ストーカーだな
兎に角立地条件の悪い学校は、一言に、山の上に建っている。
噂によれば某大企業との場所取りに負けたらしい。
その勝者は山の下の土地をふんだんに、余すところなく使っている。
余っていたら、場所を変えろと言いに行くところだ。
下から上に登るのに歩くのは得策ではない。運動部などは顧問に乗るなと、言われているらしいが、駅からのシャトルバスが出ているからだ。
これも、立ち番の教師によって、生徒はバス内に押し込められるので座れなければ、意外と大変。
土地を建物の為に使うためか、坂道がかなりの急勾配。
オマケにぐにゃぐにゃとくねっているので、バスがかなり揺れる。
それを乗りきれば、校舎につける。なんてことはない。
バスの停車位置になっている第三駐車場から、校舎まで、まだ同じような坂がある。
はっきり言って、死ぬほど辛い。
それに加えて自教室が上の階だと、軽く運動した気分になる。
だから今、怠い。
「なあ、こんなに疲れたっけ?」
「あんな坂を登って疲れないわけないよ」
坂をバスで登ってきた遠野さんに訊くが、帰ってくる答えは正論だった。
「あ、バスのスペース開けてくれて、ありがと」
起こったことをありのまま話そう。
シャトルバスに乗ろうとした俺と東野さん。
順番待ちの列に並び、俺がバスに乗ったところで満員になった。
そのバスは最終で残りのものは、無条件で歩きだ。
後ろを見れば、東野さんが乗っていない。
良心が働き、レディーファーストを紳士らしくして、
「東野さん変わろうか」
彼女はそれを拒否したが、自身でも歩きたくはなかったらしく、二、三度変わろうと言うと「じゃあ」と、バスに乗り込んだ。
そして自動的に、俺は歩き。
そんなところだ。
「じゃあ教室まで行こうか」
俺が言い、歩き出すと遠野さんもついてくる。
あとの流れは簡単だ。教室に向かうだけ。
でも、
「やっぱりあれはストーカーだな……」
教室の中をこそこそと覗いている、俺と同じ制服の生徒。
単発の髪は寝癖かどうかもわからないくらい、跳ねている。
ネクタイを緩めブレザーのボタンを外していて、教師に見つかったら、指導待ったなしだ。
ここは声を掛けるべきか、正直この後の展開が面倒臭い。
結論として、無視を決め込みもうひとつの扉から、教室に入る。
「えええええええええ」
なにも聞こえない。廊下からは何も聞こえない。