第陸話 頑張れ…
俺たちが出てきたドアを少し見つめていた。あぁ言ったが心配なのは心配だ。優しすぎる言葉が今の俺『瀬良 或斗』には、心に響いて痛くてしょうがなかった。
「……心配ですか? 」
「し、心配じゃないわい!! 」
心配そうに腰に刀を担いだ『小鳥遊 五十鈴』が顔を覗いてきた。俺はドアに背を向け、先を急ぐことにした。残ったみんなを小鳥遊と一緒に追いかけるように走り出すと、分かれ道が多くあるのが見てわかった。だけど、先頭を走っている三枝は、その道を見向きもせずに一直線に道を進んでいる。この中で唯一働いていた三枝に頼るしか今はなかった。
「着きました」
突き当たりの部屋のドアの前に差し掛かったところで三枝が呟いた。ドアには確かに『結界管理室』と書かれている。俺は、ドアノブに手をかけてみんなの目を見た。みんなは頷く。開けろという合図だ。ゆっくり開けると警備室のようにたくさんのモニターが壁一面に吊るしてある。俺は、ぶっちゃけこの後どうやって結界を解除するのか分からない。そもそもこんな簡単にこんな大事な部屋にたどり着いていいのだろうか? 誰かが待機していても全くおかしくない部屋だ。
そう思っている間に、三枝が解除の準備を始めていた。手際がよく淡々と進めている。俺と大倉と小鳥遊は、三枝の後ろで見守ることしか出来ていない。
「随分な働き蟻だね、諸君たち」
声に気付きドアの方に目を配った。そこには、憎たらしく俺たちの最大の敵の年寄りが立っている。
「キサマ!!」
「おうおう、わざわざ招待してやって遊んでやってるのにその言葉か」
後ろを振り向くと当分終わりそうにない雰囲気だった。俺たちが三枝を守らないといけない状態だ。
(まかせて!)
俺の右隣に立っている大倉が耳打ちしてきた。その後、俺と小鳥遊に少し下がるように言ってきた。な、何を……?
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 」
そう大倉が大声を出すとともに右足で自分の足元を蹴りつけた。その蹴りは、地震が起きるほどでそれと同時にヒビが入ってきている。
「もういっちょ!!!!!! 」
大倉は、さっきと同じように大声を出しながら地面と靴を叩きつけた。二回目の蹴りの衝撃のせいで床にどんどん穴が空いてきている。床は、全面コンクリート製で一層しか床は貼っていないおかげで簡単に壊れてくれたようだ。まぁ、一層だけでも木の床でも二回の蹴りで壊せるほどやわじゃないはずだがな。
どんどん大きくなっていく穴は、ブラックホールのように大倉と年寄りの『三枝 幻世』が飲み込まれ、ギリギリのところで俺の足元近くで止まった。もし半歩下がらなかったら俺も飲み込まれていたところだっただろう。
「大倉!!! 」
俺は、無意識に消えていく大倉の名前を叫んだ。消えざまに大倉は、笑っているようにも見えた。その笑顔に何が含まれているのか分からない。『勝ってくる』という意味かも知れないし『頑張る』という意味だったのかもしれない。だけど、俺が言えることはただ一つ。
『頑張ってこい!!』
† † † † † † † † † † † † † † † † † † † †
「行くぞ……! 卍解!! 」
少しセリフをパクりながら俺『水面 和樹』は、体の力を引き出すために練り込む。このセリフ、剣を使う攻撃を放つ時に言うべきだったな。まぁ、剣なんて俺は使わないけど……!
「そんなことしても、僕には傷一つ残すことはできないですよ」
そんなことはない。心の中で叫んだ。俺は、力を引き出すために全部聞き流した。ここは俺に任されたんだ。仲間に頼まれたなら全力で遂行する、それが俺の決めた誓約だ。
『開門!!』
叫ぶと同時に俺の周りだけ下から扇風機が当てられているように服や髪が靡いた。俺は、なんとしてもこいつを……。
『倒す!!』