第参話 基礎の悪魔
「三枝幻世は、監禁する人間は絶対に『人間隔離室』に入れておきます。なので『結界管理室(中から魔法などを使い外に出られないようにする結界を管理している部屋らしい)』を破壊したあとに人間隔離室に向かい、妹さんを助け、転移石を使って脱出するのが先決だと思います」
悠水を助けに行く二時間前に話し合いをしていた。計五人で助けに行くことになっている。俺のためにわざわざ力を貸してくれる仲間たちに感激を覚えていた。
「なぁ、ここはどこだ?」
転移石を使い学校を後にした。一応全員同じ部屋にいる。まぁ同じところを思って使ったのだから当たり前なのだが。しかし……
「………さぁ?」
俺たちが着いた部屋は、以前まで三枝がいたのにも関わらず三枝さえも知らない部屋だった。そして、俺の知らない人物もいた。
「やぁ、ようこそって言っておいたほうがいいのかな?」
その部屋にある唯一の部屋の前に茶髪で白衣を着た青年が立っていた。しかも仁王立ちで。白衣を着ているっていうことは、ここの研究員なのだろう。
「お前がいるってことは、まさかここは……!」
どんどんと三枝の目が大きくなっていくのが見てわかった。おそらく三枝にとっては、ヤバイやつなのだろう。
「誰なんだ、あいつ?」
「三枝家直属科学研究部実験科リーダー『八勝 勝八』。『Della frattura multipla』
と呼ばれている人物です」
『Della frattura multipla』。日本語訳で『粉砕骨折者』か。まぁ、聞いてもわからないんだけどね。
「聞いたことがあります。確か、三枝家で唯一幻世に実験体にされ生きて帰ってきたという。体の中の骨をすべて折られても死ななかったということで『Della frattura multipla』と呼ばれていると聞きました」
……はぁ?なにそれ。物語最初からチートの敵キャラかよ。始まってすぐバットエンドかよ。
「まぁ、見てなって!」
そう言って水面が拳を鳴らしながら前に出た。
「ダメですって!水面さん、死にますよ!」
俺は、ガチで水面に警告した。
「俺に任せろって!」
「だって、だって……」
そう言いたくなるよ。あの練習を見れば。だけど、練習でも普通にすごかったけど。こんなの分が悪すぎる。
「まずは、基礎を覚えてもらう」
俺は今、金髪不良少年の水面から指導を受けていた。基礎の指導は一番水面がうまいらしい。なぜなら、戦闘の時には基礎能力しか使わないらしいし。そのせいで世からは『Fondazione del Diavolo』と呼ばれているらしい。ついでに日本語訳で『基礎の悪魔』。
「どんな攻撃にも『iamma』『Acqua』『Erba』『Tuono』『Scuro』『Luce』みたいな属性が必ずある。基礎攻撃にも当たり前だがある。その属性を見分け、相性に合わせて攻撃を当てるだけで他の攻撃よりも多くのダメージをできるんだ」
……ゲームか!!どっからどう聞いてもゲームの設定説明じゃん!まるでポケ〇ンだよ!パ〇ドラだよ!
「まぁ、これをできるようになるには多くの戦闘経験と、それ相応の頭がないと無理だがな」
来たよ!頭がいいよ自慢。マジで嫌いかもな。
「だけど、これができるようになれば……」
「相手は君かな?」
分が悪くても、あまり好きでない人でも信じなければならない。わざわざ俺のために命をかけてくれてるんだから。俺が信じなくて誰が信じる?
「瀬良、これが最後の教育だ。属性を見分け、相性を合わせれば……」
水面は、ズボンのポケットに手を入れて動かない。だけど、気付かないうちにどんどんと水面の体が光り、部屋全体が真っ白になるほど光りだしていた。
俺は瞬きをした。パチリと。だけど、今まで居た場所にはいない。気が付くと八勝の背の後ろにいる。ほんの一瞬の時だった。
「だけど、これができるようになればどんなに強い相手でもそれ相応に対処できるってわけだ」
水面は、目の前に置いてあるリンゴを見つめると同時に真っ二つに切った。っていうより『自然と切れた』という方が合っていると直感的に分かった。
「このように手を使わずにリンゴだって切ることができる。ついでに今使ったのは、雷属性の基礎魔法『強化』を自分から出る雰囲気に乗せ切れ味を増加させ切断したってことだ」
その他に属性には必ず基礎魔法があるという。火属性は『攻撃』により攻撃する力を上げる。水属性は『防衛』により自分自身の防御を高め、空気の盾を作ることができる。草属性は『回復』により自己治癒能力を高める。雷属性はさっきも出てきたように『強化』により空気をナイフのように扱ったり、攻撃力を上げたりできる。闇属性は『消失』により姿を消すことができる。光属性は『閃光』により動作のスピードを上げることができる。
……と水面から聞いた。やはりゲームのようだった。いや、そもそもこの世界はゲームの中の世界なんじゃないか!? 多分ゲームの世界だって言われた方がシックリくるだろうな。S〇Oみたいだなぁ。
「そして、例えば雷属性と光属性の基礎魔法を組み合わせることでこんなことができる」
気が付くと八勝の背の後ろにいる。本当に瞬きしている間だった。学校で教えてくれた技を実際に戦いの場で使ってくれたのだ。どんなに不死身と詠われていたとしても、どんなに強い奴にでも通用することを教えてくれたのだ。そしてこの技の名前は……
基礎魔法術式第三式『体内電柱(Utility Corpo pole)』
「見たか、瀬良!これが俺からできる最っ高の教育だ!!」
水面は、振り返ると同時に大きな声で言ってきた。満面の笑みで言う。
おそらくこのような敵が何人もいるのだろう。俺は、いや。俺『たち』は最高の仲間と共に突き進むことができる。