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第五話 酔っ払いがいたみたい

 半ば強引に、宿と食事をケモミミ様に献上することができた。


「おいしいの!」

「久しぶりのごはーん!」


「おいしそうだな、いっぱい食べていいからね」


 食事の味はまぁまぁだったが、ケモミミ様と一緒に取る食事というだけで幸せになることができる。ケモミミは最高だな。


 そんな幸せな時間を、またしても邪魔してくる存在が現れる。


「ぐへぇ、おいおい、うまそうなもん食べてんじゃーん」


「はぁ、酔っ払いか。さっきのオレの力見てなかったのか?絞め殺すぞ?ケモミミ様との時間を犯すなら、死あるのみ」


「力ぁ?何言ってんだぁ、酒に全部金使ったからなー。ご飯食べさせてくれぇ」


 そう言うと、これまたフード付きの外套を纏った酔っ払いは、無理やり席に座ってくる。


「おい、それくらいにしとけ。いくら何でも、殺すとなると気が引けてくるからな」


 酔っ払いは、座った瞬間に「うぅー」と言ったまま机に突っ伏して眠ってしまった。


「なんだ、こいつ…」


「信希!それよりもご飯なの!」

「早くしないとボクが全部食べちゃうよー!」


 う、さすがにオレも食わずで過ごすほどの余裕は感じられない。先に食べてしまうか。


 ──。


 強引に座ってきた酔っ払いを余所に、食事を進め食べ終わった頃にようやく酔っ払いが目を覚ました。


「んんー…。めちゃめちゃいい匂いする」


くんっくんっ、と効果音が聞こえてきそうなほどに、鼻息を荒くしている。


「あなたね、とっても優秀なオスの匂いがする」

「何言ってんだ」


「わたしと子供作る」


(こいつ、女性だったのか!?)

「あー、もしもし?オレは人間に全く興味がないんですが」


「えぇいうるさいなぁ!いいから、さっさとするのー!」

 おそらく女性である酔っ払いが飛びかかってくる。



 近づいてきた女性からとても強い酒の匂いがして、これまでの最高だった気分が一気に萎えてしまう。


「女性だから手加減しないと」


 本当は女性に暴力なんて振るいたくはない、だがこれは少々危険な状態だ。組み伏せるだけでいいから抑えないとな。


─ガタガタッ!


 女性にしては少し『強いな』と感じる程度の力で、オレを抑え込もうとしてくる。

襲い掛かってきた酔っ払いの特攻を躱して、瞬間で組み伏せる。

「正気に戻ってください?これ以上は痛くしませんから」


 反応がない…。さっきまでの力が一瞬にして抜けていくのが分かる。


「あの?大丈夫ですか?」


 やりすぎたか…?なんて考える必要もないはずだ。なんせ全然力なんて入れてないんだから…。


 安否を確認するために、長椅子の上に突っ伏している酔っ払いを仰向けにしていく。

 それと同時に、フードも外れてしまう。


「ひょっ!」


 またもやケモミミ!!この町は、ケモミミはフードで隠す習慣でもあるのか!?


 酔っぱらいの正体は女性で間違いないようだ。2人のケモミミ様よりも立派なお胸をお持ちでいらっしゃる。

 胸はどうでもいい、それよりもケモミミだ!今回のケモミミ様は一味違うぞ!これまでのケモミミは、柔らかさよりも硬さが目立つようなケモミミだったが、彼女のケモミミは『モリっとしている』そうだ、この茶色っぽい毛並みと言い、レッサーパンダみたいだ。とっても柔らかそうなケモミミに、ついつい手が吸い寄せられそうになる…。


 それよりも、安否の確認をしないと!


「こ、これは大変なことになったぞ!?」


「死んじゃった?」

「信希やりすぎだよー女の子なのにー」


 シアンとレストは、3人目のケモミミ様が見えていないはずなのに、なぜか女性だと気付いている。

「どうして、彼女が女性だと…?」


「そりゃあ匂いですぐわかるよ」

「レストは勘が鋭いから、すぐに分かったのー」


「まさか、獣のちから!?」


 完全に不覚だ。まさかケモミミ様を傷つけてしまうなんて…。今日でオレは3回も罪を犯してしまった…、神よお許しください…。


「それよりもケモミミ様の安否を確認しないとっ!」


─グウゥゥゥ。


 ん?


─クカァァァ。


「よかった、眠ってるだけみたいだ…」


 その後、店主にもう1人分部屋を追加することを伝えた。なぜか、更に怯えていたようだが勘違いだろう。


 部屋が空いていなかったようで、4人で大きな部屋に泊まることになった。


 ──。


「これは、天国か」


 酔っ払いのケモミミ様を3人で介抱していると、満腹になっているシアンとレストはすぐに眠ってしまった。


 シアンは豪快に、体を大きく広げて眠っている。

 レストは、壁とベットのスキマに落ちそうな勢いで挟まって寝ている。

 酔っ払いのケモミミ様は普通に眠っているが、時々見せるケモミミをパタパタとさせて眠っている。


 そんな状況に、オレの中のケモミミ愛が雄たけびを上げている。


「ケモミミが尊い、最高じゃあ…」


 3人のケモミミ様を拝みつつ、そんなことを言っていたオレだが、疲れていたのかとても眠たくなってくる。


「寝るか、そろそろこの夢から覚めてもおかしくないからな…」


 最後にもう一度、至高のケモミミたちを拝んで眠りにつく。


 ──。


(なんだか騒がしいな…)

