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「何でお前とこの部屋に二人なのかというと、仕事があるからなんだよ」
「……俺じゃなきゃ言えない仕事ってこと?どんだけヤバイこともしてるんだこの生徒会は」
呆れたようにため息を吐き出す鷲に、鷹は相変わらず腕を組んだままだ。
「いや、役員は大体ヤバイことでも平気でできる奴らなんだけどな?ただ、今回は荒事だから、一応他の皆には知らせずにいようと思って」
「……兄貴、今さらりとすごいこと言わなかったか?てゆうか何?荒事なの?」
「うん、まぁ」
あっさりと否定する兄に、鷲は大きなため息を吐いた。鷹は昔から面倒事を鷲に押し付ける。それを躱しきれない鷲も、ある意味弟の鑑と言えた。
「早速始業式が終わった後に私書箱に投稿があった。名前は匿名だからわからないが、新二年生だそうだ。サッカー部の三年の先輩に暴行を受けている、助けてほしい。要約するとこんな感じの内容だ」
「あー、つまりあれかな、兄貴。俺に、その、サッカー部の、不良どもを、おとなしくさせろ、と?」
いちいち区切りを入れて、わかりやすいように言った鷲のセリフは、鷹の「そうだ」という一言によって肯定された。鷲はがっくりと肩を落として、机に突っ伏した。
「何でそんなことしなきゃいけないんだよー。めんどくせぇよー」
「役員になるって言ったのはお前だろ?」
「……言われた通りにします」
舌戦で鷹に挑んでも勝てないことは今までの人生の教訓で得ているので、鷲はそれ以上何も言わずに座りなおした。
「で、その相手ってのは?サッカー部の誰?」
「柿田と佐竹っていう二人組がいるだろ?去年二組だった」
「ああー、あの不良コンビね。確か去年喫煙してんのばれて謹慎食らってた」
「そうだ。あの二人が犯人」
「でも、今日はもういないよな?午前で終わりだし」
「いるんだな、それが」
「何で?」
「ラブレター大作戦」
「……」
言葉を無くす鷲に、鷹はにやりと笑って眼鏡の奥の目を光らせた。
「何、それ」
「あいつらの下駄箱に偽のラブレターを仕込んでおいた」
「うわー、ベター……」
「話したいことがあるから午後の一時に校舎の裏に来てください(ハート)ってな。それを一枚ずつ、入れておいた。我ながら吐き気がしたぞ」
「俺もそんな兄貴を想像して吐き気を催してきたよ」
そこで鷹はごほんと一つ咳払いをして、場を仕切り直した。
「まぁ、そんなわけで、後十五分もすればやつらは二人とも校舎の裏に現れるわけだ。そこを、お前が何とかしろ」
「うわ、無責任」
「俺はもう精一杯ラブレターを書いたんだから、あとはお前の仕事。生徒会初仕事だ。気を引き締めてやれよ」
「はいはい」




