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酩酊の夜

この話には、それなりに性的描写がありますので、苦手な方はご遠慮ください。


また、討伐者ギルドの依頼達成時に対象の魔物を討伐した部位を提出するように、設定を一部変更しております。

「にゃあに言ってんのよぉ~、まだぜんぜんら~いじょうぶらって」

「いや、もう完全に呂律おかしくなってんだろうが」


 帝都スーヴェンに日暮れとともに戻れた俺達は、早速討伐者ギルドへと向かった。

 キマイラ及びロードキマイラを討ちとってきたという報告を受けて、マリンはおろか他の職員も驚きの声を上げたのだった。


 証拠となるキマイラの爪と牙を提出し、エルナがキマイラ二匹を俺が倒していることを証言してくれたこともあり、俺は晴れてAランクとして登録をされた。


 ロードキマイラのことを考えるとSランクじゃね? と思ったが、そちらは目撃したのが俺とエルナだけで、しかも身体は黒炭にしてしまったので証拠となる部位も得られませんでした、となると判断が難しいとされたのだ。


 Sランクの魔物なんてポンポン出現するものではないらしく、依頼遂行中に偶然Sランクと出会うなんてことはほとんどないようだが、次から証明する部位を必ず残しておこうと学んだ。大物となると依頼に挙がる前に倒した場合でもギルド自体から多少の報酬は出るようだし、何より実績に繋がる。


 さてさて、報酬の金貨二枚、キマイラの爪と牙を引き取ってもらった金額の合計をエルナと山分けし、別れようとしたら飲みに誘われた結果が現在の状態である。


 場所は俺が世話になっている来福亭。

 一階部分は食堂兼酒場となっているために、夜は人が多く特に忙しいようだ。飲酒制限が年齢によって設けられてないので、エルナは十九歳だそうだが問題ない。


 ニブルヘイム島でもそんな制限あるはずもなく、俺は子供の頃から飲まされてた記憶がある。もっとも、アルコール発酵をさせただけの味わいが少ない酒だったが。


 その点、このスーヴェンで出される麦芽酒やらワインやらの種類豊富なこと。昔を思いだすってなもんだ。


 ……だからと言って飲み過ぎはよくないがな。


「あらしがねぇ……Aランクまであがるのにどれらけくろうしらか分かってのらぁ?」

「知らねえよ」

「らいらいねぇ、にんげんのあーたがなんれあんなつおいまほうをつかぇるのかおひえなさいよ」

「生まれつきだ。ってか、もうそろそろ何言ってっか分かんねぇよ。そうだ、俺が預けた金貨二枚そろそろ返せ」

「なんらってぇ? たすけてくれらのはうれひいけろも、あらしのじそん、じそんしんはズラボロらっての」

「エルナは強かったよ。もう感激モン」

「さてはあらしにホレたれしょお? みゃあジークもそこそこかっこよかったけろねぇ」

「どうも」


 次からもしエルナと飲むことがあったら、絶対飲み過ぎないようにさせないとな。


「ぞれにしれも、あのひれんろうのワンちゃんをてなずけてるっていうのはおろろいたわ」

「俺はエルナの変化に一番驚いてるけどな」

「Sランクれいえば、さい、さいじょう、きゅうのまものなんらよ」

「それなんだけど、あんまり人に言うなよ」


 魔力を持つ者に極稀だが魔物が懐くことは魔族でも他種族でも同じことらしいから、知られても魔族とバレるなんてことはないだろう。だが今後何かと暗躍させる予定なので、あまり知られないほうがいい。


 それにしても、シロが俺のペットだと知ったときのエルナの驚きっぷりは半端なかったな。馬を森に放置するわけにもいかないので、結局シロではなく馬に乗って帝都に帰ったが、帰り道「やれ触らせろ」だの「やれモフモフさせろ」だの非常にうるさかった。


「らいじょうぶ、られにもいいませんよ~。シロたんもふもふ~」


 うん、明日にきちんと言っとこうか。


「ねぇ、ジークはろこからきたの? えうめねすのべつのくにから?」

「そうだな、エルナはもう帰らなくて大丈夫なのか?」

「やどにかえってもひとりらからね。もんらいないない」


 まあ、エルナがどういう事情で討伐者をやってるか深く聞くつもりはないけど。まともな答えも返ってこないだろうし。


「さて……俺そろそろ行くわ。マグダレーナさんっ、お勘定」

「はいよっ、あ~こりゃ大分酔ってるねぇ」

「とりあえず二人分まとめて払っておきます。そんでコイツはここの宿に泊まっても問題なさそうなので、一応部屋代も払っときます。ずっと潰れてるようなら、適当な部屋に放りこんでやってください」

「あんたはどうすんだい?」

「や、まあ今日は俺頑張ったんで、自分にご褒美を与えるというかなんというか……」

「若いってのはいいねえ~」


 俺がこれからどこに行くか完全に理解しているマグダレーナが笑いながら清算を済ます。


「なんらぁ? ジークどこいくのら? あらしをおいていくきらな?」

「いいから寝てろって。部屋代も払っといたから」

「どこいくきら? いっしょにつれてけ~」

「無理、それは無理」

「なんらとぉ」

 