 オレの部屋には誰も居ないはずだから、声なんて聞こえてこないはずなんだけど…。


 だんだんと周囲の音が鮮明になってくる。


「ほらー、逃げちゃだめだよー」

「そうなの、信希にありがとう言うの」


「な、なんだぁ?」


 盛大に体を伸ばしつつ起き上がると、昨日の酔っ払いケモミミ様が起きていた。そして、なぜかシアンとレストに捕まっている。


「ゆ、ゆるしてぇ…ごめんなさい…」


 まるで別人のようになってしまっているケモミミ様の状況に、少しだけ罪悪感すら生まれてくる。


「う…ケモミミ様恐るべし…」


「ほらぁ、信希起きたからー」

「早く謝ってお礼するの」


 二人に捕まってしまい、どうしようもない酔っ払いケモミミ様はあたふたしつつも、オレに話しかけてくる。


「信希様、ごめんなさい。その、昨日は酔っぱらってて…つい攻撃的になっちゃて…」


 申し訳なさそうに謝っている。


「大丈夫『様』なんて呼ばなくていいよ、信希で構わない。オレは何ともないよ。それよりも怪我とかしてない?昨日はスゴイ勢いで椅子に倒しちゃったみたいだけど」


「少しだけ頭が痛いけど、平気です…」


「そっか、なら安心した。こちらこそごめんね?ケモミミ様だと気付かずに、ついひどい態度をとってしまいました、ごめんなさい」


「信希は優しいっ!」

「信希に感謝しなよー」


「それよりも、2人とも放してあげて?可哀そうだから、ね?」


「「うん」」


 オレがそう言うと、すぐに2人とも解放してあげる。なんだかオレが命令してて、偉そうに見えるな…。


「2人はどうして彼の力に怯えていないの…」


「ん?なんのことだ?シアンとレストのことだよね?」


「ボクたちはね、信希と一緒にいるんだよー」

「レストたちみたいな『獣人』にも優しくしてくれるの、とっても良い人だもん」


「そう、なんだ…」


 何だろう、何かを納得してるみたいだけど、ケモミミ様を大切にするのは当たり前だろう。


「君は、名前はなんて言うのかな?良かったら教えてほしいんだけど」

「わ、わたしはポミナです」


 かわいい。名前だけでもかわいい。

「良い名前だね、ポミナ、とてもステキだ」


 なんだか、もじもじしているな。とてもかわいい。モリっとした耳もぱたぱたと動いている。


「オレは朝からこんなに幸せな状況に居ていいんだろうか」


「あ、あの…」


 もじもじしているポミナが、顔を赤らめてこちらを向いている。


「うん?どうしたの?」

「わたしも、信希さんと一緒に居たいです…」


「すうぅぅ…」

──かわいいぃ!!最高だ!!


「これはまずい…。昨日の今日で、同行したいと言うケモミミ様が3名に増えただけと感じるかもしれませんが、ケモミミ愛に極振りしているような私にとって、今の状況がどれだけ私の心身に影響を及ぼしているか…。夢だと思っていた今の状況が変わることなく続いている。これだけでも私の人生において最上級の褒美とも言えるのに、加えて3名ものケモミミ様が私について行きたいと言ってくれている。3人目の酔っ払いケモミミ様は、思っていたよりもおとなしい性格で、どちらかと言えば人見知りであろう性格なのは既に理解できます。酒を飲むことで性格が変わっていることを怪訝する方もいるかもしれませんが、ケモミミ様であるだけで私のもっていたそういった感情は無くなりました。どちらが素なのかとかは問題ではなく、萌える!いや、愛することのできる2重人格と言えます。ケモミミ様であるならば、一石二鳥。一粒で二度おいしい。一挙両得。一箭双雕!ポミナ様の性格ばかりに触れてきましたね。大切なのはここからで、やはりは偉大なるケモミミ様です。ポミナ様の恥じらいながら見せるモリっとしたケモミミは、シアン様やレスト様とは違った別の良さを感じさせられます。そうですね、例えるのであれば普通の女性の上目遣いにプラスαで自分の好きな顔、好みの服装、かわいらしい髪形、その女性の一挙手一投足が全て自分の性癖に突き刺さるような、そういった感情を覚えました。これまでに見たケモミミの中で、一番好みであるのがポミナ様のケモミミなのかもしれません。ただ、それだけでは言い表すことのできない魅力を感じます。そうですね『似合っている』これで一番しっくりくる表現です。私自身少し困惑しています、ケモミミをここまで自分のものできるのかと。いや、ケモミミ様たちは生まれた時からそのお姿のわけですから、当然と言えば当然の話ですね。これらの感情を一言で言い表すなら『萌えの極致』でしょうか。控えめに言っても、誇張して言っても、最高!!ケモミミ…万歳ッ!」


「もちろん、ポミナがよければ、一緒に居てもらってOKだよ」

「「よかったねー」」


 なぜかシアンとレストは、あらかじめ知っていたかのように、ポミナを『よしよし』している。

(いいなぁ、オレもそれしたい…)


 そんなこんなで、いつまで経っても覚めない夢の中でオレは、たった1日でケモミミ様3名と、しばらくの間一緒に居ることが決まりました。


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