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白い肌  作者: ゆずさくら


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(27)

 俺はもう一度ドアノブ付近のことを全部見直してみる。

 縦になっているものを回して横にしてみる。回らなくなる。縦に戻すと、ノブは回る。これでいいはず。

 回った状態で押したり引いたり、扉自体を持ち上げるようにしてみたり、押し下げるようにしてみたり工夫する。

 ……びくとも動かない。

 単純にすごく重いものを扉の向こう側に置いた、とも考えられる。まったくびくともしないような、ものすごく重いものである必要があるが。

「和世さん、聞こえますか?」

 呼びかけつつ、扉を叩く。

 扉の音で、そとから押さえているのか、ノブ周りで錠がかかっているだけなのかを確かめようと思った。

 扉の上の方を叩いて、少し下、真ん中、その下、一番下……

 あまり音の様子が変わらない。つまり、何かで扉を押さえつけているわけではないのだ。

 それと、これだけ呼びかけて返事をしないとしたら、和世さんはこの外にいない、と考える方が正しい。

 何か訳があって(・・・・・・・)事務所を離れたのだ、と考えると答えない理由としてはすっきりする。

 いるのに答えない理由はない…… まさかまた例のカツラを使ったドッキリを仕掛けるためだとしたら…… ゼロではないが、ありえる。

 ただ、何にせよ、これだけ見事に扉が動かないという謎が残る。

 俺は和世さんに連絡を取ってみようと考えた。

 スマフォを取り出すと電話をかけた。

「レイクサイド・レンタカーですか?」

 メモを見て、例の同級生の店員の名前を言って呼び出した。そして、和世さんに連絡を取りたいと告げた。

 さっきまで同じ場所にいたんだが、閉じ込められたと正直に事情を話した。

『カズヨに連絡とれたら、掛けなおしますね。表示の番号でいいですか?』

 俺はその番号にお願いします、と伝えて通話を切った。

 これで待つしかない。

 畳の上に腰かけると、テレビをちらっとみた。

 映像は次第にノイズだらけになり、終了した。

「ふぅ……」

 正直気味の悪い映像だった。

 しばらくすると電話がなった。

 ろくに画面も見ず、急いで電話に出た。

「もしもし……」

『キィ…… キィ……』

「!」

 あの映像の音だ。

 俺は思わずテレビの方を振り向いた。

 テレビは映像が消えており『入力1』というグリーンの文字が表示されているだけだった。

 スマフォが相手から切断された。

 通話後のスマフォの画面に『幸子』と書かれている。

「ちょっ……」

 なぜ、いま、あいつから電話がある?

 しかも、和世さんのいたずらに合わせたような内容で……

 ありえないことが重なり、思考が止まってしまう。

「和世さん、出してくれ、頼む!」

 ドアノブを回し、扉に体をぶつける。

 やはりビクともしない。

「和世さん!」

 スマフォが振動する。

 今度は、誰がかけてくるのかを見る。『非通知』だれだろう。和世さんだろうか。ためらいながらスライドさせる。

「もしもし」

『どうしたんですか?』

「和世さん? 開けてください、和室から出れない」

『また幻覚みてるんですか?』

「違う、扉が全く動かないんです」

『わかりました、そこは信じます。それじゃ、今どこですか?』

「どこって……」

 俺は絶望した。

 さっきからここがどこかを言っているつもりだった。

 和室。ラブホの事務所の奥の和室、だ。通じる話だと思っていた。

「だから、ラブホの事務室の奥にある和室の中です」

『今私はそこを見てますよ。誰もいません。君島さん、あなたまた幻覚に惑わされているんです。そこを動かないでください。私が探しに行きますから、いいですか、そこを動かないでください』

「……はい」

 通話が切れていた。

 非通知の電話では、こちらからかけなおすことも出来ない。

 電圧が下がったのか、部屋の明かりがフッと消える。

「なっ!」

 スマフォの明かりだけが周囲を照らしている。

 いや、奥のテレビもまだぼんやりとついて『入力1』を表示したままだ。つまり、停電ではないのだ、明かりだけが消されたのだ。

 俺はスマフォのフラッシュを点灯させてコンセントを探した。

 唯一の外との窓であるスマフォの電源が切れたらおしまいだ。和世さんと会うまでは充電を続けて、スマフォの電池を切らすわけにはいかない。

 壁沿いをずっと照らしていくと、コンセントが見つかる。

 そこに小さい充電器と、ケーブルをつなぐ。

「えっ……」

 スマフォの電池マークが『充電中』のアイコンにならない。

 俺は何度かケーブルを抜いたり挿したりを繰り返したが、まったく反応がない。

「まずいぞ……」

 俺はテレビのコンセントであれば電気が来ていると考え、テレビに近寄った。うしろのケーブルを手繰って、コンセントを見つけるとそのケーブルを充電器のケーブルと差し替える。

「?」

 つかない。充電器がこわれたのだろうか。

「!」

 テレビには『入力1』というグリーンの文字がまだ表示されている。

 コンセントから電源ケーブルは外したはずだった。

 俺はテレビから後ずさりした。

 すると、ザーッとしたアナログノイズが画面に映り、最初にみた白黒の、井戸が映し出された。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 頭を抱えて畳を転がった。

 見たくはなかったが、俺はテレビを見続けていた。

 キィ、キィと金属がこすれる音がすると、井戸の縁に内側から手がかけられる。

「誰だよ、お前!」

 体が震えていた。

 ザバッ、と音がしたと思った時には、俺はずぶ濡れになっていた。

「またお前は夢見とるんか」

「ばあちゃん、いたんか?」

「おった、おった、ここにおった」

 自分の服の裾から水がしたたり落ちている。

 目の前には、湖の縁に立っている別荘が、立っている。この前より、大きく、視界を遮ってた。

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