噂話
ーーー…人は人との繋がりを大切にするべきなのか、
―――…それとも、繋がり過ぎることを恐れるべきなのか。
…
「ゲーム?」
「うん。SNSで流れてきたの。このスマホを持っていないと、これから始まるゲームに不利になるって。」
大学の昼休み。話題の中心は友達が新しく買ったというスマートフォンだ。
「しかも、噂ではそのゲーム、命にかかわるっていうからさぁ。」
「まさかぁ。買わせるための宣伝でしょう?命にかかわるゲームって…そんなん世間が黙っちゃいないでしょ。SNSで流れてくる噂って、デマも多いって言うし。」
「うん。私もそう思ってたんだけど、ちょうど前のスマホ壊れちゃったし、最近みんな買い替えてるから…便乗しちゃった。」
そう言って笑う友達。友達の名前は堺 詩織。
今のご時世、ただのケータイ電話はもはやレア物。周りを見ればボタンなんて無い、大画面のスマートフォンが主流になっている。
しかし、最近SNS(ソーシャルネットワークサービス)上で噂になっている新しいスマートフォンが発売された。それは、日本製のものではない。
けれど、ついこの間発売されたばかりだというのに、この大学内だけでも多くの人がそのスマートフォン(以下スマホ)を持っている。見た目は今までのスマホとなんら変わりは無いし、色のレパートリーがあるわけでもなく、正直何に魅かれてみんなはこのスマホを選ぶのだろうか。…やはりあの噂が関係しているのだろうか。それとも、ただの話題性だろうか…。
自分には理解できない…という風に友達の話を頬杖をついて聞いている、彼女の名前は飛鳥多 偉都希。この春大学2年生になったばかりである。
彼女の携帯電話は例の新作でなければ、スマホでもない。ボタンのついたただの携帯電話・いわゆるガラケー。でも彼女的には何の不便もないし、むしろ使い勝手が良かった。 だから、新作のスマホを見せられたって興味魅かれないのも当然といえば当然である。
「ねえ、しおり。それ、いままでのと比べてどう?使いやすい?」
話に入ってきたのはいつきのクラスメイトの櫻本 真愛香だ。
「いやー…、別にこれといってすごい機能があるとか、そういうわけではなさそうなんだよね。強いていうなら、特定のSNSを利用することが義務づけられてるってことぐらいかな?」
「義務?」
「うん。『L-talk』っていうんだけどね。まぁ今時SNSなんてこのスマホにしなくたって利用してる人多いから、なんてことないんだけどね。いつきは別として(笑)。まなかももう利用してるでしょ?」
しおりの言葉にいつきは少しムッとする。それをみたしおりは「まあ怒るなって。」といつきの背中をポンとたたいて慰める。
「うん。あー、そうなんだぁ。実は私も買おうかどうか、迷ってて…。」
「え?まだ平気じゃん、そのスマホ。」
いつきが言うと、彼女はスッと画面を指でスライドさせていつきたちの方へ向けた。
「最近宣伝がしつこいのよね。それにこれ…」
「あ。」
まなかが見せてきたのはメール画面。
そこには、さっきいつきがしおりと話していた噂話に関する内容だった。
「このスマホでゲームに参加してプレゼントを手にいれよう……?」
「SNSだけの噂だと思ってたら最近メールまで来たのよ?ちょっと気にかかっちゃって…」
不安そうな表情をするまなか。
「でもそれくらいの軽い宣伝メールならあたしの ケータイにも来るよー。今がスマホに乗り換える最後のチャンス!とか言ってね。何回チャンスあんだよって感じだけど。」
わははと笑ういつき。
しかし、まなかの表情は曇ったままだった。
「パパたちまで言うの。買い換えようかって。SNSの噂では命がかかるゲームだとか言うし、なんか不安になってきちゃって…」
静まり返る会話。
そんな危険なゲームあるわけないじゃん、
いつきはそう思うのだが友達の不安そうな顔を見るとそんなこと言えなかった。
「そんなん、あるわけないじゃん!」
いつきの心の中を映し出すように、声を発したのは同じく唯一のクラスメイト、舘原 理沙である。
「ケータイだよ?ケータイでどうやって命奪おうってのさ。そんなのガセガセ!どーせオンラインのサバイバルゲームでも始まるんでしょうよ。」
ドカッと椅子に座り、腕を組む。
「リサは買わないの?」
「もちろん!リサは買わないよー。今のスマホで十分だし。ゲームとか、興味ないし。」
相変わらずサバサバした性格をしている。
「そんなことよりさぁ、ここんとこ教えてよー。さっきうっかり落ちちゃって」
「寝落ちって意味か。どこ?」
「ここ!」
ー…この時はこんな感じでたあいもない会話に戻ったんだ。
この時私たちは知らない。
こんな平和な日常が、長くは続かないってこと。
趣味で書いているお話です。未熟者ですが頑張って書き続けて行こうと思っています!