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第三十話 作戦会議Ⅱ

 この王都で起きていることは全て可能性にすぎないが、彼女たちのおかげで何とか後手に回らずに済みそうなので、ここからは元居た世界での知識も織り交ぜて全力で彼女たちを守ることにする。


 ここまで来て、一つ疑問に感じていることと、確認しないといけないことができている。


「一つ確認したいんだけど、ロンドゥナ。君はこの国の関係者だったり、オレの情報を集めたりするのか?」


 オレはこの街に来てからいち早く出会って、オレの側に居る彼女の正体を確かめる必要があった。

 美女を疑うなとか、女性に厳しくするなとか、今の俺にはそんな余裕はない。

 ここまで、オレを信じてついてきてくれた彼女たちを守るためだ。


「ま、信希それは─」

「イレーナ、彼女自身に答えさせて」


 オレを止めようとしてくるイレーナを制止させる。

 ロンドゥナを疑うのは、もちろん本意ではない。でも少しでも可能性がある限り全て潰していく必要がある。


「いやはや、ここまでとは…。私はこの街には関係ない、むしろ巻き込まれた気さえしている」


「…」


 オレは何も言わず彼女を確かめるように、その美しい瞳をまっすぐに見つめる。


 ─どのくらいの時間そうしていただろう。


 オレは彼女を信頼することにした。

 もちろん、全ての疑いを晴らすことは出来ていないが、オレは自分の直感を信じている。

 特にこの世界に来てからは、本当に世界が自分中心に回っているのではないと勘違いしてしまうくらいには、全てが上手くいく気がしている。


「ロンドゥナ、疑って悪かった」


 オレは彼女に全力で誠意を見せるために、しっかりと頭を下げる。


「いや、このタイミングで手練れの監視が付いていたり、私が側に居れば疑うのは無理もない。信じてくれたことに感謝する」


「今はここに居るメンバーが、全員で力を合わせないといけない状況にあるかもしれないから、出来ればロンドゥナにも協力してもらいたいんだけど、みんなはどう思う?」


「はい、良い案だと思います」

「そうじゃな、昨日今日と会話して、ロンドゥナの人となりは理解しておる。ワシも信じてよいと考えている」


「レストも信じていいと思うぅ」

「わたしも同じです…」

「ボクもいいと思う!」

「余は信希さまに従うだけじゃ」


「みんな、信じてくれてありがとう。これだけの信用を得ているんだ、私もできる限り力になろう」


「オレからもみんなにお礼を言わせてくれ、本当にありがとう。監視のことを教えてくれなかったら、オレは気付くこともできなかったかもしれない」


 問題はここからだ、どういう作戦を立てれば、無事に全員がこの街から脱出できるかを目的にしよう。


「まず、オレとの行動を見られていない人は誰だろう。ロンドゥナとミィズにシアンとポミナかな?」


「そうですね、ワタシとユリアとレストは昨日のうちに確認されていますね」


「だったらなるべくバレていないメンバーを上手く使えるようにしたいな…」

「お出かけは無しぃ…?」


 ぐぬぬ…。シアンとの約束が…。


「少し考えさせて?なるべくなら、オレもシアンたちとお出かけしたいからね」

「うん!わかった!」


「少し状況を整理してみるか。もしもだが、オレの心配している盗聴があった場合、既に何かしらのアクションがあってもいいんじゃないか…?この話題が出たのが、昨日のイレーナとの買い物が終わってからだ。そして、その後にオレがもう一度出かけた時にイレーナたちが部屋で会話しているのを聞かれている可能性は薄い。今のところ確認できている監視者は一人だけで、複数人が探っている様子はない。そして、監視者が一人だけだった場合に、最初に気付かれる可能性が最も高いのが昨晩ということになるのか。これも盗聴があれば、という話。で、それを伝えるのは女性陣が眠っている間…。そして、向こうの監視がバレていると伝わっているのであれば、あんなに堂々と監視する理由があまりない。メリットよりデメリットの方が多く感じるな。だけど、バレていないと思って行動するもの危険度が上がるし、どちらともを想定した作戦を立てたいところだな」


「信希って何者なんでしょう…」

「確かにの、だがこうなってしまってはしばらく止めることはできんじゃろうな」


「まずは立案Ⅰとして、今すぐにこの街を脱出する場合。身バレしていないメンバーで馬車を購入してもらい、オレたちと別に街から出てもらう。そして後から合流。馬車の購入自体は問題ないだろうが、どの馬車を購入するのかを選択できるのは、今のところイレーナが適任かもしれない。だとしたら、一度オレとイレーナで馬車を購入しに行った方が…、いや街を出るつもりだと悟らせるだけだな。手堅くいくのであれば、オレとシアンたちが買い物に出かけてる間にミィズ、ロンドゥナ、イレーナで馬車の購入に向かってもらうのがいいかもしれない。もし何かあっても、その戦力だったら対応できそうではある。そしてオレたちは残りの五名で行動する。

