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ゲームの裏仕様を知る者 ~凡人だった俺が“隠しステータス”で最強になる~  作者: 妙原奇天


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第9話 未来傾斜の発動

 指先がPaneの〈Future Bias〉に触れた瞬間、世界がざらりと軋んだ。

 視界の端で戦場が二重写しになる。

 一つは――赤い霧に飲み込まれ、街が赤牙に蹂躙される未来。

 もう一つは――白百合の旗が翻り、街が守られる未来。


 Paneの表示が揺れる。


 〈Future Bias〉:+0.2 → +0.5


 数値を上げると、赤い霧がわずかに後退した。

 まるで現実の布が引き直されるように、街の広場が一瞬だけ光に包まれる。


「なに……だと?」


 赤牙の継承者が目を細めた。

 彼のPaneも赤く脈打ち、汚染数値が跳ね上がる。


 〈Corruption Bias〉:+1.0 → +1.5


 黒い霧が再び押し寄せ、暴走したNPCたちがこちらに突進してきた。

 街の住民を守るはずの兵士たちが、今は刃を振りかざす敵となっている。



「蓮!」

 剣姫の叫び。

 彼女は大剣でNPCの斬撃を受け止めながらも、こちらを信じていた。


「あなたしかできない! 未来を、こっちに傾けて!」


 胸が高鳴る。

 凡人の頃の僕なら、誰かに託されることすらなかった。

 だが今は違う。僕は――裏仕様の使い手。


「……なら、やってやる!」


 Paneのスライダーを思い切り押し上げる。


 〈Future Bias〉:+0.5 → +1.2


 瞬間、未来の二重写しが切り替わる。

 赤い霧が薄れ、暴走NPCの瞳から黒が剥がれ落ちた。

 兵士たちは一斉に武器を下げ、再び市民を守る側に戻っていく。


 広場に歓声が上がった。


「戻った……! 兵士が正気に!」

「白百合が、街を守ったんだ!」


 Favorabilityが跳ね上がる。


 Favorability(街全体):+0.6 → +1.2


 Paneの数字が、熱のように脈打つ。

 僕は未来を――確かに動かした。



 だが継承者は嗤った。


「面白い。凡人の分際で未来を弄るか。だが、未来は一つじゃない。……潰す未来も、いくらでもある」


 彼のPaneに新しい数値が現れた。


 〈Collapse Bias(崩壊傾斜)〉:+0.0 → +0.8


 足元の地面が裂け、広場に巨大な影の獣が這い出してくる。

 赤牙の継承者は短剣を構え、こちらを指した。


「凡人。次の一手で――お前の未来を終わらせる」


 剣姫が僕の前に立つ。

 彼女の背に映る光が、揺るぎない誓いのように輝いていた。


「蓮。私たちで掴むのよ。凡人じゃない未来を!」


 Paneが熱を帯び、未来が幾重にも揺らめく。

 僕は深呼吸し、覚悟を決めた。


 ――次で決着をつける。

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