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「先輩、何やってるんですか」
生徒会室にて。この事件のことを報告すると、翔は冷たく言い放った。剣斗はあははと笑ってごまかしている。
「いやー、だってよ、俺のマークⅡ盗もうとする不逞の輩には、その。正義の鉄拳ってやつを、ね?わかるだろ、翔ちゃん」
「ちゃん付けやめてください。しかもわかりませんし」
身振り手振りを駆使して何とか自分の感情を説明する剣斗だったが、そもそも翔はそんな剣斗を見ていない。
「設楽君、今日の会議を始めますよ」
言い訳を連ねる剣斗に、鷹が静かに告げる。剣斗は「へーい」と返事をして椅子に座った。
「今設楽君が言った通り、この学校の教師、近藤亮平が窃盗グループの一員であることが発覚しました。今は保健室で伸びている彼に高羽君をつけていますが……失礼」
鷹の携帯電話が振動する。彼は他の役員に一言断って、鷲からの電話に出た。
『兄貴、先生が目を覚ました。今からそっち行く』
「わかった」
電話を切ると、鷹は皆に目を戻した。
「先生が目を覚まされたそうです。さぁ、みんなで楽しく尋問をしましょうね」
鷲が近藤を連れてくると、役員全員の目が彼に刺さった。近藤は一瞬生徒会室に入るのを躊躇ったが、後ろから鷲が足でドンと背中を押したため、足をばたつかせながらも入室してしまう結果となった。
「先生、ようこそいらっしゃいました。椅子にどうぞ」
鷹が馬鹿丁寧に近藤に椅子を勧める。近藤は恐怖に震えながらも、逆らうことなど勿論できずにそこに座った。
「さて、先生は近頃のさばっている窃盗グループの一員とお見受けしますが、そのグループの情報をお教え願えますか?次に標的にしているもの、集合場所、何でも構いません」
営業スマイル全開で、絶対零度の笑みを湛えた鷹が尋ねる。近藤は奥歯を慣らしながら、言葉にならない呻き声を歯の隙間からこぼしている。
「そ、それは……言えな」
「何ですか?」
鷹の笑顔が眼前に迫る。本来ならば女子が見れば一目で恋に落ちてしまう鷹の笑顔だが、この時は鷲ですらも恐ろしく思えた。有無を言わさぬ圧力が、鷹にはある。
「いや、だから……言えな、い」
「そうですか」
そこで鷹が、にこやかに笑う。その表情を見て、近藤がハッと自分の過ちに気付く。
「気付きましたか。全く、自分一人で計画してやったことだ、と言えばよかったのに。自分がグループの一員であることを裏付けてしまいましたね」
「うう……」
「さて、こうなるとグループの情報を聞き出さないわけにはいきませんね。先生、正直言って、この生徒会は拷問でもやります。痛い目見たくなかったら、素直に正直に言ってくださいね?」
(拷問すんの!?)
鷲の驚きには例の如く誰も気づかず、彼は一人で色々な国の拷問を思い浮かべてはその恐ろしさに身震いした。
「まず、グループは何人構成ですか?」
「じゅ……十人」
「本当ですか?」
近藤は首をちぎれんばかりに縦に振った。鷹は一つ頷いて、次の質問に移った。
「では、集合場所、拠点、俗にいうアジトのようなものはありますか?」
「港の、倉庫。Dの、三番。そこで、計画を立てたり、パーツを保管してる」
「そうですか。十人態勢で、港の倉庫を拠点に活動していると。じゃあ、この間この学校から盗んだゼファーはまだ無事ですか?」
「あ、ああ。パーツは外してあるが、まだ屑に化けちゃいない。な、だから許してくれ」
「まぁこちらも一応手を出していますし……再起不能にはしませんよ。一応、自分の足で立てるほどには抑えておくつもりです」
近藤の目に涙が溜まる。鷲は突っ込みたくなったが、やめておいた。いちいち突っ込んでいたらこちらが持たない。
「それでは、これで質問は最後にしましょう。次グループ全員が集まるのは、いつですか?」
「きょ、今日の、夜、七時」
近藤がそう言うと、鷹は満足そうに頷いた。そして、役員に向き直る。
「皆さん、今はもう六時。ここから港までは歩けば一時間ほどかかるでしょう。というわけで、今から行きますよ。勿論先頭は先生、お願いしますね?」
「ええっ!」
「万が一、嘘を言っている場合もありますし、このまま離してこちらの情報を向こうに流されても困るので。さて、皆さん、準備をしてください。生徒会は生徒のために。動きますよ」




