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久しぶり

「いつきー先帰っちゃうよー!」


リサの大きな声に、いつきははっとして校舎を後にした。


「ごめんごめん、待ってー!」


息を切らして走り、二人に追い付いた。


ー…


「結局、なんんだったのかなさっきの。校舎が全面立ち入り禁止なんて、今までで初めてだよね。」


駅までの帰り道、三人並んで歩いていると、まなかが呟いた。


「なんか、事故があったみたいだよ?」


いつきは先ほど周りから聞こえてきたひさひそ話を思いだした。


「事故!?うちのガッコで?珍しいねー」


リサは相当驚いたようで声を張った。


「しかもなんか状況的にやばいみたいで…」

「まさか死ー…?」


まなかが恐る恐る訪ねるが、いつきは首を横に振る。


「そこまではわかんなかった。でも結構重症みたい。」


そうこう話しているうちに、学校から最寄りの駅へついた。いつきだけは二人と逆方向なので、手を振って別れ反対側のホームへと移動した。


ホームを歩いていると、同じホームの少し離れたところにしおりの姿を見つけた。しおりは1人電車を待ちながら本を読んでいた。いつきは少し躊躇ったが、喧嘩したわけでもないのに知らん振りするのも気が引けたので、しおりの元へと近づいていった。



「…勉強?」


背後から突然声をかけられ、しおりはびくっと身体を震わせた。


「あ…いつきかぁ。ビックリするなぁ、もぅ。」

「ははっ、ごめんごめん。」


いつきはそう言いながらしおりの隣に立った。

「なに読んでるの?」

「ん?これね、課題なの。この本読んでレポート書かなくちゃいけなくて…。」


しおりは面倒くさそうな笑みを浮かべた。

昼に声をかけたときとは違って、いつものように優しい口調で応えたので、いつきは少し安心した。


「そっか…ホントに忙しいんだね。」


いつきがそう呟くと、しおりはなにも言わずにこっと笑った。


ー…まもなく、ホームに電車が参ります。ご注意下さい。


二人の沈黙の間を埋めるようにアナウスが流れる。


「…なんか久しぶり。」


続けていつきがぽつりと呟く。


「え?」


しおりは視線を本からいつきへと移した。


「なんか最近まともにしおりと話せてないよねーって、お昼に三人で話してたんだぁ。」


いつきはしおりと目を合わせることなく線路を見つめながら言った。


「そ…そうだ、ね。ごめんね、でも本当に忙しかったのここ最近。」

「そんなのもちろんわかってるよぉ。しおりが先生目指してずっと頑張ってきてること知ってるもん。」


自分が三人から嫌われたのだと思ったのだろうか、必死なしおりにいつきは笑顔で優しく応えた。


「うちらしおりの邪魔しちゃってるんじゃないかなぁ…なんて、ちょっと思ったりしてさ。まなかなんか、私しおりに嫌われちゃったのかなぁなんて、泣き出すんだよ。もぅ、まなかちゃんしっかりしろーって感じでさ。」


いつきの言葉に目を丸くするしおり。


「ち………ちがっ」


ガタンゴトンガタンゴトン…


その直後、電車が駅に到着した。しおりの言葉は電車の音にかき消されてしまった。


ー…ドアが開きます、ご注意下さい。


二人は電車に乗り込んだ。その後二人は別れるまで普通に会話をしながら帰ったが、しおりには何か後悔のようなものがあるように見えた。



ーー…


「ただいまぁ…。」


午後の授業が休講になったため、早めに帰宅することができたいつき。しかし今日は何故かいつも以上に疲れている。

いつきは荷物を置くなりリビングのカーペットに寝転がった。そして、軽くため息をつく。

寝返りをうったときにズボンのポケットに入っていたケータイ電話が骨盤に当たって鈍い音がした。


「…痛っ……」


寝転がったままポケットからケータイを取り出す。そういえば朝アラームを解除して以来、ケータイを開いていなかったことを思い出した。もっとも、最近頻繁にケータイを開く必要もなかったため珍しいことではなかった。

