表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
備忘録2 親を捨てる  作者: 小日向冬子
ふたりで生きていく
2/57

2 壊れた家族

 隣町にあるわたしの実家では、兄と父とが暮らしていた。

 この間まで同居していた兄嫁は、子どもたちを連れて自分の実家に帰ってしまっていた。


「もしかして、わたしが家を出ちゃったせい? だからお兄ちゃんだけが残ったの?」


 気になってそっと尋ねてみると、兄は顔を曇らせため息をついた。


「いや……どのみちもう、あいつといるのは限界だったんだ」


 聞けば兄嫁には以前から浪費癖があり、家計はいつも火の車だったという。


 家事も育児もほとんどできずに1日中部屋にこもっては、届いた品物の山に埋もれて通販のカタログを眺め続ける妻。

 子どもにもこれからお金がかかるのだし、それでは困るとたしなめると、

「死にたい気持ちを紛らわすために買い物してるのに!」

 そう言って一晩中泣き続ける。


 親の愛を知らず、わたし以上に不安定な心を持て余していた兄嫁。


 可哀想だからどうにかしてやりたいと思ってきたけれど、これ以上何をしてやったらいいかわからない。俺もいいかげんもう疲れたよ、と兄は力なく笑う。


「だから別に気にしないでいいよ」


 その笑顔を複雑な気持ちで見つめる。


 それでも兄が実家に残ってくれたおかげで、安心して新しい生活を始めることができた。それは本当にありがたいことだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