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県立 孔明学園に向かう生徒群の中に、周りの目を引く生徒が二人いた。
一人は顔からして完全に日本人なのだが金髪で、眠そうな目にやる気のない顔。表情も制服もだらけている。制服は前のボタンを全開にして、中に着ている赤いスポーツTシャツをみせていた。
もう一人はとてもきれいな黒髪なのに、目は青く、そして美麗という言葉を具現化したような美少年。制服のボタンは上までちゃんと閉めて、カラーもつけている。爽やかな雰囲気を纏って、女子達から注目されていることは言うまでもない。
その二人が同時に登校している姿は、否が応でも注意を集める。優等生と不良。全くもってアンバランスなこのコンビは、毎朝こうして一緒に登校していた。
「兄貴、原稿は覚えられた?」
「ああ。暗記はばっちりだ。後はどの程度はっきり喋れるかだな。まぁ、ステージに立つのは慣れてるから大丈夫さ」
金髪の不良が黒髪の美少年に話しかける。
この二人がコンビなのには理由があった。そう、二人は兄弟なのだ。これほどまでに似ていないが、双子だった。二卵性なので顔はあまり似ていないし性格もかなり違うが、正真正銘の双子だ。
「それよりも、お前は大丈夫なのか?宿題全然やってなかったが」
「兄貴のことが心配で夜も眠れなくってさ」
「全く……」
溜息をつく兄に、弟は笑ってごまかした。
「ってか兄貴、始業式とかだるいんだけど」
「出席しろ。でないとオレが早速目玉を食らうことになる」
「へーへー。兄貴のために出てやりますよっと」
「なんだその言いぐさは」
「なんでもー」
二人は学校の門をくぐると、それぞれのクラスを確認した。今日は始業式。新しい学年がスタートする日だ。
「え、俺と兄貴同じクラスだよ」
「本当だな」
本来双子が同じクラスに配置されることはまずない。しかし同じクラスにされたということは、
「つまり、オレがお前の見張り役になれっていうことか」
そういうわけだ。
金髪の弟は面白くないように舌打ちをして、さっさとクラス替えの掲示板の前から去った。黒髪の兄はやれやれと溜息をついて、新しい自分たちのクラスである三年四組へと向かった。