次に立案Ⅱを考えるなら、少し別の視点からでこの街から脱出を試みる場合。今、外に出たら必ず尾行されることになる。オレだけが別行動して、あとから合流…待てよ、そうなった場合オレの方に複数人ついてきてもらった方が違和感なく脱出することができるな。Ⅰ案よりも速度を優先させる場合はこっちだな。だがこれは何かを購入してから街を出るのが前提になっている。もちろん食料なんかを購入しておいた方が、その分安心して旅路を進めることができる。この案は最終手段だな、監視者にすでにこちらの情報がバレていて何かしらのアクションを受けた時の強攻策になる。

最後に立案Ⅲとして、この街に滞在する場合だ、しっかり準備して脱出することが可能なのか考えてみよう。監視者たちが何を目的でオレの監視をしているかによって大きく変わってきそうだ。まずオレがこの街を出ようとした場合に、尾行させる場合があるんだったら常に二人以上で監視しているはずだ。今の状況の場合、オレがどこにいるのかを知りたいだけの可能性もあるな…。そして、向こうのお偉いさん方で方針が決まり次第接触してくる。この説が一番濃厚な気がしてくるが、思い込みは危険だな。このバイアスに掛かって『油断したところを』ってのは十分考えられる。この状況でわざわざ不利な状況を作り出すのは好ましくないな…」


 これまでの出来事をもとに、少しだけ考えを整理してみたがどこかしらで問題が起きそうなものしか思いつかない。少しみんなの意見を聞いてみるか。


「みんなはどんな風に行動すれば安全だと思う?」


「今、信希が言っていたように、別々に行動して監視の対象を信希に向けておいて、バレていないメンバーで物資を揃えるのが無難かもしれませんね」


 …ん?言っていたように?


「ちょ、ちょっと待って!言っていたようにって?」

「気付いていないんですか?全部声に出ていましたよ?」


 な、なんてこった。

 完全に無意識だった、集中していたからか全部言葉にしていたなんて…。


「そ、そっか。その場合、馬車はどうなる?あった方が便利だよね」

「そうですね、ワタシが別行動すれば馬車もすぐに準備できるかと思います」


「だったら、オレとシアン、ポミナ、レスト、ユリアで行動しようか?」

「そうですね、それが良いかと思います」


「先にオレたちが宿を出て、少ししてから出発すればいいね。もしも、そっちにも監視が付いているようだったら、すぐに宿に引き返して?オレたちは買い物が終わり次第、一度ここに戻ってくるよ。居なかったら脱出に移る」

「はい、わかりました」


「それで、どうやって合流するかだけど…。宿代は払ってしまってるけど、このまま荷物を持ってこの街を出よう。お金よりもみんなのことを優先させる」

「うむ、それがよいかの」


「合流場所を決めたいけど、どうすれば分かりやすいかな?」

「北側門から出ましょう。南と東はワタシたちのことを知っている人が門番をしているかもしれませんから」


「なるほど、いいね。北門の外には目印になりそうな物はあるかな?」

「そうですね…」


「馬車を購入するのであれば、北門を道沿いに進み林の入り口で野営するのはどうだ?」

「なるほど、それは良いかもしれませんね。馬車自体が目印になりますね」


「うん、それで行こう。じゃあ次に、どちらかに何か不測の事態が起こって合流できなかった場合も決めておこう」


「信希はとても先まで考えているんですね…」

「当然だ、この中の誰かに何かあったらオレは絶対に後悔するからな。万全で望む」


「合流できなかったらとはどういうことじゃ?」

「ん-そうだな。例えばオレの方に奴ら接触があったとして、身動きが取れなくなった時にそっちがどういう行動をとるかってことだね」


「なるほど、それは大切じゃの」

「うん、まずはオレたちが上手く脱出出来て、そっちに問題が出た場合はこっちの安全を確認してみんなを残してオレは皆を助けに行く。逆にこっちが合流できなかった時は、下手に動かないで一晩待っていてほしい。夜の間にこっちは脱出できるようにしてみる。朝になっても合流できなかったら、かなり不味い状況になっていると考えてくれていい。その時の判断は任せようかな…?」


「はい。信希が突破できないのに、ワタシたちでは何かできるとも思えませんけど…。その時はかなり大変な状況になっていると判断します」

「うむ、信希。ワシも良い案だと思うそれで行こう」

「信希はすごいな、策略家のようだな。私ら竜族の長たちでもそこまで頭の切れるものは居ないな」


「いや、買い被りすぎだよ。これでもまだ不安要素を取り除けていないんだ。不測の事態が起こった時に、オレの力でどうにもならないことへの対処ができない。時間が足りないんだ」

「ふむ。あちらもじゃろうが、速度を重視するならばしょうがないのう」


「よし、他に何か確認しておきたいことはあるかな?」

「いえ、大丈夫だと思います」

「だな、良い感じじゃと思う」

「それで行こう」

「余も全力で挑みます故」


「難しいけど、ボクは信希について行くの!」

「レストもぉー」

「が、頑張りますっ」


「あ、イレーナ。馬車の代金と物資は金貨三枚くらいあれば足りる?」

「そうですね、余裕すぎると思います」

「ん、じゃあこれ」


 オレはイレーナに金貨を渡し、脱出計画の行動に移していく─。


最後までお読みいただきありがとうございます!

今日から1話ずつの投稿になりそうです(汗)


これからも頑張っていきますので、応援の程よろしくお願いいたします。

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