ケータイを開くと待ち受け画面には『受信済みメール3件』と表示されていた。そのうち2件はどーでもいい宣伝メール、1件は兄・尚稀からだった。


「お兄ちゃんからだ…珍しいな。」


メールを開くと、本文には

『家着いたらメールくれ』

とだけ書かれていた。いつきはよくわからないままとりあえず家には帰ってきたので返信をした。


それから10分足らずで尚稀からの返信が来た。

『テレビ電話するからパソコン開いとけ』


尚稀のメールは簡潔すぎて絵文字もないため感情がいまいち読み取りにくい。

いつきは渋々重い身体を起こし、リビングに置いてあるパソコンを起動させた。


少しすると、着信が入る。


「おー、いつき。こないだぶりだな。」


テレビ電話が繋がると、画面には尚稀の顔が映し出された。


「どーしたの、雑誌送ったわけでもないのにテレビ電話なんて珍しい。…ていうかお兄ちゃん、目の下のクマやばくない?」


いつきは画面越しの兄の顔が前よりもやつれていることに気づいた。


「まぁそんなことどーでもいいから…」


「(いいのか…?)」


いつきは少し気にかかったが、とりあえず兄の話を聞くことにした。


「で、あれからそっちで何か変わったことあったか?」


尚稀からの唐突な質問に、いつきは最初何の事を聞かれたのかわからなかった。


「え?…うーんと、おばあちゃん家の電子レンジが新しくなったことくらいかな…」


「ちげーよ!そういうことじゃねぇって!……『LEVELアレ』のことだよ…」


「アレ…あぁ!はいはいはい…」


いつきの鈍感さに尚稀は頭を抱えた。


「しっかりしろ。お前それでも大学生だろ。」

「(むっ)そんな言い方しなくたっていじゃん!…そうだなー、特に変わったことはないんだけど…あっ」


その時、いつきは電車で見た色着きの『LEVEL』を思い出した。


「そういえば、水色の『LEVEL』持ってる人、一人だけみたよ!」

「え?」


いつきの言葉に尚稀は目を丸くする。


「うーん、でもね…周りの人は透明なまんまだったし、見間違いかな〜とも思ったんだけど…。しかも他の友達は緑色の『LEVEL』持ってる人見たって言うし……。」

「水色と、緑…な。」


尚稀はカリカリと紙に鉛筆を走らせた。


「何?もしかして次のネタは『LEVEL』についてなの?」


必死にメモを取る尚稀を見て、いつきは尋ねた。


「……いや、本当はダメなんだけど。」

「え、ダメ…って?」


尚稀は忙しく走らせていた鉛筆をぴたりと止めて呟いた。


「お前と電話した翌朝、さすがに俺も気になって色々調べてみたわけ。んで、会社で同僚と『LEVEL』について話してたら、リーダー格の上司に『LEVEL(それ)』について何も触れるなって言われたんだよ。」

「え?なんで?」

「…さぁ、何でも企業命令なんだとよ。」


尚稀はため息混じりに話した。


「なんかそれ、逆に怪しい……。」


いつきは顔をしかめて呟いた。


「だろ?このまま引き下がるのもなんか…って感じだし、こっそり情報を集めようと思ってなー。」

「ははっ、お兄ちゃんらしいね。」


尚稀が人一倍頑固なことは妹のいつきもよく分かっていることだ。


「…で、結局そっちでは色のついた『LEVEL』を見たってことしかないんだな?」

「うん、私が見た中ではね。」


いつきが応えると、尚稀は持っていた鉛筆を置いて「よしっ」と一声漏らした。


「了解。さんきゅーな。また何かあったら連絡する!」

「うん、またね!」


そう言っていつきがテレビ電話を切ろうとした時だった、


「あ、……ちょっと待った!」


尚稀の声にぴたりといつきの動作が止まる。


「今ってさ、日本(そっち)に帰ってきたらまずいこととかある?」


突然の問いにいつきは首を傾げる。


「……別に?特にないけど。…なんで?」

「いや、なんでもない。じゃまたな。」

「うん?バイバーイ」



その言葉を最後に画面から兄の姿が消えた。


「(…なんだろ。近々帰ってきたいって意味かなぁ。)」


いつきはなにも写っていない画面を見ながら心のなかで呟いた。



ーーー…


「あら、いつき今日早いじゃない?」


夕方になり、母が仕事から帰ってきた。


「おかえり。午後の授業が休講になったから、早めに帰ってこれたんだー。」


いつきはテレビの前でゴロゴロとくつろいだ状態で母に説明する。


「なんかね、事故があったみたいで…階段から人が落ちたらしいよ。大丈夫かなぁ。」


いつきが付け足すと、母は少し驚いたようで目を軽く見開いた。


「あら、それ本当?お父さんにしてもいつきにしても、なんだか最近物騒ね…。」


母の言葉に、いつきは少しだけ体を起こした。

「え、お父さんがどうかしたの?」

「会社の後輩が亡くなったんですって。はっきりした情報はわからないらしいけど、傷だらけで道に倒れていたらしくて、そのまま……だから、今日お父さん御通夜に出るみたいだから遅くなるって。」


いつきは「えー…」と声を漏らすだけだった。自分の周りでこんなに事故や事件が起きていることに、驚きすぎて他に言葉が見つからなかったのだろう。





ー…結局、階段から落ちたその人は亡くなってしまったようだ。

 誰もがこれを不慮の事故だと、そう思っていた。それはいつきも同じだった。


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