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剣道少年  作者: カニシカ
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剣道部入部

「高原北中学からきました。三葉みつば 洋司ようじです。中学の時は剣道をやっていたので高校でも剣道を続けようと思います。よろしく」


ふぅ、緊張した。自己紹介ってのは何歳になっても緊張するもんだな。うん、まだ15歳だけどさ。

今日から高原たかはら高校に晴れて入学できた三葉洋司、この僕。あだ名はクローバー、みっちゃん、ひろしつかさ|(どこのお笑いコンビだ)。挙句の果てには爪楊枝にかけて、つばようじなんてあだ名もあったな…。あの頃はツッコミ大変だった…。いや、こんな話はどうでもいいんだ。何でこの高校に入ったか、ってことを話したいんだ。実は、この高校剣道部が相当強いんだ。全盛期には全国大会ベスト4になったこともある強豪校。去年も全国大会に出場したらしい。剣道が好きな僕としては最高の高校なんだ。入るならこの高こ…|(割愛)


米良めら 信二しんじでーす。よろしくねー」


後ろの生徒はなんでそんなに軽いんだ。緊張とかしないのか。僕なんか緊張してもう喉がカラカラだってのに。


「自己紹介ってだりぃなぁやっぱり。ってーか、三葉。オマエ剣道部入るってホントかよ」


自己紹介が終わって椅子に座った後ろの生徒、米良くんは早速呼び捨てで話しかけてきた。他の生徒が自己紹介してる時に私語とかはしたくないけど、無視するほど僕は酷い人間じゃない。その前に無視できるほど度胸が無い。


「うん、そのつもりだけど」


小声でそつのない返事をする。


「もしかしてオマエ…噂しらねぇの?」


「噂?なにそ「三葉くん、米良くん静かに」すいませんでした」


うわぁ、鋭いよ先生。噂ってのが気になるけど、後で聞くことにしよう。


「ま、悪いことは言わないから止めとけ。無茶苦茶になるぜ。オマエの高校生活」


…いや、マジでどんな噂だよ。






あの後結局『剣道部の噂』について米良くんから聞けなかった。何故かというと米良くんの周りには人がいっぱいいたから。人見知りの僕がその集団を掻き分けて聞くことなんかできないに決まってるのだ。


「で、もう部室の前に来てるわけだけど…。入っちゃっていいのかな。いや、鍵かかってるだろうし待ってようか」


高原高校は入学式当日から部活動に入部することができる。入部退部が簡単に出来、尚且つ全ての部に広い部室があったりするので、それが目当てで入学する生徒が多い。高原高校の校則で部活動には絶対に入部しなければならない事もあって、新入生は午後の自由時間がある入学式の日に入部する人が多い。比較的自由な校風なので高原高校は県内で人気の学校なのだ。全校生徒が690人。1学年230人でA~Fクラスまである。つまり1クラス38人ないし39人。成績順にクラスが分けられており、僕はBクラスだ。


「それにしても…1年生が来ないなぁ」


230人もいるのだ。剣道部に入りたいっていう人が僕以外にいてもおかしくないと思うけど…。まぁ、この高校は部活の数も多いし、それに入学式の日以外に入部する人だって勿論いるわけだし。偶々なんだ。入学式の日に剣道部に入部しようと思っている1年生が偶々僕だけなんだ。別におかしいことではない。…はずだ。


「ん?もしかして入部希望者か?」


「うわぁっ!?」


いつの間にか先輩らしき人が隣に立っていた。全然気がつかなかった。すげぇびびった。


「そんな驚かなくてもいいだろう。で?入部希望か?」


「え?あ、はい」


「待たせて悪かったな。とりあえず入ろうか」


「は、はい」





部室の中はやはりと言うべきか、散らかっていた。ゲーム雑誌や携帯ゲーム機、スナック菓子のゴミなどが乱雑に…うん、汚い。匂いも剣道特有のあの匂いがした。うん、臭い。


「あー…そっか。そうだったな、昨日の鍵当番はあの二人だったか。仕方ない。女子剣道部の部室を借りよう。悪いな」


何かを思い出したようで。先輩はすぐさま外へ出た。


「は、はい」


男子剣道部の部室と女子剣道部の部室は違うらしい。先輩は男子剣道部部室のすぐ隣の女子剣道部部室のドアにノックした。


「はいはーい、どなたー?」


女の子の声がする。


「坂内だ。こっちの部室は汚すぎる。部室借りても良いか?」


先輩、坂内というらしい。それにしても低い声だなぁ。


がちゃっ


ドアが開いた。そこには胴着姿の女子の先輩がいた。


「また?ちゃんと綺麗にしときなさいって言ったでしょ?」


「悪いな。昨日の鍵当番が多田と田淵だったんだ。大方夜遅くまで遊んでたんだろ」


女子の先輩は何か納得したような顔をすると


「じゃあ仕方がないわ。入って。ほら、君も」


「ありがとう。助かるよ」


「あ、ありがとうございます」


中はすごく整頓された部屋で、臭くもなかった。あぁ、これが女の子の匂いかぁ。いや変なことは考えてないよ?ただ、うん、純粋に。


「それで?新入生は一人だけ?」


「今のところは一人だ。そういえば名前を聞いてなかったな。君、名前は?」


「あ、僕は、み、三葉洋司です」


うわっ、ちょっと噛んじゃったよ。


「入部希望ってことでいいんだな?」


「はい」


「じゃあ最初に言わなきゃならないことが1つある」


「なんですか?」




「剣道部は1ヵ月後、廃部になる」




はい?

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