第百二十六話 いつかの
「なっ!?ちょ、み、みんな来たの…?」
「「お邪魔しまーす」」
今晩尋ねてきたのはイレーナだけだと思ったが、何やら全員でオレの部屋に押し寄せてきた…。
ど、どうしよう…。一体何が目的なんだ…?
「レストが一番乗りっ!」
「ずるーい!」
そう言いながら、次々とオレの部屋に用意されている大きなベッドにみんなが上がってくる。
「ど、どうしたの?」
「信希がせっかく勇気をだして結婚をしてくれましたから、ワタシたちもなにかお返しをしようと考えたんです」
「お返し…」
「今日は信希の好きなケモミミ様を左右に抱えて眠ってもいいぞ?」
「流石に私たちも欲しいからな…。毎日というわけにはいかないが、今日は信希へのお礼だからな。ケモミミ様たちに譲るしかない」
これは喜んでもいいんだろうか…。
確かに、眠るときから起きる時までずっとケモミミが近くにあるのは、オレにとって一番のご褒美かもしれない…。
「い、いいの…?」
「うんっ!レストの耳触ってもいいよぉ?」
「ぼ、ボクも触っていいよ!」
「わ、わたしも…」
な、なんてこっちゃ…。これまで触ることを躊躇していたのがもったいないと思うくらいに、ケモミミ様たちが…。
「ふふふっ。やっぱり正解でしたね?」
「ああ。ケモミミ様の破壊力は抜群だな」
「余も何かしたいのじゃが、ケモミミ様には勝てないのじゃ…」
「みなさんステキですの。信希様には別々のアプローチがよろしいかと思いますの」
「なるほどなぁ。流石はメキオンだな、色々と教えてもらうことも多そうだ」
とんでもないご褒美を目の前にして、色々考えられなくなりそうになるオレを余所に、みんなは何か話しているみたいだ…。
「お、おおっ…」
「どおぉ?」
「ああ…。みんなのケモミミは素晴らしい…。シアンのケモミミは本当にわんこみたいだ。毛量が少ないからか、少しだけひんやりとしているのも魅力の一つだな。しかしながらしっかりと、もふもふ感はある。それに加えて綺麗な毛並みだ、これが美しいというにふさわしいと言っても過言ではないだろう…。これまで、触ることなんて恐れ多くて出来ないのは、やはり正解だったのかもしれない…。以前触らせてもらったイレーナのケモミミと比べても…いや、比べるのはおかしいか。それぞれの良さがある。これは比べるべきではない…。そうシアン様のケモミミを触り気付いたことがある。それは毛の細さにある…。わんちゃんの毛並みというのはどちらかと言えば太目でしっかりとしたものが多いイメージだったが、シアン様の毛並みは細くて柔らかくまさに女性といった感じで、これが獣人の特徴とでも言えばいいだろうか…」
「信希喜んでるのっ!」
「シアンさん…?信希の触り方は大丈夫ですか…?」
「うんっ!ちょっとくすぐったいけど、とっても優しく触ってるのが分かるっ!」
「ねぇねぇ、レストもぉ!」
「な、なんということだ…。シアン様のケモミミだけならず、引き続きレスト様のケモミミも触ることが出来るだなんて…。ここは天国か?……は?これがレスト様のケモミミか…。イレーナ様のケモミミは柔らかくてふわふわな魅力あふれるケモミミだった。今しがた触ったシアン様のケモミミはしっかりとした質感で、毛並みのせいかツルツルとしたケモミミだった。だが、レスト様のケモミミも二人同様に全くの別物だ…。なんというか…そう、例えるならこれはお餅だな。もにゅもにゅしている、イレーナ様のケモミミとは違った柔らかさで柔軟さと言えばしっくりくるかもしれない。これは新たなるケモミミ様の誕生です。私がこれまで触ってきた動物たちの耳とはまるで違う…。毛量は多いですが、毛の長さは短く触った感触は『さらさら』といった感じです…。それからこれは思っていたのとは違った感想で、レスト様の耳はかなり温かいです。これはなんということでしょう…、少しだけひんやりしていたケモミミも最高でしたが、温かいケモミミというのもとても触り心地が良く違った良さがありますね…」
「うんっ。とっても上手ぅ…ちょっと気持ちいのぉ」
「ほ、本当ですか…?」
「イレーナお姉ちゃんは嫌だったの…?」
