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第12話 凡人の終わり、未来の始まり

 広場の中央。

 黒い管理者の影が空を覆い、赤と白の光がせめぎ合っていた。

 Paneは勝手に展開され、二つの数値が正面からぶつかる。


 〈Future Bias〉:+2.5(蓮)

 〈Collapse Bias〉:+2.0(赤牙継承者)


『――未来は一つ。残るのも一人』


 管理者の声が冷ややかに響く。

 街全体が息を呑み、プレイヤーもNPCも固まって見守っていた。



 赤牙の継承者が短剣を掲げ、黒い霧を巻き起こす。

「凡人上がりに未来は渡さない! 崩壊こそが、この世界の真実だ!」


 Paneが跳ね上がる。


 Collapse Bias:+2.0 → +3.0


 広場の建物が軋み、瓦礫が宙に浮き始める。

 未来の写し絵には、街が赤い崩壊に飲まれていく光景が広がった。



「蓮!」

 剣姫が僕の手を強く握る。

「あなたが選ぶの! 街を、仲間を――そして自分自身を守る未来を!」


 僕のPaneが震える。

 〈Future Bias〉:+2.5 → +3.0 → +3.5


 数値が光に変わり、白百合の花弁が広場に舞う。

 未来の写し絵は二重写しのまま、激しく衝突した。



 赤牙の継承者が叫ぶ。

「崩れろ、すべて!」


 僕は声を張り上げる。

「――変われ、未来!」


 二つのPaneが重なり合い、閃光が広場を呑み込んだ。

 白と赤。希望と崩壊。凡人の終わりと、新しい始まり。



 光が収まった時。

 立っていたのは僕だけだった。

 赤牙の継承者は短剣を落とし、赤い霧とともに消えていく。

 管理者の影も静かに溶け、最後に言葉だけが残った。


『選ばれし者よ。凡人は終わり。――未来を継ぐのは、お前だ』


 Paneに新しい項目が刻まれる。


 〈Final Title:未来の継承者〉



 広場に歓声が広がった。

「白百合が勝った!」

「蓮だ! 希望の継承者だ!」


 剣姫が微笑み、大剣を下ろす。

「蓮。あなたは凡人じゃない。……未来を選んだ英雄よ」


 胸の奥が熱くなる。

 確かに僕は凡人だった。

 けれど、Paneに触れ、仲間と出会い、未来を傾けた今――凡人の終わりは、新しい始まりなのだ。



 夜、街の屋根に座り、Paneをそっと閉じる。

 画面にはもう、赤い警告はない。

 代わりに淡い光で一行の文字が浮かんでいた。


 「凡人の終わり、未来の始まり」


 静かな夜風が、英雄の名をまだ知らぬ未来へと運んでいった。

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