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はじめまして。

処女作です。

なにか心の拠り所になるような表現がしたいです。


15時の宮崎台駅は生ぬるい空気で満ちていた。

駅を出て坂を下ると、ちょうど幼稚園から帰る親子とすれ違った。

自転車のチャイルドシートに乗る男の子が足置きをバタバタと蹴りながら自転車を揺らす。



ふわ、と頬を撫でるような風に不思議と重さを感じた。

ヘッドホンから流れる曲が爽やかなナンバーに変わる。

踊るように軽快なエレキギターと跳ねるような裏打ちのドラムに、頭の端がズキ、と痛んだ気がした。



音を止めてヘッドホンを外すと、じっとりとした汗が耳あてについていた。

私はそれをそででふき取って、信号が青になるすこし前に交差点を渡った。

何年も通って体に染み付いた道は、たった数週間通らないだけでやけに新鮮な気がした。



実家の近くは住宅街であるが、もう周りの家々はご老人ばかり、残りは変にお堅いファミリー層くらいしかいない。

お陰様で普段はしんと静まり返り、人の話す音1つ聞こえない。



狭苦しい静寂から私を隔離するようにヘッドホンを着けた。

先程の軽やかなギターがまた流れ出し、私は顔を顰めてダウンロードしたプレイリストから別の曲を選ぶ。



再生ボタンを押すと、あどけなさの残る印象的なボーカルが聞こえてきた。

もう活動を終了したバンドの有名なその曲は、すりガラスのような美しいボーカルとクリーンで幻想的なエレキギターが奏でるハーモニーが格別だ。

心の表面にふわりと水蒸気が立ちこめるような不思議な感覚がした。



「筧」と書かれた表札は、自分の実家のものであるのになぜだか他人の物のように感じた。

小さなポーチから鍵を取りだし鍵穴に入れて回すと、カチャ、という音とともに鍵が空いた。

鍵につけた好きなバンドのキーホルダーがゆらりと揺れる。



数週間ぶりに帰った実家には午後の日が差し込んでいた。

私は玄関に大学のトートバッグをトンと置くと、2階の元・私の部屋のドアを開けた。

私の部屋だったこの部屋は今は母親の部屋となっている。

白い戸棚を開けると、表面の生地切れたうさぎの抱きぐるみがぎゅうと詰め込まれていた。

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