「あ、あれ…?」
「あの、まさき…わたしもお願いします…」
「な、なんということだ!こ、このまま…ポミナ様のケモミミまで触ることが出来るなんて…なんたる幸運か…。あ、ああ…やはり初めて見た時に感じたことは間違っていなかった…。ポミナ様のもりっとしているボリューミーなケモミミは、とても触り心地もいい…。とても肉厚でふわふわな毛並みと相まって、とてつもない破壊力です。これまで触らせてもらったケモミミは皆さん違っていて、それぞれの良さを爆発させていますが…私の一番の好みかもしれない…いや…でもだけど、他のケモミミ様と比べることもおこがましい。私の意見などどうでもいい…、全てのケモミミが可愛くて柔らかくてふにふにで自身の意思で動かすことが来ている…。私の求めていたケモミミの世界はこういうものだったのかもしれません…。つまり何が言いたいかと言えば、控えめに言っても最高だということです。元の世界の全てのことがどうでも良くなるほどにケモミミは最高だということ…」
「ふふっ、この信希は久しぶりに見ましたね」
「うん。とっても目がキラキラしてるのぉ」
「本当にケモミミ様?をお触りするだけで、こんなになってしまうなんて信じられないですの…」
「かっかっか。これが信希よな、どうしてワシも惹かれておるのか」
「信希さま?余たちも可愛がってほしいのじゃ」
「はえっ?」
最高のケモミミを前に、オレの意識は曖昧な物になっていた。
彼女たちの会話を余所に可愛いケモミミ様たちにがっついてしまった…。
「さ、流石にみんなをいきなりって言うのは…」
「いや…なのかの…?」
その目は止めてほしい…。明らかにしょんぼりした涙目でこちらを見つめてくるユリアに、オレの精神がぐらぐらと揺れているのが分かる。
「その…、信希?ワタシのケモミミは触らなくていいんですか…?」
「あ…あ…」
これはまずい。ただでさえ、今はみんなのケモミミを触って興奮状態にあるはずだ…。これ以上、彼女たちの魅力的な部分で迫ってこられたら…。
「これ以上はまずい…」
「ど、どうして…」
「皆が魅力的すぎて…。もう止まらなくなりそう…」
「良いんじゃないのかの?ここには信希さまが愛するもの、信希さまを愛するものしかおらぬのじゃ」
「そうですの。皆さまご一緒でも構いませんの」
「いやいやいやっ!やっぱりまずいって!」
主にオレがっ!こんなのを体験できるような人間じゃあないんだ!
「かっかっか。流石にこの人数はいきなり過ぎたかっ」
「はははっ、そうかもしれないな」
わ、笑い事じゃありません…。
「まぁ、今日は一緒に寝るだけにしておくか」
「そうですね」
「そうなりますと、信希様のお隣が…」
「ここは、信希に教えてもらったじゃんけんだな?」
「ええ…。勝った順番に信希の隣を獲得できます」
「あ…あれぇ…?」
オレの意見は全く聞く気もないみたいだ…。もしかして、オレが結婚を切り出したことで、これまで皆がしたかったことを手助けしてることに…?いや、流石に考えすぎだ。自分に魅力があるなんてそこまで自惚れていない。先ほど彼女たちもお礼だと言っていたじゃないか…。
「やったあぁ!ボクがとなりだよっ!」
「あ、ああ…」
シアンはオレの腕にしがみ付いて、これでもかと喜んでいる…。
「ふっふっふ。オセロでは負けたが運は良いのじゃ」
ユリアも随分と嬉しいみたいだ…。
「理性を保つ自信がないんですが…」
「余相手になら、なにも我慢する必要は無いのじゃ」
耳元でそう囁かれて、背筋を何かに触られたような感覚を覚える。
彼女の方を向くと少しだけいたずらっぽく笑い、触れるだけのキスをしてくる。
「あ、ああ…」
「早く慣れるように、余も何か考えておくのじゃ」
聞かなかったことにしておこう…。
その夜は、これと言ってそれ以上のことが起きるわけではなかったが、これだけの女性に囲まれて寝るなんてもちろん初めてで…、イレーナやユリア、シアンにミィズが隣に居た時は眠れたのに、今日ばかりは寝ることが出来なかった…。
──。
昨日は投稿が空いてしまい申し訳ないです。
もう少しだけ頑張ります。よろしくお願いします。