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鷲は校内窃盗事件以来、積極的に生徒会の活動に参加するようになった。今までは「面倒くさい」だの「だるい」だのいちいち文句をつけていた鷲だが、生徒のために動くのも悪くないと思えてから、生徒会活動に本腰を入れるようになった。
孔明学園生徒会では、今日も役員会議が行われていた。今は生徒総会を終え、放課後にその反省会を行っているところだ。
「今日の総会はみんなよくやってくれました。自分の仕事を十分に理解し、それぞれがきちんと動けたと思います。今後は文化祭もありますし、実行委員と生徒会との連携も増えていくと思いますから、各々仕事をこなしてください。生徒総会についての反省会は以上です。次に」
せっかくもう帰れると思った鷲と剣斗だったが、鷹の言葉はまだ続いた。しかも、続く言葉には嫌な予感がする。鷹が下を向いてため息を吐いたのだ。彼は先行き不安なことがあると今のクセが出る。
「学園長先生からのご依頼です」
うわ、と顔を歪めたのは鷲と剣斗だけではない。他の役員も、多少なりと同じことを思っていた。学園長が何かを依頼するときは、大抵面倒事だからだ。
「前に潰した違法カジノ。あの組織が、またしても活動を再開しているとの話がありました。我々が完膚なきまでに叩きのめしたはずですが、息を殺しながら這いずり回っているようです。というわけなので、我々生徒会はこのカジノ組織に再び鉄槌を振り下ろさねばなりません。なので、明日からカジノ対策についてみんなで話し合おうと思います。では、今日は以上。お疲れ様でした」
「お疲れ様でしたー」
「鷲、今日も後ろ乗ってくか?」
「いや、今日は歩きで帰るよ。CDショップに寄ってくから」
「そか。んじゃ、また明日な」
「オウ。じゃあな」
今日、鷲は剣斗の誘いを断った。理由はCDショップに行くためだ。今日は彼が大好きなロックバンド「SPEED KING」の新曲の発売日なのだ。鷲は彼らのCDをすべて持っており、新曲が出れば必ず発売日に買った。
「今回の曲、どんな感じかな~」
語尾に音符が付きそうなくらい楽しそうに歩いていると、突然後ろから肩を叩かれた。
「ん~?」
知り合いかと思い振り返った鷲に―鉄パイプが振り下ろされた。
「がっ……!」
意味がわからず混乱する鷲に、鉄パイプを持っているのとは別の人間が、薬品を染み込ませた布を鷲の口と鼻にあてがった。
程なくして鷲は意識を失くし、後からやってきた車に乗せられてどこかへと連れて行かれた。一瞬の内に静まり返った道路には、僅かばかりの血痕が残った。