 その様子を見ていたマグダレーナがエルナに余計な一言を漏らした。


「この青年は今から夜の街でた~ぷり楽しんでくるのさ。嬢ちゃんにはちょっと無理だねぇ」

「そんらことのために、あらしをおいていくつもりらのか?」


 俺の服の裾を力の限り掴んでくるエルナ。

 飲みに誘ったのはそっちで、もう十分飲み食いしたろうが。しかも代金は俺が払ったし。


「はらすもんか~」


 だめだコイツ、早くなんとかしないと。


「マグダレーナさん、空いてる部屋どこですか。こいつ部屋に放りこんでから行くことにします」

「若いってのはいいねぇ~」


 と口癖のように言うマグダレーナから部屋を教えてもらい、エルナを背負って寝室へと運ぶ。


「うう~、ねむたいよぉ~」

「さっさと寝ろ」


 水を飲ませてやってからベッドに寝転がせてやる。


「よろいがおもい」

「お前な……」


 ライトアーマーを脱がせてから、ふたたび寝かす。これでやっと行けるってなもんだ。


「なんらなんら、あらしよりもそういう店のおんなのこのほうがいいってゆのら?」

「酔っ払いが。からかうんじゃない」

「てぇだすゆううきがないんらろ? やっぱりあらしのほうがつおいのら」

「やめろよ。俺だって結構酔ってんの。そういう冗談は危ないの」

「へっへぇ~ん」


 エルナが挑発するように薄手のシャツの胸元をはだけさせる。いや、不味いだろ。ぶっちゃけエルナは可愛いからシャレにならない。


 それなのに、その姿でそのまま俺の首元に抱きついてきやがった。ベッドの上でエルナの上に覆いかぶさるような体勢となってしまう。


「やめろって、後悔すんぞ。……三つ数えるうちに離せ。さもなきゃ理性がとぶからな」

「やれるもんならやってみるら~」

「三」


 こいつは本当にどこまで本気なんだ。いや、たぶん冗談なのだろうが、ここまでして俺が止まる男だとでも思ってるのか。冗談言っちゃいけませんよ、奥さん。


「あらしをだれとおもっれるのら」

「二」


 さて、そろそろ本気で危なくなってきたな。誰ってエルナだろ? 確かに見た目可愛いが、まさかお前まで王族だとか言うつもりじゃないだろうな。


「ぎるどのきゅうせいちょうかぶといわれる」

「一」


 もう知らん。マジで知らんぞ。才能ある若き美人剣士? そりゃすごいな。正直そんなの今の時点では眼の前にぶら下げられた肉に塩コショウが加わったぐらいのもんだ。ってか俺何を考えてんだ。あ、もう無理、マジ無理。 


「エルナ――むぅっ」


「――零だ」


 エルナの唇に自分の唇を重ね合わせる。

 微かに身体が固くなった抵抗を感じたが、次第に緊張が解けて緩やかになっていく。


 唇を離してから、短い間隔で何度も浅いキスを繰り返す。何度目かに相手の唇の裏に軽く舌を這わせてノックすると、侵入を許されたのでゆっくりとお互いの舌を絡ませ始める。


「……ぅ……む」


 束ねてあるエルナの髪を解き、サラリとした髪から蠱惑的ともいえる香りがフワリと漂よった。衝動のままに鼻先をうずめる。女性の髪ってなんでこんな良い香りがすんのかな。


 シャツのボタンをゆっくりと外していくと、少し震える手が俺の手を掴んだ。

 それには拒否するような力は込められておらず、優しく握り返すとペタンと体の横に大人しく置かれた。

 肌着が露わとなった胸元に指先をはわし、ゆっくりと肌を撫でてやる。

 唇をやわ肌にピトリとくっつけると、その度に体が微かに揺れた。


 ふたたび唇を合わせてエルナの舌の感触を楽しみ、同時に胸元を隠している肌着へと手を伸ばす。


「ゃ……ぁ……」


 さしたる抵抗もなく、透き通るような肌の延長線上にかたちの良い乳房があらわれた。ツンと尖った先を指先で弄んで刺激すると、わずかに震えるような声で反応がある。それがたまらなく可愛いので、声を出す口を自分の口でふさぐ。


 どれぐらいその状態を満喫しただろうか。

 くもり声となったエルナの声を聞いていると、やがてそれだけで止まらなくなるのは当たり前だった。


 アーマーの下に着込んであったインナーズボンを取ろうとすると、また微かな抵抗があった。掛け布を被せて、室内を照らすオイルランプのわずかな灯を遮ってやる。


 ゆるゆると抵抗力を削いでから、ふたたび試みると、今度はスムーズに取り去ることに成功した。


 もうエルナの体を隠しているのは、わずか薄布一枚だけだ。


 最後の一線を越える瞬間――俺の頭の中に前世の記憶がよぎる。


 相手にほんのわずかでも好意的な感情を持ってしまえばそれはどんどん大きくなっていく。そしてその先に待っているのは結局は同じことの繰り返しなんだろうという諦め。

 

 感情を込めずに遊べる夜の街はそんな心配がいらないのだ。


 だからこそ、ここでこうすることはきっと間違いだ。俺にはフィリアに近づくという目的もあるのだから。


「……なぁ、最後のチャンス……ここでやめとく?」


 そんな俺の問いかけに、小さく反応があった。


「……ん……経験なぃし……ちょっと、こわぃ、かも……」

「そっか……」


 ここでやめておこう。それが正解だ。


「――ごめん、聞いといてなんだけど、やっぱ止めれねぇわ」


 意思とは裏腹にエルナの下腹部より下に手を侵入させ、俺は一線を越えてしまった。


 最初は優しくすることを心がけ、その後は何度も何度も抱きしめ合い、貪るようにエルナの体を味わい尽くした。荒い呼吸を繰り返す二人が静かな眠りについたのは、オイルランプの油がきれているのに、室内に白々と薄明かりが差す時刻になってからだった。




 俺が目を覚ましたのはすでに昼過ぎの時刻。横でスースーと寝息をたてる存在よりも早くに起きることに成功したのは僥倖だったと思う。

 なにせ相手が起きるまでに何を言ったらいいかを考えることができるのだから。

 

「――酒って本当に怖い……さて、どうすっか」


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