第三十三話 報酬と対談
オレたちが案内された部屋は、いわゆる応接室の様な部屋でかなり豪華に飾られていた。
部屋に到着すると座り心地の良いソファに座るように促され、オレたちは言われるままに寛ぐことになった。
お茶やお菓子なども座ると同時に、奥から複数人のメイドがやってきて予め手配されていたようだ。
オレたちが一息ついたころに、一人の人物が訪ねてきた。
「お初にお目にかかります。わたくしは、メキオン・パンネ・ローフリング。この国の第一王女です。以後お見知りおきを」
「オレは林信希だ。貴族や王族に対する礼儀なんかに詳しくないんだ、言葉遣いは勘弁してくれ」
「はい、もちろんですの」
メキオン・パンネ・ローフリングと名乗る彼女は、先ほどの謁見の間に王の横に座っていた人物だった。
彼女の見た目はとても美しく、もしも元の世界に居たのなら間違いなく傾国の美女と謳われて持て囃されるだろう。
年のころは…、成人はしてなさそうだ。十五歳くらいがいいところではないだろうかといった風貌だ。
背丈もさほど大きくなく、イレーナと変わらないくらいだなといった印象だが、あまり小ささを感じさせないようなドレスを着ているので、そのあたりにも意識が向けられているのが窺える。
「褒賞が準備できるまで、よければわたくしとお話でもいかがと思い伺いましたの」
王女が…?オレに何の用だろうか。
「もちろん構わないが、王女様を楽しませられる話題なんて持ってないぞ」
「わたくしは、信希様にとても興味がありますの。ここに来るのも父上にとても無理を言って来ましたの」
「なるほど…?」
「興味と言っても、さほど難しい事ではありませんの。信希様はどうして、多くの女性を従えているのでしょうか?」
「そんなことを聞いてどうするの?」
オレは予想もしていなかった質問に戸惑ってしまう。
「簡単なことですの。王族や貴族というのは一夫多妻制が求められる立場ですから、その参考にまでと思いまして」
「彼女たちはオレと行動を共にしてるだけで、そういう間柄じゃないぞ?」
「まぁ、そうですの?てっきり皆さんとそういう間柄だとばかり…」
「用はそれだけ?」
「いえ、まだありますの。先ほどのあの場ではわたくしが喋ることは叶いませんから、もう一度この国を代表してお礼申し上げますの。本当にありがとうございました」
そう言うとお姫様は立ち上がり深々とお辞儀をする。
だが、オレは少し困惑していた。
本当にただケモミミ様を助けたかっただけ、そしてたまたまオレがそこに居ただけの話で、ここまで感謝される必要があるんだろうかと。
「気にしないでくれ、先ほどの話を聞いた時の部屋にいたデストという人を助けたかっただけだから」
「デスト団長とお知り合いですの?」
「いいや?」
「…?」
王女様はオレの好みなんて知らないからな、不思議そうな表情を浮かべて何かを考えているようだ。
「少し話は変わりますが、やはり信希様は王都を出られるのでしょうか…?」
「ああ、そのつもりだ。この世界を見て回りたいって言うオレの希望にみんなが付き合ってくれている状況だけどね」
「世界を見て回る…なるほど、それはお止めするのは難しいかもしれませんね」
どうやら彼女は、まだオレをこの国に留めておくことを考えているようだ。
「どうして、オレをこの国に居させたいの?」
「それは決まっています。もしも、信希様が他国に行ってしまいそこでその『お力』が我が国に向けられることがあったのなら…、そう考えるとこの国に居てもらうのが我らにとって最良なのです」
このお姫様は、貴族や王族にしては明け透けとモノを言う人だな…。それだけオレの力を強大とみて逼迫しているのか…?
「なるほど…?少し納得はしがたい理由ではあるけど、理解はできる。だが、その必要はない。オレがこの力を人間相手に使うことはないと思ってくれていい。特に戦争に参加するつもりもないし、誰かの命令で使うこともない」
「その言葉を信用しろというんですの?」
お姫様のその言葉は、真っすぐでとても力強くオレを射抜く力を持っている。
だからと言ってここで引き下がるわけにはいかない。
「そうだな、信用に足る理由も無いな。だが、一つ事のためにオレはこの力を使う。それに人類が含まれたのなら、この世界に住む全人類を滅ぼすことはあるかもな?」
「脅し…のつもりですの…」
「好きなように解釈してくれていいよ、問題は『ソレ』が何かってことじゃないのか?」
「うかがってもよろしいんですの…?」
もちろんオレは隠すつもりなんてないので堂々と宣言する。
「オレの側に居る獣人、いやケモミミ様に害をなすならその力は振るわれる。オレの行動も言動も生活も人生も全てケモミミ様に捧げている。これを邪魔するなら誰であろうと容赦しない」
「…ケモミミ…?」
「これの事だよっ!」
レストはそう言いつつ、御自慢のケモミミをお姫様の前でぱたぱたさせている。
とてもかわいいな。
「信希様…、あまり要領を得ないのですが…?」
「そうだな。例えば、先ほどの王様の褒賞の件なんかも少し危ういラインではあるぞ?貴族位やこの国にオレを縛り付けようものなら、大切なケモミミ様との時間を奪うことになる。そうしたならオレは間違いなくこの力を使ってケモミミ様との時間を確保する。そういうことだ」
「何が信希様をそこまでさせるんですの…?」
「何…が…だと?見てわからんのか!?この素晴らしきケモミミが!見ろ!レスト様は猫っぽいケモミミが!一見しっかりとした感じだが、その柔らかさは『ぱたぱた』させた時に見て分かるだろう!それに!こちらのポミナ様に関しては、モリっとしたふわふわもこもこのケモミミが!この良さがわからんのか!なんたる体たらくか…オレは悲しいぞ。シアン様に関しては言うまでもない!このワンちゃんを彷彿させる元気の良い耳は、日常的に!そして自分の本能に従い稼働しているのが!このケモミミ様たちが居るからこそ、オレはこの世界に居るんだぞ!この良さがわからんか…やっぱり人間はどこまで行っても人間ということよな…オレは損底見損なった…。これだけ素晴らしいものが目の前にあるというのに、感動するどころか理解できない自分のことを棚に上げてわが身の保身ばかり…やはり人間か…本当につまらん生き物だな」
「……」
オレのケモミミ愛を語ったのだが…?
当のお姫様はというと、オレの勢いで呆気にとられたのかどこか空を見つめるような表情をしている。
本当にこれだから人間ってやつは…。
そうこうしているうちに、金貨の準備が出来たのかオレたちを迎えに来た貴族の男が部屋に入ってくる。
「信希殿、こちらが我々の感謝の気持ちになります。お納めください」
「ああ、分かった。王様にも感謝を伝えておいてくれる?世話になったな、すぐに王城から出るよ」
「かしこまりました。すぐにメイドへ案内させます、本日はお時間いただきありがとうございました」
お姫様はオレの言葉に驚いていたのかそれから話すことはなく、ただただオレたちを見送るだけだった。
オレたちは案内されるままにそのまま王城を出て、再び日常ともいえる街に戻っていく。
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