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TABOOO!  作者: 四季 華
クイズ大会!?
13/21

4-2

 かくして、ゴールデンウィーク明けに孔明クイズ大会は開催された。

 体育館を全面使う規模だけあって、生徒達もどこかそわそわとしている。

「兄貴、今回俺ら何もしなくていいの?」

 鷲は後ろに座る鷹に声をかけた。彼らは今クラスごとに一列に並べられており、五十音順で列を作り座っている。

「一応オレ達も生徒だからな。参加しないわけにはいかないだろう。学園長先生の計らいで、今回の司会進行は先生方がしてくださるそうだから、オレ達は生徒らしくこの行事に参加してればいいわけだ」

「ふぅん。そうなんだ」

 その時、マイクの電源が入って、スピーカーからザーという小さなノイズの音が聞こえた。それを合図に、全員がステージの方を向く。

「皆さん、こんにちは。学園長の高崎です。今日はよくお集まりくださいました。皆さんも知っての通り、今日ここでは孔明クイズ大会が開催されます。皆さんが仲間と共に、このクイズを解いて勉学の一層の力になることを願います。さて、クイズ大会をやるわけですから、やはり賞品というものは欲しいですね?」

 その言葉に、生徒が一斉に目を輝かせる。すると、学園長は教頭から渡された一枚の封筒を皆に見えるように掲げた。

「一位には、金一封」

 うおおおおっと歓声が上がる。女子同士など悲鳴に近い歓声を上げて早くも抱きあっている。

「えええ!これっていいの兄貴!?」

「まぁ……学園長先生が仰ったんだし、いいんじゃないか?」

「そういうもんなの……?」

 鷲は疑問を抱いたが、この生徒会ひいては学園に疑問を持っても無駄だと、入って一ヶ月の身ながら学んだ。疑問は抱いてはいけない。

「二位から十位までにも景品は用意していますから、皆さんがんばってくださいね。ほっほっほ」

 そして学園長は舞台袖に下がり、マイクは教員に渡された。

「えー、それではルールを説明します。まず、床を見てください」

 体育館の床は、テープで四つに分かれていた。そして壁には、1から4の数字が振ってあった。

「床が四つに分かれていますね。えーと、皆さんから見て左上が1番、右上が2番、右下に当たる隣が3番、今いる左下が4番になっていると思います。これから行うクイズは三択です。1番だと思ったら、左上のマスに移動してください。不正解だった人は、今いる場所、4番に移動してもらいます。このクイズは、五人一グループで行いますので、学年クラス関係なく、誰とでもいいので五人一組を作ってください。はい、始め」

