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第六十話 馬車魔改造計画Ⅶ

 これまでに、炎生成、水生成、お湯生成は完成したので、残りは手早く作っていける。


 まずは浄化用の異空間収納。

 これは排水口を床下に創造しているから、そこから流れ出たやつを保管して浄化の魔法具をその中に入れることで解決しようと思っている。満水になったら綺麗にした水をそのあたりに捨てることもできるだろう。飲み水に使うにはちょっと気が引けるからな…。

 浄化水を外に捨てられるようにもしておかないとな。

 床下は高さが六十センチほどしかないけど、その中で大きな空間を創造する。そして、間仕切りを設置して色々な浄水方法を設置していけるようにしておく。


 次に浄水の魔法具だが──


「回転で個体をなるべく分解して…、空気を大量に混ぜ込み…、石、炭、砂、あとは…バクテリアの創造は止めておこう…。微生物とはいえ生物の創造は流石に危険が多そうだ。その代わりに、バクテリアが定着できるように濾過の素材を大量に用意しておこう。基本洗浄不要なものがいいな、無限に使い続けることは出来ないだろうから、定期的に作り変えることも想定して…、最後に貯水できるように…」


 それらの浄水に必要なシステムたちを、先ほどの創造した異空間収納に合うように創造していく。


 思っているよりもいい感じに出来上がりそうだ。

 魔法具自体は簡単に作ることが出来たが、あとはちゃんと動作するかが問題だな、最初はある程度水をためる必要もあるだろうし…。水量も管理できるようにしておいた方が良かったか…?


「まぁ、ここから先はエラーが出てから対応するか…」

「ま、信希…?さっきから何を言っているのかさっぱりわからないんですけど…」


 オレはイレーナが魔法を使えたことを喜び続けていた隙に、魔法具を作っていたのですっかり集中してしまっていた。


「そうだな…この浄水の技術は難しいものが多いんだけど…。説明するにも準備が必要だな」


 オレは最後の一つのペットボトルを取り出し簡単なろ過装置を準備する。石はその辺にあったものを、炭は焚火から、砂もその辺から、最後に布を当ててその全部をペットボトルに入れて完成だ。


「これは本当に単純な説明用だけど、上から水をゆっくり落として順番に水が通っていくことで、最後に出てくるときは入れた時よりも綺麗な水になっているって装置だね」

「こんなので水が綺麗になるんですか…?」


「この中に入っているモノのそれぞれに役割があって、水が汚れている原因を取り除く役割を果たしているんだ」

「な、なるほど…」


「まぁ、大体の場合は煮沸消毒が一番効果的なんだけどね。でも、今オレが作っていたのはもっと複雑に綺麗な水を作り出すやつだから、その分難しいって感じだね」

「信希はすごすぎます…ワタシの知らない知識をこんなに…」


「オレも知らないことは沢山あるよ」

「そうですね…。この世界の事は任せてください!」


 確かに、イレーナとオレの持っている知識を合わせるだけで、とんでもないものが作れたりしそうだ。

 この世界には、まだまだオレの知らない知識や魔法、魔物がいるだろう。それをイレーナと一緒に…。なんだかワクワクしてくるな。


「よし、あとは氷生成の魔法具で完成だな」

「あれ、少なくないですか?」


「ああ。残りは馬車の中で作る必要があるやつだからね」

「そうなんですね」


 氷の創造はとても簡単に完成させることが出来た。

 魔法具を発動させれば常に冷気を出し続けるので、このまま冷蔵庫に入れておけば完璧だ。


「よし、馬車の設置とベッドとかの作成は皆が起きてからだな」

「そうですね、離れるわけにはいきませんからね。お疲れ様でした、お茶でも淹れましょうか」


「オレも手伝うよ」

「信希には色々教えてもらいましたから、休んでいてください?」


「わかった。ありがとう」


 イレーナはすぐにお茶を淹れる準備をしてくれる。

 なんだか落ち着いて考えると、こんな風に二人でいると新婚ってこんな感じなのではないかと思えてくる…。

 しかも超絶可愛いし…。

 オレはゆったりと阿呆みたいなことを考えながらイレーナを見つめていた。


「信希?どうしましたか…?」

「いや、イレーナは本当に可愛いなって思ってた」


 つい、そんなことを口走っていた。

 考えていることがそのまま口に出てしまった。


「あ、ありがとうございます…」


 前までは、こんなことを言うと照れてしまっていたが…、やっぱりオレたちの関係も、少しずつ変わってきているんだなと改めて実感する。


「どうぞ」

「ありがとう」


 オレはイレーナの淹れてくれたお茶を受け取り口にする。


「うん、おいしい」

「夜は冷えますからね、温かいものがおいしいです」


「だね──」

「旅をするなら夜間の警戒が必要ですから必需品とも言えますね」


 イレーナの何気ない一言で、今更ながら気づいたことがある。


「なぁ、イレーナ?」

「はい?」


「もしかしてさ、ロンドゥナの使っていた魔法をオレが魔法具にしたら、夜間の警戒って必要なくなるんじゃないの?」

「…あ…」


 オレはそう言いつつイレーナの方を見ると、驚いているのかイレーナも気付いていなかったのか、戸惑っているような表情を見せている。


「どうかな?」

「その通りだと思います…」


「あー。でも水晶が足りないのか…。これまでに作った魔法具って元の水晶に戻す事ってできないのかな」

「信希ならできそうですけど…ワタシは使い切り以外で、魔法具を水晶に戻す方法を知りませんね…」


「ちょっとやってみるか」


 魔法を刻み込んでいる水晶を元に戻すか…。どうすればいいんだろう。元の水晶を上書きできないかな…?

 オレは、馬車の魔改造用に残っている魔法具になっていない水晶を一つ取り出し、鑑定の水晶で調べてみる。


『水晶。魔法具を作るために使われることが多い』


 これだけか…。逆にこのイメージをそのまま上書きしてみよう。

 もう必要なくなった魔法具は二つある、炎生成と水生成だ。

 まずは炎生成の水晶から試してみる。


「簡単すぎて逆に不安になるな…」


 どうだろうか…。ただの水晶のイメージをそのまま上書きしてみたけど…。

 すかさず鑑定の水晶で調べてみる。


「出来たみたい」

「随分あっさりできましたね…?」


「そうだな…。でもこれで、ロンドゥナから魔法のことを聞いて魔法具にすることが出来たらかなり楽になるな」

「そちらも上手くいくといいですね」


 そしてオレたちは警戒を続けながら、朝まで談笑することにした。


 ──。






お読みいただきありがとうございます。


日曜日にまとめて投稿したので、あっという間に60話まで進みました。

呼んでくれるみなさんが応援してくれるおかげで頑張れています!


これからも頑張って更新していきます。

よろしくお願いいたします!

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