表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

記憶取り戻したい?

遠野麻季。

その名前が本当だとしても、なぜ知っている?

「二人はお知り合いですか?」

あ、今思い出した。と言いたげな顔をする。

「そうだよね。そこもわすれてるよね。麻季のこと忘れてるんだからねー」

そこもってことは、知ってたのか。以前の俺は。

どうでもいいだろうが、今の嘲笑ったような口調は、本当にイラつく。

「麻季と僕はね。三親等以内の間柄だよ。従妹」

いとこが似ている確率はあまり高くなかったと思う。

それに倣ってなのか、二人は似ていない。

佐々木さんの茶色がかった髪に反して、遠野さんは綺麗に光を反射する黒。漆黒とも言える。

目は辛うじて開いているような佐々木さん。

普通よりも大きい遠野さん。

男と女で完全に対極と言ってしまえぱ、それまでなのだろうか。

「高学歴で羨ましいです」

俺は中の上の学校だし。

「それは僕がかい? それとも麻季が、かな?」

「佐々木さんも羨ましいですが、その恩恵を受けられる遠野さんもです」

座っているベッドの斜め後ろ辺りから、「さん付け……」といった主は、声から判断して遠野だろう。

付き合っているはずの彼氏に、さん付けで呼ばれるなんて、よほどないことだろうし。

「お褒めに預かり光栄です。……んでさ」

意識を佐々木さんに向ける。

「記憶、取り戻したい?」

「当然です」

「それは、取り戻したいのかな? それとも逆?」

今わかった。この人性格悪い。

そんなこといちいち言ってても、話が進まない。

さらに、寝起きだからか、少し怠い。あと五分をエンドレスループしたかった。

会話を進めるために、

「記憶を取り戻したいです」

それを聞いた佐々木さんが、俺から視線をそらし、口角を上げる。

その目には遠野が写っているのだろう。

この人は身内に甘い。と考えるべきだが、そこにあったのは、面白がっている顔だった。


事故にあったのなら、少しは入院するだろうが、俺は一週間かそこらで退院した。

左腕は骨折しているにしても、もうすぐ引っ付くからとのことだ。

右利きだから、あまり不便はない。

遠野さんは入院中、毎日病室に来た。

色々と付き合っている時の事を、教えてくれていたのだが、全く記憶に無い。

まるで仲の良い女友達に、彼氏とどこに行き何したと聞かされている気分だ。

時は本題に急ぐようで。

今俺が着ているのは、高校の制服。

この腕で登校しろ。ということだ。

俺がいつも乗っている電車は、学校最寄りの駅が小さいというせいか、ほぼ百%こんでいる。

そこをなんとか乗りきり、改札をぬける。

そこから顔を上げ、右を向く、一年以上見た校舎が見えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