 生徒はそれぞれに立って、仲の良い友人達とチームを作り始めた。鷲と鷹も立ち上がり、きょろきょろと辺りを見回す。

「まぁ、五人一組って言ったら、こうなるよね?」

 鷲が若干呆れながら言うと、剣斗がすかさず反論してきた。

「んだよ、俺らと一緒が不服か?学年もクラスも関係ねーって言ったら、そりゃあ生徒会で集まるだろ」

 結局いつもの生徒会メンバー五人が集まり、難なく一グループができた。他の生徒達もグループができ始め、十分も経てば全ての生徒がグループを作ることができた。

 また学園長が出てきて、マイクを受け取る。

「ほっほっほ、皆さん、グループはできましたか?それでは早速問題を発表しますよ。第一問」

 生徒は一気にしんと静まり返って、学園長から語られるその問題に耳を澄ませた。

「我が孔明学園の校訓は何でしょう?」

 ざわざわ、という音が全体に広がる。生徒達は顔を見合わせ、首を捻っている。

「剣斗、知ってる?」

「俺が知ってるわけねーだろ!」

 全員がそんなやり取りをしていた。それを見ていた学園長がこれ見よがしにマイクに大きなため息を吐き出す。

「皆さん、もしかして通っている学校の校訓を知らないんですか……?」

「うっ」

 生徒達の息が詰まる。学園長は寂しげに首を振って、演技であるのか何なのか、目頭を押さえた。

「1番『創造』『活動』『勤勉』。2番『自学』『健康』『奉仕』。3番『何とかなる』」

「いや3番なくね!?」

「ゼッテー1か2だろ!」

 鷲と剣斗が激しく突っ込む所に、三重のため息が浴びせられた。そちらに目をやると、鷹、翔、愛依が哀れみを込めた目で二人を見ていた。

「答えは3番ですよ、先輩。学生証の裏に書いてあるじゃないですか」

 冷たく言い放つ翔に、鷹と愛依が頷く。二人は一生懸命思い出そうとするが、どうしても頭に浮かぶものはない。

「わかんねぇ~。ってか何で兄貴達そんなん覚えてんの?」

「生徒会役員だぞ、当たり前だろう」

 毅然と言い放つ鷹に、二人はすごすごと引き下がった。

 生徒会チームは迷わず3番に行った。他の生徒達も、数グループは3番のマスに来ている。

「正解は3番の『何とかなる』でした。皆さん、これからはこれを覚えておいてくださいね。それでは、1番と2番の人は4番へ移動してください。後で敗者復活戦もありますからね。それまで待機していてください」

 敗者復活戦の五文字に、外れを選んでしまった生徒達の心は躍った。金一封への道はまだ閉ざされていない。

「第二問。孔明学園が二ヶ月に一回発行している会報のタイトルは?1番『月刊孔明』。2番『孔明ニュース』3番『孔明通信』」

「そんなんもらってたか?」

「さぁ?ここに通って3年経つけど、見たことも聞いたこともねぇな」

「でも2番か3番だよな。二ヶ月に一回なら月刊じゃねーもん」

「おお、鷲あったまいいー!」

「馬鹿か、お前ら。答えは1番の『月刊孔明』に決まっているだろう」

「え、そうなの兄貴?」

「元々は月刊誌だったのが、二年前に隔月へと変わった。しかし名前だけは歩んできた歴史そのままに残そうと、月刊になったままなんだよ。ちなみに、生徒会室にはここ三年の会報誌は全てあるぞ」

 初耳の事実に、鷲と剣斗は感心しながら鷹を見た。翔と愛依の白け顔の前では、その感心している顔が間抜け面に見える。

「正解は1番でした!読んでくれている生徒は少ないんですねぇ……」

「ちょいちょい学園長の哀愁が入るな」

「学園長は会報の中でコラムを連載しているからな」

「そうなのっ?」

 鷲が驚いている間に、2番と3番を選んだ生徒は4番へと移った。たった二問だというのに、生徒の数もだいぶ絞られてきた。

「それでは第三問。数学教師の森本先生の趣味は?」

「知るかっ!」

 鷲の突っ込みが森本の耳に届いたらしく、彼はしゅんと項垂れた。それを見て鷲は少し申し訳ない気持ちになり、これからは数学の授業を真面目に受けようと思った。

「1番『バイク』。2番『車』。3番『サーフィン』」

「これなら俺知ってるぜ!バイクだよバイク!毎朝FXで学校来てるの俺知ってるからな!」

 剣斗が今までとは違い、元気よく答える。確かに彼はカワサキの750ccのFXで通勤している。しかし、鷹の顔が一向に笑わない。

「違う、本当は車だ」

「えっ?」

「先生は自らが所有するトランザムに首ったけだが、愛するが故に、交通量の多い昼間は乗らずに夜だけ出してるんだ」

「マジかよ!ってか鷹、何でそんなことまで知ってんだ?」

「生徒会役員なんだから、先生とコミュニケーションをとるのは当たり前だろう?」

「そういうもんなんか……」

 剣斗が半ば呆れて鷹を見遣った。彼は胸を張って毅然としている。さすがは会長、と言った所か。

「正解は2番です。色々カスタムもしているようですが……まぁ、事故をしないように。おや、残るは後六グループですか。少なくなってきましたね。では、第四問。『intestine』日本語訳は?」

