2 壊れた家族
隣町にあるわたしの実家では、兄と父とが暮らしていた。
この間まで同居していた兄嫁は、子どもたちを連れて自分の実家に帰ってしまっていた。
「もしかして、わたしが家を出ちゃったせい? だからお兄ちゃんだけが残ったの?」
気になってそっと尋ねてみると、兄は顔を曇らせため息をついた。
「いや……どのみちもう、あいつといるのは限界だったんだ」
聞けば兄嫁には以前から浪費癖があり、家計はいつも火の車だったという。
家事も育児もほとんどできずに1日中部屋にこもっては、届いた品物の山に埋もれて通販のカタログを眺め続ける妻。
子どもにもこれからお金がかかるのだし、それでは困るとたしなめると、
「死にたい気持ちを紛らわすために買い物してるのに!」
そう言って一晩中泣き続ける。
親の愛を知らず、わたし以上に不安定な心を持て余していた兄嫁。
可哀想だからどうにかしてやりたいと思ってきたけれど、これ以上何をしてやったらいいかわからない。俺もいいかげんもう疲れたよ、と兄は力なく笑う。
「だから別に気にしないでいいよ」
その笑顔を複雑な気持ちで見つめる。
それでも兄が実家に残ってくれたおかげで、安心して新しい生活を始めることができた。それは本当にありがたいことだった。