、口に手をあてたまま首を振った。

 奥さんがやさしく頭をなでるが、驚いたような表情のまま、のけぞるように椅子に座ってスマフォから離れようとした。

「佐東さん!」

「止めて!」

 詰め寄ろうとした俺を奥さんが制した。

 本当に佐東さんが、高校生か中学生ぐらいの段階に戻っているようだった。

「孝明がおびえるじゃない」

 その時、俺のスマフォが振動した。

 取ろうとした時には振動が治まっていた。

 メールか、メッセージだ、と思って開くと、メールだった。

「幸子…… さち……」

 俺は何か重要なことに気付きかけていた。

「……君島さんの奥さん? ですか?」

 いや、ちがう、おれは結婚していない。

 そうじゃない、何かが引っかかる。

 幸子、そうだ、幸子にも何かある。

「さっきの画像、佐東さんが何か言ったらどんな小さなことでも私に送ってください」

 俺は知らなければならないことがある。

「どちらへ?」

「すみません。行き先はメッセージで送ります」

 俺は急いで駅へ走った。

 湖。

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