4w1h
事故にあって目が覚める。
泣いている母さんには申し訳ないが、その顔が綺麗とは言えなかった。
清潔感を思わせる白を基調とした病室は、個室。
あれ? 何してこうなった……?
事故にあったことは覚えてる。けれど、何でそうなったのか、誰がそこにいたのか、5w1hがわからない。いや、4w1hがわからない。
そこで泣いているのは、母さん。
ならそこにいる、ブレザーの女は誰だ……?
「ごめんね。いきなり泣いたりなんてして」
五分くらいたった。
母さんは、涙が渇れたのか、それとも気持ちが落ち着いたのか、泣き止んだ。
しかし依然として、そこのブレザーの女は動かない。
じっとこちらを見て、微笑んでいる。
その笑顔が不気味に映る。虎視眈々とは違う。どこかで見たことのあるような笑顔。
「大丈夫? 頭が職務放棄してない?」
ここまで思考が巡っていて、職務放棄と言われては、俺の頭脳は解せないだろう。
まあ脳内だから、母さんを責めることはできないけど。
「勉強面ではそうかもしれないけど、ちゃんと働いてるよ」
ところで、
「そちらの方は?」
途切れる。
母さんが目を見開き、明らかな動揺をみせる。
「わからないの……?」
訊かれて考えても思い出すことは、なにもない。
「すみません。どちらさまでしょうか?」
誰何する、
「忘れ……たの……?」
俺の脳には異常が存在したらしい。