第11話 希望の継承者
広場に白い光が散ったあと、街は熱狂に包まれていた。
NPCたちは感謝を口にし、プレイヤーたちは僕の名前を連呼する。
「白百合が街を救った!」
「新入りの補助士、すげえ……!」
「蓮、希望の継承者だ!」
Paneが眩しく点滅し、新しい称号が刻まれる。
〈Title:希望の継承者〉
Favorability(街全体):+2.0 → +2.5
凡人だった僕が、もう凡人ではなくなったことを、誰よりもPaneが証明していた。
◇
「蓮」
剣姫がそっと隣に立つ。
大剣を肩に預け、穏やかな微笑を浮かべていた。
「あなたは、もう“ただの補助士”じゃない。この街の未来を選んだ存在よ」
胸が熱くなる。
だが同時に、不安も広がっていた。
あの継承者は消えていない。崩壊の未来を完全に断ち切ったわけでもない。
――そして。
Paneが突然震えた。
視界の端に、黒い文字が走る。
〈System Whisper〉:管理者プロトコル起動。対象“継承者”を観測します。
「……っ!」
広場の上空に、黒い人影が現れた。
顔のない仮面。無数のコードのような鎖をまとった異形。
赤牙の継承者も霧の中から姿を現し、その存在に目を見開く。
「……管理者、だと?」
声が戦場に響き渡った。
『裏仕様を弄ぶ者たちよ。凡人の域を超えた代償を払え。――未来を継ぐのは、一人だけ』
空気が凍りついた。
管理者は、僕と赤牙の継承者、どちらか一方だけを“次代の継承者”として残そうとしている。
剣姫が僕の手を握る。
「蓮。選ばれるのは、あなたよ」
でも、赤牙の継承者は冷笑した。
「選ぶのは俺だ。凡人はここで終わる」
広場の中央、Paneが勝手に開き、赤と白の光が交差する。
――最終決戦が始まろうとしていた。