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いつものように生徒会の役員全員で会議を行っていると、不意に扉がノックされた。その音に、鷹の言葉が止まる。
扉から一番近い所に座っている剣斗がドアを開ける。そして、「えっ」と小さく漏らす。
「どうしました設楽君……え?」
尋ねた鷹も、剣斗と同じ表情をしてそちらを見る。他の役員が誰だという風に振り返ると、そこには恰幅のいい紳士が立っていた。丸い顔に豊富な白髪。髭まで見事に白くなっていて、それに青が強い紺色のスーツを着ている。胸元には、生徒がつける銀色とは違って金色に輝く校章のバッヂ。
「学園長……」
鷹が呟くと、学園長は満足そうに目を山なりに曲げて笑った。
そう、この老紳士こそが、この孔明学園の学園長を務める高崎博則その人である。
「元気にやっていますかな、生徒会の諸君」
ほっほっほ、と笑って、辺りを見回す。彼は鷲の金髪にも何も言わずに、あくまで普通に中へと入った。
「設楽君、椅子を」
「お、おう」
剣斗がすぐに椅子を学園長の元へと差し出す。学園長は一言断ってからその椅子に座った。
「ほっほっほ。会議の邪魔をしてしまったかな?すまないね」
「いえ。主要な議題は今終わったところでしたので。学園長……何かご用でしょうか?」
鷹が控えめに聞くと、彼は例の如くほっほっほと笑ってスーツの内ポケットから一枚の紙を取り出した。折り畳まれた紙を広げると、鷹に向かってそれを見せた。そこには、
「孔明クイズ大会開催」
書道家が書いたような綺麗な楷書で書いてあった。
「と、言いますと?」
理解に苦しむ鷹が学園長に解説を促す。
「ほっほっほ。実はね、クイズ大会を開こうと思うのですよ」
「……何故?」
もっともな疑問を鷹が代表して尋ねる。
「最近の一部の学生達には、積極的に勉強しようという姿勢が見られない。私は学園長として、非常に頭を悩ませている。どうすれば皆が勉学に積極性を持って取り組むことができるのか。全員というのは無理なことかもしれない。けれど、少しの人数にでもやる気を持ってもらえたら、それでいいと思えるんだ。クイズならば全員参加できるし、狡い話、景品さえつけておけばみんなやる気になるからね。それにクイズだと……何か楽しいじゃないか。こっちも。ほっほっほ」
朗らかに笑う学園長に、鷹達生徒会役員は笑いながらため息をついた。
「学園長先生が仰ったことは実行するのが生徒会です。責任を持って、運営・進行を務めさせていただきます」
「うん、ありがとう。よろしく頼むよ」




