ねぇ
ねぇ、今どこにいる?
思えば 事の発端は、南乃花のあの一言だった。
「ゴールデンウィークなんだし、どっか行こ」
確かに学生にとっては、そこそこ長い休みだ。
どこかに遊びに行ってもいいだろう。
そう思った私は、友達の南乃花と2人で遊びに行った。
カフェでお茶したり、ショッピングしたり…
そこまでは、すごく楽しかった。
でも、まだ少し時間があったのをいい事に私達はあのトンネルへと行ってしまった。
そこは廃トンネルで、関係者以外立ち入り禁止だった。
それでも、私達は入ってしまった。
「大丈夫だよ。幽霊とかいるわけないでしょ」
南乃花は笑ってそう言った。
ねぇ、みんなはどこにいる?
そのトンネルはとても暗かった。
まぁ、廃トンネルだし当たり前か。
なんて思いながら南乃花と一緒に歩いて行った。
今日はとても良い天気で、暑いくらいだったのに 今は寒いくらいだ。
鳥肌が立ってきている。
私は南乃花に言った。
「ねぇ、もうそろそろ帰ろうよ…」
南乃花は答えない。
嫌な予感と寒さが、恐怖をより一層強くする。
「ねぇ、南乃花!!」
私は恐怖を払いのけるように、怒鳴り声で言った。
南乃花は、何かブツブツと言った後 走ってトンネルの奥へと行ってしまった。
ねぇ、あんたのせいだよ?
「ちょっと、南乃花!?」
私は怖くなる。
どうしちゃったの?南乃花。
南乃花が心配だ。
でも、私は迷った。
南乃花を追いかけて奥へと進むか、1人で戻ってしまうか。
私は悩みに悩み、来た道を戻ることにした。
素人の私なんかが行っても無駄だ。
それに自分に何かあったら元も子もない。
警察とかに電話しようと思ったが、電波がないせいか繋がらない。
私は早歩きで来た道を戻っていった。
でも、一向に入り口が見えてこない。
こんなに遠かっただろうか。
私は走った。怖くて怖くて走った。
息がハアハアと上がっている。
「きゃ!」
私は石につまづいて転んでしまった。
膝から、だらりと血が垂れてくる。
痛い。と同時に涙が出てくる。
全部、南乃花のせいだ。
ねぇ、今みんなはどこにいるの?
今ね。私はね。暗くて寒いトンネルの真ん中で蹲ってるの。
誰も来ないの。ずっと待ってるけど来ないの。
ねぇ、もしトンネルで私を見つけたら …
ワタシトカワッテクレルヨネ?