「いきなり勉強系来た!」

「しかも聞いてなかった!兄貴、わかる?」

「『腸』だろ。お前ら、これ先週の英語の授業でやったぞ?」

「へー。俺英語は基本寝てるからなぁ」

「剣斗に同じ」

「英語でなくても寝てるだろう」

 鷹のもっともな突っ込みに、剣斗と鷲は頭の後ろを掻きながらごまかした。鷹のため息がいつもよりも痛く感じる。

「1番『胃』、2番『脾臓』、3番『腸』。英語の授業をどれだけ真面目に受けているかが問われますね」

 生徒会チームは迷わず3番に向かった。彼らのほかに、二チームが同じく3番のマスにやってきた。

「正解は3番の『腸』でした。おや、残り三チームにまで減りましたか。では、第五問にいきますよ。問題。5×63+5896÷2569+225の合計は?」

「わかるかっ!」

 この問題には、鷲だけでなく全生徒の突っ込みが入った。電卓持込み可ならばわかるが、そうでなければこれは解ける問題ではない。

「ほっほっほ。皆さん苦戦していますね?」

「当たり前だ!」

 学園長の呑気な言葉に怒号が高まる。それでも学園長は笑いを絶やさずに、手で生徒達を制した。

「皆さん、もうすぐテストがありますね?」

「そういえば……」

 孔明学園では、毎年六月はテストの時期だ。三年生にとっては就職活動や進路に関係する大事なテストである。

「私は、多くの生徒にいい点数を取ってもらいたい。勿論大事なのは点数でなく、どれだけ学習を深めたかです。しかし、点数という数字が力を持つのもまた事実。特に三年生にとっては、その数字如何で今後の指針がある程度定まってくるでしょう。つまり、テストは大事です。そしてそのテスト勉強において大事なのは、勤勉な学習。皆さんはしっかりやっていると思います。しかし、万が一、そうでない生徒がいれば」

 そこで学園長がちらりと鷲を見る。

「あれ、何で今俺の方見られた?」

「鷲、静かに」

「私はそんな生徒にお教えします。勤勉な学習、地道な努力の他に大事なこと。それは、勘であると!」

 自信満々に言い切る学園長に、生徒達は静まり返った。普通、教師たるもの勤勉な学習と地道な努力こそがいつの日か花を咲かせるのだと。しかし、この学園長はそうでないこともあると見事に言い切った。その潔さに、生徒達は突っ込むことも忘れ、ただ静かにその言葉の余韻に浸っていた。

「散々遠回りをしましたが、つまり何が言いたいのかというと、最終問題は勘で解いてくださいということです。以上」

「結局それが言いたかっただけ!?」

 今度こそ本当の突っ込みが生徒達から入る。

「ほっほっほ。では、1番」

「総無視!?」

「『542.295056442』。2番、『542.295056443』。3番『542.295056444』。さて、どれでしょう?」

「わかりっこねーよ。兄貴は?」

「オレでもさすがにこれはわからないぞ。関数電卓でもあれば別だが」

「だよねー。……誰の勘でいく?」

「ここはやっぱり会長だろ?」

「剣斗、責任をなすりつけるな。そこは次期生徒会長の翔君に委ねないと」

「会長、それこそ責任のなすりつけです」

「翔君はなかなか聡明だね。会長には持って来いだ」

「話逸らさないでください」

 他のチームでも似たような話し合いが行われていた。誰の勘で行くか。話がまとまらずに右往左往していると、鷲が突然ばっと手を上げた。

「多数決にしても決まんなそうだし、俺が行く!」

「鷲、何だ突然」

「ほら、やっぱりみんながまとまんないからさ、何なら俺が一肌脱ごうと」

「……お前、もし当たったら賞金の分け前多くもらう気だな?」

「ぎくっ」

「一か八かの賭けに出たな」

「な、何でわかったの、兄貴?」

「何年お前と一緒にいると思ってるんだ。お前と一緒にいなかった時間は、オレが産まれてからお前が産まれるまでの七分間だけだぞ」

「さすが……」

「分け前は勿論平等にするとして、鷲でいいか?こいつはなんだかんだで運は結構いい方だからな」

「俺はいいよー」

「僕も」

「私もいいですよ。鷲先輩に託します」

 全員の了承を得られたところで、鷲が一歩前に出て腕を組んだ。仁王立ちしているその姿は、格好だけ見れば立派である。

「じゃあ、1番!」

「何故?」

「俺のラッキーナンバーが一だから」

 あまりに安直な理由に、チーム内の全員がため息を吐く。ここまで来ると、外れても逆に清々しい気持ちになれるかもしれない。

「まぁ、鷲が決めたんだ。文句は言わない。じゃあみんな、移動しよう」

 生徒会チームは1番のマスに移動した。他のチームは2番と3番に移動し、三チームそれぞれが別々の答えを選んだことになる。

「ほっほっほ。ということは、敗者復活戦を除けばこれが最終問題ですね。えーと、では、答えを言います。正解は……1番」

 生徒会チームは、正解した嬉しさと信じられなさで、どうにも夢心地のようだった。誰も何も言わない。

「……賞金!」

 我に返った鷲が叫ぶと、体育館の中が歓声に包まれた。



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