表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨の日

作者: うに豆腐

あなたに映る世界は、何ですか?

雨の日。


休日の暇な時間。


暇と言っても、何もしていないだけ。


暇つぶしなんて家に沢山ある。


ゲーム、本、映画。


それすらも出来ず。


やる気がないから、ベットに転がるだけの時間。


明日も学校。


水溜りと、窓の向こうの灰模様。


ポタポタと跳ねる水が、蛙みたいで


しつこいぐらいに主張する。


より一層


自分の孤独が感じられる。


今日は沢山降るみたいだ。


そんな予感がする。


「また、バケツを用意しないと」


せっせと、落下地点に持っていく。


それでも足りない時は


手のひらで。


「よいしょっと」


ベットの上にまた座る。


心の世界へ


枕の隣にある本が邪魔だ。


途中まで読んでいた本を右手に、左手で口を覆う。


「あっ!」


うっかり濡れてしまった手の方で取ってしまった。


「やっちゃった」


ページの端が濡れる。


雫が落ちる。


「いい本......」


「貴重なのに....」


「乾くかな?」


本を開いたままに


近くにある机の上に乗せた。


「乾きますように!」


子供じみた願いを込めて


念を送る。


「さあ、どうしようかな」


目を閉じようとしても


静寂は暫く訪れないだろう。


音が邪魔をするのだ。


「暇だ.....」


「外にも行けない、やる気もない」


「自分はどこかへ行きたいのに」


「何もかもが邪魔をする」


「この世界はまるで」


「鳥籠のよう」


自分に映る世界の色。


全ての色。


灰も藍もない。


先に靄がかかって見えず


見えようがないからだ。


もっと


もっともっと


いっぱいの。


そんな、黒色。


「あの日以来かな」


ーーーーーー


雨の日。


フライパンの音だけが入ってきて。


うるさくない、静寂の中。


窓の壁にぶつかって


雫は腹を立ててしまうだろう。


本の世界に夢中になっていると


鼻に、バターの香りが漂ってくる。


廊下の先


その、背中


母の姿


つられてしまうような


まろやかで、穏やかな


例えるなら


そう、お日様の香り。


ーーーーーー


「あの日の様な、パンケーキを作りたい」


すぐに、思いたった自分は準備をしだした。


せっせと動き、足りない身長で、棚の皿を取る。


危なかったが、怪我はしなかった。


キッチンにある棚から小麦粉、冷蔵庫から卵。


その他材料。


運良く、持っていた。


そして、フライパンにバター。


とろとろになるまでかき混ぜた素を入れ


火力を調整し、ひっくり返す。


「はあ......」


なぜか、黒色が出てしまう。


いや、出ると言うより


黒、そのものだ。


「上手くできない.....」


そりゃそうだ。


まともに作った事がないんだもの。


「もうやーめた!」


フライを置いて、そのままベットに


「そうだよな.....」


「後で食べる.....」


母の教え。


心に響く。


「........」


無慈悲に雨は降り続ける。


音を響かせ、水溜まりを作る。


自分の様に


いや


寝よう。


取り敢えずさ


何も今日は考えたくない。


うつ伏せになり、息を潰すように寝てみる。


苦しいけれど


だって、まだ外は明るいからだ。


ピチャン


ポタタ


バケツの中に入る音。


やけにそれだけが聞こえる。


ああ、良いな.....


それでいいんだよ......


「んう......」


記憶の中で


どうでもいいような事を思い出しながら。


「じゃあここでいいん?」


「うん」


一人、友達。


学校帰り、分かれ道の真ん中で


連絡の取っていない。


友達の思い出。


「明日、ゲームしようよ」


「続きあそこからね」


「わかった」


「あっ」


「寝るなよ?」


「昨日もそうだったから」


「勉強とか」


「忙しいのはわかるけど」


「たまにはさ」


「付き合ってくれ」


「あーうん」


「ほんとに?」


「大丈夫」


「今日は授業中に寝たから」


「あはは!」


「いつもそうじゃん!」


「どうせ5時間目の道徳だろ?」


「うん」


「ふふっ」


「俺もだよ」


「じゃあな!」


「明日!絶対やれよ!」


手を振る。


走る姿。


背中が遠くなるまで見続けてさ。


ふと、目を開ける。


「そうだ」


「あいつ今なにしてるかな......」


卒業して


違う所に行ってしまった友達。


いや


友達と言うよりかは


親友だ。


小学生の頃からゲーム。


卒業するまでは


ずっと一緒だった。


たった一人の親友。


「懐かしいな......」


天井を見上げ、ぼーっとする。


「連絡先だけはあるんだよな......」


「でも忙しいだろうな......」


「......」


「はぁーっ」


「やめよ」


良くも悪くも優柔不断。


怖がりで、臆病。


自分の悪いところ。


「いつかだ」


「いつかまた会える」


雨の日。


雫の落ちる音が響き渡って。


静寂の中で想い続けた。


ただそれだけ。

半分真実、残りの半分は嘘です。

良かったら感想下さい。

それだけでとても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
内容を誰でも簡単に想像できて面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