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第百二十三話 みんなと

 転移先は新しく作った家の入り口付近だ。


「ただいまぁ」

「ただまぁ…」


 オレたちはかなりの疲労を感じながら戻ってきた。


「おかえりなさい」


 奥からぱたぱたっと音がするとイレーナが出迎えてくれた。


「戻ったぞ」

「信希は…大丈夫でしたか?」


「ああ。孤児院には顔も出していないからな。外から確認しただけで十分だった」

「なるほどなるほど」


「孤児院の子供たちが、オレの想像しているよりも多かったから家具や着るものを匿名で贈ってきたよ」

「はい。それくらいが良いかもしれませんね」


「おなかすいたぁーつかれたぁー…」


 レストはそう言いながら、力尽きそうになりながらリビングの方に歩いて行く。


「ふふふっ。思ったよりも大変だったみたいですね?」

「そうだな…。とりあえず家畜たちをケージに入れてくるよ」


「ご飯の準備が出来ているので、すぐに戻って来てください」

「おお、それはありがたい。すぐに戻ってくる」


 そしてオレは一人で、昨日と今日でミィズ達が作ってくれた、厩舎と繋がっている家畜用の小屋へ数匹の家畜たちをいれてあげた。


 ──。


「今日はこのままお風呂に入って寝るよ」

「レストもぉ…」


 イレーナが、オレたちは疲れて帰ってくるだろうと予想していたのか、準備してくれていた食事にすぐありつけたおかげで今日は早く休めそうだった。


「ひとまずはこれでゆっくりできそうですし、明日はゆっくりしましょう?」

「ああ、そうだね」


 イレーナの言葉で、イダンカに着いてから色々と行動していたせいで、休めていなかったことを思い出した。


「じゃあ、みんなも遅くならないように休んでね?」

「「はーい」」


 彼女たちはゲームや雑談に花を咲かせていて、まだまだ眠らないのだろうと感じた。


 ──。


 久しぶりにこれだけゆっくりと休んでいる気がする。

 静かな部屋で目覚めて、重たい体を起き上がらせて凝り固まった体を動かしながら、今日はようやくゆっくりできそうだと思い出す。


「まぁ、洗面とかは普通にしよう…」


 別に休日だからといってずっと眠っているつもりは無い。

 とりあえずは洗面を済ませて、朝食をどうするかを考えてみよう。


「おはようございます」


 部屋の扉を開けて洗面所へ向かおうと思ったときに、イレーナも丁度起きてきたみたいでこれから身支度を整えるみたいだった。


「ああ、おはよう」

「ゆっくり休めましたか?」


「うん、随分長く寝てたような気がする」


 何度も体を伸ばしているからか、どんどんと意識が覚醒していく。


「顔を洗ってきますね」

「オレも同じく」


 そう言い合うと同時にそれぞれの洗面所へ向かっていく。


 ──。


「朝食はどうしますか?」

「普通に何か作ろうか」


 新しい家になってから、馬車には付けることが出来なかった窓のおかげで、部屋の中全体が随分と明るく感じる。


「なんだか、窓があるだけで別の家みたいですね」

「そうだね。前よりも落ち着く感じだ」


 二人でどんな食事を準備するか話すこともなく、それぞれが食材を取り出していく。


「信希はそれが食べたいんですか?」

「イレーナはパンが好きだよね」


「そうですね…。いつも食べていましたし」

「どっちも相性がよさそうだから、こっちの肉は軽く焼くね」


「はい。スープの準備をします」


 こうして二人で食事の準備をするのも、随分となれてしまったように思う。

 流石にこれだけの期間一緒に居れば、そういう間柄は築くことが出来るか…。


 今日の朝は、いつもより少しだけ遅かったように思う。

 そのせいか朝食の準備をしていると起きてくるシアンとは別に、他のみんなも続々と起きてきた。


「食事が終わったら、みんなに大切な話がある」

「話ですか?」

「ふむ?今ではダメなのか?」


「そうだね。またあとで…」

「「はーい」」


 少しだけ緊張感の生まれた朝食も終わり、みんなが席に着く。


「それで?話とはなんだ?」


 緊張しているオレにロンドゥナが問いかけてくる。

 少しでもリラックスできるように、大きく息を吸って心を決める。


「これをみんなに」


 アクセサリー店で昨日受け取ってきた、シンプルで美しい指輪をテーブルの上に差し出す。


「指輪…ですね…?」

「でもわたくしたちにでしたら一つ多いですの」


「オレは、みんなと結婚したいと思ってる。頼りないかもしれないけど、みんなのことを幸せにしたい」


「……」

「……」


 かなり覚悟してそう告げたのだが、こうも反応が無いと心配になってくる…。


「本当…ですか…?」

「ああ…。これだけみんなから好意を向けられているのに、いつまでも悩んでいられないと思った」


「信希。みんなと言ったが、全員と結婚してくれるのか…?」

「あれ?そういうつもりじゃなかったの…?」


 少しだけ自分の想像していた反応とは違っていることに、ふつふつと動揺し始める…。


「余は嬉しいのじゃ。もちろんお受けします。信希さま、これから末永くよろしくお願い申し上げます」

「ユリア!ズルいぞっ!」


「信希。ワタシもとても嬉しいです。これからも一緒に頑張っていきましょう」

「おいおい!イレーナまで!」


「信希様?わたくしもいいんですの…?」

「うーん…出来れば、メキオンが十八歳になってからの結婚が嬉しいんだけど…。それまでは婚約者ってことでいいかな…?」


「はいっ!よろしくお願いしますのっ」


 オレの告白に、喜んでくれている人。動揺している人。呆然としている人。本当に色々な反応を見れてうれしいが、ちゃんと返事を貰えてうれしい気持ちが込み上げてくる。


「この指輪は、オレの元居た世界で結婚を意味するとして、普段から身に付けるのが一般的なんだ。でも、みんなの指のサイズが分からなかったから、これはネックレスにしてみんなに渡そうと思うんだけど…いいかな?」

「「もちろん」」

「はい。それで構いません」


 そして、みんなが用意した指輪を受け取っていく。

 最後に自分の指輪を取り首から下げておく。


「ふはっー…緊張した…」

「ふふふっ、突然だったからビックリしました」

「余もこれだけ早く決めてくれるとは思っていなかったのじゃ」


「ま、信希!これからよろしく頼む!」

「こちらこそ、よろしくね」


 こういう場面で喋ることのできる人とそうでない人が居るみたいだ。

 先ほどから、ケモミミ様たちはイレーナしか返事をしてくれていないが、彼女たちのケモミミや可愛らしいしっぽがゆらゆらと揺れているので、恐らくは喜んでくれているはずだ。

 それに、全員が指輪を受け取ってくれたことも本当に嬉しい。


「これから先も、多くの女性といることに慣れないかもしれないけど…、みんな、改めてよろしくお願いします」


 ──。


いつもありがとうございます。


よろしくお願いします。

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