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【完結】勇者として異世界召喚されたら、転生聖女に恋人と作ったカフェを丸ごとパクられていたので、反省するまで魔王討伐はしません  作者: 真義あさひ


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9/9

日本への帰還(聖女の前世の十年前)


  ☆ ☆ ☆



 ハッとなって怜司が目を覚ますと、窓の外は夕焼けに染まっていた。


「副社長! 高瀬副社長、お目覚めですか? 会議のあと、ずっと眠っていらしたので……」


 年配の女性秘書が心配そうに顔を覗き込んでいる。


「……会議の、あと?」


 デスクには、笑うたいやきくんがプリントされた空のマグカップ。

 スリープモードになったパソコン。その横には、つい先ほどまで話し合っていた新規事業〝たいやきくんカフェ〟の資料が積まれていた。


 まだ、地元を中心に数店舗。

 売上は悪くないが、そこから伸び悩んでいる。

 数か月様子を見て、テコ入れか撤退かを判断する――それが今日の会議の結論だった。


「……夢?」


 異世界に勇者として召喚され、転生聖女に自分たちのカフェを丸ごとパクられ、魔王討伐を拒否した。

 最終的にはその聖女と魔王を倒し、元の世界へ帰ってきた。


 あまりにも長く、妙に現実味のある夢だった。


「あっ、社長から連絡がありましたよ。LI◯Eに既読もつかないって。退社後、たいやきくんカフェでお茶しよう、だそうです」

「えっ!? ……本当だ」


 スマホには何件も通知が溜まっていた。


 怜司は速攻で「ごめん、うたた寝してて今見た」と送り、カフェ待ち合わせにOKのたいやきくんスタンプを返した。


 これでいい。


 夢の中では、何年かかるかわからない魔王討伐より、待たせている恋人のところへ帰ることばかり考えていた。

 現実では、ここから徒歩で十分もかからない。


「……帰ってきた、か」


 そこで怜司は、会議資料に目を落とした。


 夢の中で聖女は言っていた。

 転生前の日本では、たいやきくんカフェはどこにでもあった、と。


 だが現実では、まだ数店舗しかない。


「…………」


 怜司は椅子に座り直した。


「それに、あの聖女のカフェ……」


 彼女は飲食物に聖別した水や油を使っていた。それを口にした客は、邪気や瘴気への抵抗力が高まる。


「ご利益目的のカフェ……」


 怜司の視線が、壁際のガラス棚へ向いた。

 恋人と作った、たいやきくんと仲間たちのグッズが並んでいる。


「おみくじ、お守り、絵馬……たいやきくんは赤くて縁起もいい。季節イベントと限定メニューを組み合わせれば――」


 ここに恋人兼社長がいたら「なんでそうなるの!?」と全力で止めただろう。


 だが、いない。

 怜司はスマホにメモした。


〝たいやきくんカフェ・開運企画〟

〝聖地化〟


「……いけるな」


 そのとき、終業時刻を知らせる音楽が流れた。


「あ、帰らないと」


 企画は明日に回そう。

 今日は恋人が待っている。


 怜司は鞄を持って執務室を出た。


 エレベーターを待ちながら、ふと思い出す。


「それにしても、この僕が勇者か」


 スマホを取り出し、いつものゲームを開いた。


 画面に表示された自分のキャラクター。

 このゲームではチュートリアルで名前と生年月日、いくつかの質問に答えながら最初のダンジョンをクリアすると、本人の行動データに合わせて基礎ジョブが決まる。


 そのジョブから進化した今の自分のステータス欄には、こう書かれている。


〝魔王〟


「最初は騎士だったんだけどなあ。恋人と一緒にランカーになったら、いつの間にか進化してたんだよね」


 怜司は首を傾げた。

 その進化に周りが大受けして、気づいたらリアルの自分まで〝職業魔王〟などと呼ばれるようになったのはご愛嬌というやつか。


 勇者になった夢を見た魔王は、そのまま恋人の待つたいやきくんカフェへ向かうのだった。






登場人物


■高瀬怜司

本作の召喚勇者。

二十代前半の青年実業家で、とある企業グループの副社長。

普段は穏やかで人当たりも良いが、恋人が絡むと非常に面倒臭い。

四歳の頃から一緒の幼馴染みをモデルに〝たいやきくん〟を描いた張本人。

元の世界ではWeb3全般に鬼強く、恋人と日々楽しくインフルエンサーしながら実業家や投資家として無双しているうちに、なぜか〝職業魔王〟と呼ばれるようになった。

本作では勇者。(大事なことだから二度書いた)


■聖女ミレーヌ

ピンク髪と水色の瞳の小柄な美少女聖女様。

元日本人の転生者。

安易に前世の有名カフェをパクったばかりに、まさかの権利者本人が勇者として異世界召喚され、世界の破滅を招きそうになって涙目。

本人も反省しているので許してあげてください。


■たいやきくん

赤い鯛をモチーフにした、二本足のお魚さんゆるキャラ。

怜司が中学生の頃、現在の恋人からインスパイアされてノートの隅に落書きしたのが始まり。

高校時代に怜司が作った脳トレアプリにも実装されており、300円課金するとパソコン版W◯rdのイルカみたいな立ち位置でアドバイスしてくれた。

後に怜司が本格的にIP化。

なぜかめちゃくちゃご利益IPとして社会現象化していく。

スパダリくんという怜司をモデルにしたゆるキャラが彼氏。


■怜司の恋人

黒髪赤目の和風美人。

怜司とは四歳からの幼馴染み。

家族も周囲も「絶対こいつはいつか怜司に落とされるな……」と思っていたが、まさかの本人から先に告白。長年かけて外堀を埋めていた怜司をめちゃくちゃ残念がらせた。

とあるゲームのトップランカー。

最近はクリエイターとしての活動が中心。

家庭の事情から家事や料理が得意。

今日はスーパーで小振りの鯛が安かったから煮付け作るよ。(そして怜司が鍋でぐつぐつ煮込まれる可哀想なたいやきくんを描いてしまう)




【ここまで読んでくださった方へ】


お気づきの方もいるかもしれませんが、本作は拙作「スパダリ彼氏シリーズ」のスピンオフ短編です。


そして大変申し訳ありません。


ムーンライトノベルズ(BL)の作品が本編です。


怜司を単独で異世界ジャンルにぶち込むことでしか得られない栄養があったんですよ……


本編は高瀬怜司と、その幼馴染みで恋人の二人を中心にした、現代BL配信ものです。


「こいつ、普段は何やってるんだ?」

「職業魔王って結局なんなんだ?」

「夢に出てきた和風美人、何者?」


など気になってしまった方は、よろしければ本編も覗いてみてください。


一章の破局の危機を乗り越えた後からが、怜司全開。


→『ゲームランカーのスパダリ彼氏』

https://novel18.syosetu.com/n3809ke/



【たいやきくん関連の原作エピソードまとめ】


スパダリくんとたいやきくんリターンズ

https://novel18.syosetu.com/n3809ke/195/


スパたいストーリー構築1~

※たいやきくんの物語紹介。腹筋崩壊にご注意

https://novel18.syosetu.com/n3809ke/196/


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