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ゲームの裏仕様を知る者 ~凡人だった俺が“隠しステータス”で最強になる~  作者: 妙原奇天


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第5話 裏仕様の継承者

 翌日、ギルド会議室。

 石造りの壁に、青白い光を放つ大きな地図が浮かんでいた。

 《白百合騎士団》の面々が席につき、剣姫が前に立つ。


「赤牙ギルドは北の廃都〈デストラード〉に拠点を築いている。初心者狩りを続け、勢力を拡大中。このままでは街全体が支配される。――だから、迎撃する」


 彼女の言葉に、全員の表情が引き締まった。

 そして剣姫は、僕を指さした。


「鍵となるのは、蓮。あなたよ」


「……僕が?」


「赤牙には、裏仕様を扱う者がいる。昨日の挑発で確信した。つまり彼らも、世界の“裏”に触れている。普通の戦い方では勝てない。――だからこそ、同じ力を持つあなたが必要なの」


 視線が一斉に集まる。

 喉が渇く。

 Paneが脈打つように点滅した。



 その夜。

 僕は一人で街外れの草原に立っていた。

 風は冷たく、月が青白く丘陵を照らしている。

 剣姫の言葉が、耳の奥で繰り返されていた。

 ――同じ力を持つ者がいる。


「……凡人の終わり、か」


 Paneを開く。Luckを上げ、Favorabilityを下げ、Vectorを微調整する。

 数値は生きているように動き、世界の仕組みを僕に伝えてくる。

 けれど、その奥に、赤い影が潜んでいた。



 突如、空気が裂ける。

 背後から現れたのは、赤牙のマントを羽織った青年。

 銀色の短剣を持ち、口元に笑みを浮かべていた。


「やっぱり、君も見えてるんだな」


 彼の視界にも、Paneの光が揺れているのがわかった。

 僕と同じ、裏仕様の使い手。


「……お前、誰だ」

「名乗るほどのものじゃない。ただ、俺は〈継承者〉と呼ばれている。赤牙に“裏の権能”を渡された者だ」


 〈継承者〉。

 Paneの文字が震え、赤いアラートが走る。


 〈System Whisper〉:裏仕様の対抗者を検出。互換性:98%


 青年が笑う。

「俺たち、同じ穴の狢だ。だが差がある。俺は最初から“利用する側”として育てられた。凡人上がりのお前とは違う」


「……っ!」


 青年が短剣を構えた瞬間、周囲の空気が歪んだ。

 彼のPaneが数値を弄るのが見える。速度、攻撃力、好感度――すべてが極端に跳ね上がっていた。

 圧倒的な加速。草原の風が引き裂かれる。


「凡人は、ここで潰す」


 瞬きする間に間合いを詰められ、短剣が迫る。

 とっさに僕はVector Correctionを上げ、Luckを跳ねさせた。


 Vector:1.10 → 1.25

 Luck:3.21 → 3.51


 刃が頬をかすめ、火花が散った。

 わずかに軌道がずれていなければ、僕の命は途絶えていた。



 互いのPaneが激しく点滅する。

 裏仕様同士の衝突。

 それはゲームの域を超え、現実の心臓を鷲掴みにするような感覚だった。


 青年は嗤う。

「面白い。凡人のくせに、よく耐えた。だが次はない。俺と赤牙のギルドが、お前を狩り尽くす」


 夜風にマントを翻し、青年は闇へと消えた。


 残された僕は、荒い息を吐きながらPaneを見下ろした。

 Luckは大きく減り、Favorabilityも不安定に揺れている。

 戦っただけで、世界の数値が壊れかけていた。


「……同じ力を持つ敵、か」


 凡人のままでは絶対に勝てない。

 だが僕は、もう凡人ではないはずだ。


 Paneを強く握りしめ、決意を固めた。

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