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激突

今回は少し短いです。


後、この話は視点が異なっています。次からは戻ると思いますが。

 リバーブルが面しているバルナ大河の上流――そこは下流に比べればやや幅が狭くなっており、辺りに存在する岩肌は悠久の時によって水に浸食されボコボコとした形を成している。


 そんな岩の寝床の上で身体を休めている巨大な物体、いや生物は眠りについていた。九つも存在する頭部はどれもが長大な胴体からニョキリと生えており、一本一本が人間を一呑みにできるほどに大きい。


 蛇のような外見をしている頭部達は瞳を閉じて眠ってはいるのだが、その内の一つは休ます辺りを警戒していた。九つある頭部は交代で休息を取るため、一個の生物として機能を停止させるという危険を冒す必要はないのだ。


 もっとも……自分を害する存在がこの世界にいるとは思えない。

 この生物はそう感じていた。


 いつから自分が存在していたのかは思い出せないが、海をさまよっていた際は危険となる敵は存在しなかったし、下流から住み心地のよい河を上がってきてからも特に脅威となるものはなかった。途中、水面に浮かぶ何かを見つけて興味本位で近づいたところ、少々の攻撃を受けた。しかし、軽く一薙ぎしただけで脆すぎるその物体からは、様々なモノが水中へと放たれのだ。


 試しに食すと、ほんのりと甘い液体、海では味わったことのないような肉が舌の上で踊った。大した労もなくこのようなご馳走にありつけたことを喜んだが、勿論食べることのできない固いものをあったのでこれは吐き出した。必死に動き回る生きた肉もこれはこれで美味かった。


 さらにもう一薙ぎして二つ目の物体も水中へと四散させる。これにもまた美味なる食べ物が含まれていたようだ。


 それが面白くなり、今はこの上流にある岩棚を寝ぐらとしてあの周辺を狩り場としている。一度大量に食事をすればそれが消化されるまでは食事の必要はない。だが、明日ぐらいにはまた狩り場へと赴こう、そう……生物が思考に耽っていたころ――一閃の光が警戒している九つのうちの一頭を切り落とし――絶命させた。


「グギャアァァァァッ」


 自らの頭部の一つが断末魔を上げたことで、残り全ての頭部が瞬時に覚醒する。痛覚は胴体より等しく伝達されるので当たり前だった。


 その生物は十六の眼をもって周辺を見渡す。原因と思われる《敵》はすぐに見つかった。薄い月明かりのなかにおいても、その姿は非常に目だつ白銀色。どうやらその背に黒く小さな物体がのっている。どちらが今の攻撃を行ったのか? そんなことはどうでもよかった。


 ――両方とも、殺す。


 頭部も合わせれば体長数十メートルはある巨体が勢いよく宙を舞った。翼などは有していないが、全頭部を支える胴体には筋肉が凝縮されており、それを駆使することで軽々と巨体が浮かんだのだ。


 空を飛行する白い物体にもう少しで届くというところで、重力に従って落下を始める。だがそれだけでは勿論攻撃は終わらない。落ちゆく途中、残った首を三つほど敵へと向けた。


 それぞれに高熱の炎、極冷のブレス、雷鳴の轟きが一気に敵に襲いかかる。


 器用に躱していく敵は、だが回避しきれなかった雷に焼かれて飛行の勢いを落としたものの、まだ健在のようだ。巨大な生物は内心驚きに満ちていた。今までこのような敵には会ったことがない。こちらの一撃を受けて生きているものなど知らないのだ。


 それでも、負けるわけがない。それは油断ではなく、絶対的な自身の力への信頼からくるものだった。だが、次の一撃でそれは改めるものだと知らされる。


 青く煌めく弓形の光が見えた。そこから放たれた二本の矢が残った頭部の二つを撃ち貫いたのだった。眉間を貫通された頭部は沈黙し、もう片方は眼球を潰されて焼けるような痛みに悲鳴を上げる。


 これは、本当に強敵なのだ。

 その巨大な生物は、生まれて初めて全力を振るうことを強制された。



 どれほどの時間が経ったろうか。死合っている両者には長く感じられるだろうが、実際のところは短い時間が経過したころ。


 すでに巨大な生物の頭部で無事なものは二本を残すのみであった。七本は完全に絶命している。


「キシャアァァァッ」


 全力で相手を威嚇するが、それで敵の手が緩むことはない。切り落とされた頭部などは緩やかに再生が進んでいるが、このような戦闘では回復が間に合わない。全ての頭部が破壊されればどうなるか――わかりきったことだ。


 それでも相手も無傷というわけでは、決してない。何度も攻撃を喰らった身体は損傷し、動きもかなり鈍ってきている。各属性のブレスで、岩をも砕く牙で、硬い鱗に覆われた身体での一撃で、確実にダメージを負っているはずなのである。


 それでも相手の攻撃は止まないのだ。このように拮抗した力を持つ相手との戦闘は、短時間でも恐ろしいまでに消耗する。両者ともに限界が近づいていることは明白だった。惜しみなく全力をぶつけ合うことは、妙な興奮さえ覚える。



 ついに光輝く剣にてさらに一頭が切り裂かれ、残り最後の一頭のみとなった。すかさず超高温のブレスを繰り出し、相手の身体を焼き尽くす。水面で放ったブレスはそのまま水中へと達し、一瞬で水蒸気が視界を覆う。


 勝負がついたか……そう思われた瞬間、水中から飛び出す影があった。勢いはかなり衰えてはいるが、それでも闘志は失われていない。おそらく、次の一撃がどちらにとっても最後のものとなるだろう。


「グルアァァッァッ」

「うわりゃあぁぁぁぁぁぁっ!」


 戦闘する両者以外に音を発する者がいない静寂な夜の闇の中、それを引き裂くように二つの声が響き合ったのだった。


リアルも色々あり、ちょっとモチベーションが下がり気味な今日このごろ。感想などをいただければ嬉しいです。

メンタルは豆腐ですが、絹ではなく、木綿豆腐ぐらいの強さはあります故。

読んでいただきありがとうございます。

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