第百二十二話 贈り物
「まずは何から買おうか」
「あー、家具屋に行ってもいいかな」
「何買うのぉ?」
王城にある孤児院を後にして、自分たちの目的を済ませるために街の中心の方へと進んでいる。
「いや、オレたちに必要な物じゃなくてね」
「なるほど、孤児院のためか」
「…?」
レストはオレの考えていることが分からなかったみたいだが、ロンドゥナはすぐに理解して周囲に家具屋が無いか探してくれている。
「ベッドに布団、椅子やテーブルといった感じかな」
「まぁ、すぐに必要な物はそのあたりだろうな」
とりあえずは、彼らから確認できない位置からの支援を続けて行こうと思えた状況だったので、オレも自分の出来ることで孤児たちを支えてあげることにした。
「一応服も確認しておくか」
「ふむ、服とは?」
「前にも似たことをしていただけだよ」
「なるほどな」
オレはたまたま通りに見つけた、以前孤児たちに贈る服を準備してくれる店へ入って行く。
「これはこれは、今日はいかがされましたか?」
「その後の調子はどうかと思ってね」
「ルーファー国王が直々にここへお伺いなられまして、感謝を告げるようにお願いされましてね」
「そうか。それはよかった」
なるほど、オレからの依頼はそれなりにこなしてくれているみたいだ。
「金の方はどうだろう?」
「そうですね…。当初お預かりしておりましたものが、服に換算すると残り二十着といったところでしょうか」
「分かった。追加で以前の倍置いて行くよ。これからもよろしく頼む」
「もちろんですとも!我らの商会を選んでいただき感謝いたします」
問題もないみたいだったので、オレは金だけ置いてすぐに店を後にした。
「本当に良かったのか?」
「金を預けてもってこと?大丈夫だよ、最初に脅し入れといたから」
「そうか?ならばいいのだが」
「あの人も思ったより世間体が大切みたいだからな」
「信希の言ってること難しいぃ」
「ははっ、ごめんね。オレの悪い癖かも」
そうしてオレたちは次の店へと向かっていく。
「他の店を聞かなくてもよかったのか?」
「ん-。聞いたら変に詮索されそうじゃない?」
「たしかにな…」
「それに、ゆっくり歩くのも悪くないでしょ?」
「うんっ!」
未だに両腕を満足に動かすことは出来ないが、この状況に慣れつつある自分が怖い…。
──。
しばらく街の中を歩いて、最初の目的にしていた家具を取り扱っている店を見つけることが出来た。
服の店同様に、店主と交渉して孤児院の支援に協力してくれることが決まった。
服よりも高価な物なので、それなりの金が必要になったがこれも自分が言い出したことへの責任だろう。
提供してもらえる数を大体服と合わせてお願いした。
「よし、次に行こうか」
「む?まだあるのか?それとも、必要なものを探しに行くか?」
「そうだ。あと一つだけオレの用事を済ませていいかな?」
「分かった、そちらへ行こう」
自分にとって決意の表れになったものが、受け取る準備が出来ているかも知れないと思ったので、以前にも訪れたことのあるアクセサリーの店へ向かうことにした。
「ここか?近かったな」
「また何か買うのぉ?」
「二人とも、少しだけここで待っててくれるか?」
「ふむ、暴走は…」
「流石にないって!」
「わかったわかった」
そう言い残し、オレは目的のものを受け取るために店に入って行く。
店主はオレの顔を覚えてくれたみたいで、既に準備が出来ていると駆け寄ってきた。
少し大きめの一つの箱に綺麗に並べられている指輪を見て、ここで購入してよかったなと思ったのと同時に、これが自分の決めた決意が形になるということかと少しだけ緊張してしまった。
受け渡しをすぐに終えて、オレは二人の元に戻る。
「終わったぁ?」
「ああ。次に行こう」
これでオレがイダンカに来た目的は大体達成された。
後は新居に必要なものを考えて集めて行こう。
「一旦休憩しながら必要なものを考える?」
「ん-、どうだろう…」
「昨日はゲーム大会のせいで、欲しいものの打ち合わせをしていなかったよね?」
「確かに…」
「信希ぃ、カフェならあそこにあるのぉ」
レストの言葉に連れられるように、オレたちはカフェに入り新居に必要なものを相談することにした。
「まずは野菜類は必要だよね」
「そうだな…。根菜類、葉物類、果実類といったところか」
「あとは卵もっ!」
「そうだね。鶏みたいな家畜はこの世界にも居るのかな…」
「鶏?」
「雌が毎朝卵を産んでくれる家畜なんだけどね。こっちにも居たらそういうのがいいんじゃないかと思って」
「なるほど、名前は違うが卵を産む家畜は何種類かいたと思うぞ。大きさを考えて購入しよう」
「分かった。それに餌や肥料もだよね」
「そうだな。水は近くに川があったから問題ないし…」
「果物もほしい!」
「果樹か…あるかなぁ?あったら一緒に買っていこう」
大体必要な物は決まったみたいだ。
──。
沢山の種類を探しながら街の中を歩くのは結構大変だった。
居空間収納のおかげで、重たいものを持っているわけでもないのにオレの感じている疲労は結構なものになっていた。
いや、これはこの街に入ってからほとんど離れてくれない彼女たちのせいだろうか…。
「なんとか集まったな…」
「ああ。結構大変だったな?もう夕方も近いようだ」
「レスト疲れちゃったぁ…」
彼女たちもオレと同じようだ。
レストは最初の元気はどこへやらといった感じで、しっかりと腕には捕まっているもののぐったりとしている。
「もう忘れ物は無いかな…」
「まぁ、もしあったとしてもまた来ればよいだろう」
「そうだね、今日は帰ろうか」
「「はーい」」
そうして、来た時と反対の門から街の外へと出る。
流石に街の中で転移の魔法具を発動するわけにもいかないからな…。
門番の男たちに「こんな時間から出て大丈夫か」と心配されたが、まぁ問題ないので無理やり出してもらった。
街から少し離れたところまで歩き、転移の魔法具を使っていく。
──。
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