第百五話 デート
これまで色々してくれていたけど、ユフィのことを信用できなくなってルーファー王のもとに戻した。
そのままルーファーとユフィを客間に残して、オレはイレーナを引き連れて王城を後にした。
「よ、よかったんですか?あんな言い方をして…」
「ん-。下手に出すぎると良くないかなって思ったんだ」
とりあえず、宿に戻るために街の中を二人で歩きながら、先ほどのことを説明していく。
「ヨーファさんとカフィンさんに何かされてしまうのでは…」
「一応二人に渡している魔法具に、オレが駆け付けるまでの時間を稼ぐための魔法を発動させているから平気だと思う」
「そうだったんですね…」
イレーナの明らかにホッとした様子に、いたらない心配をさせたなと感じてしまう。
「ごめんね、あらかじめ言っておけば良かったんだけど、ユフィの事があったからなるべく言わないようにしていたんだ」
「それなら納得です…。ユフィーナさんのことはどうして信用できなかったんですか…?」
「ん-…。強いて言うなら直感かな?理由を説明するのは難しいかもしれない」
「なるほど…?ワタシたちとは違うんですか?」
「あー、そう言われるとメキオンの時に似ているよね」
「そうですね。メキオンさんは良くてユフィーナさんはダメなんですね?」
「本心かな…?二人の違いと言えばそれくらいしか説明できない」
「本心ですか?」
「うん、メキオンの言葉は本心だと思う。ユフィは、まだ何か隠してそうな感じがしたって言えばいいか…」
「ちょっと難しいです…」
オレはイレーナと見つめ合い、説明できないし聞き出すこともできそうにないと、困ったように笑い合った。
少しだけ宿に近づきながら、これからの事を少し考えていると思い浮かんだことがある。
「なぁイレーナ?宿の場所を変えてからデートしないか?」
「デートですか?いいですけど…」
「よし、決まりね。数日かけて、みんなともしようと思ってるんだけど大丈夫だよね?」
「はい、もちろんです。以前に言っていたように、みなさんとお近づきになる作戦ですね?」
「それそれ」
オセロの一件で有耶無耶になりつつあったが、せっかく街の中に居るわけだし、まだみんなのことを知れてないのも事実。
「宿の場所を変える必要がありますかね…?流石に手を出してくることは無いと思いますけど…」
「まぁね、でもつけ回されるのも面倒だから一応ね」
正直、ユフィたちの隠密レベルだったら、オレたちを見つけるのは造作もないだろう。それにオレからバレることもなく追跡することもできるだろう。
「ローフリングの時のように、街を出なくてもいいんでしょうか…」
「ああ、それなら問題ないよ。今日の夜にでも、街の外周に転移できるよにしておくから。何かあればすぐに脱出できるようにしておくよ」
我ながら良いアイディアだと思う。
「なるほど…考えもしませんでした…」
「それに、オレに何かすれば自分たちが危険になるのは承知しているだろうしな。貴族を見せしめにしたのは正解だったかもね」
若干だが、イレーナから化け物を見る目で見られているような感じがする…。
話に集中している間に、もう宿に到着していた。
「店主には話しておかないでもいいだろう」
「お金は払っていますし、問題ないと思います」
かなり非常識かもしれないけど、もしもユフィたちがこの宿を尋ねてくることを考えると『出て行った』という情報も与えたくないと思ったので、ここは何も言わずに立ち去ることにした。
馬車の中からは動き始めたことは分からないので、みんなには言わずに馬車を移動させていく。
「どこか近くにいい所があるかな」
「方向的に、ここから王城を見て左右のどちらかがいいでしょうね」
「ん、じゃあ右側の方へ行ってみようか」
宿自体はすぐに見つけることが出来た。
この宿は、厩舎と馬車の停車場が外からは見えないようになっていたので、今のオレにとっては運が良かったと言える。
「じゃあ、このまま出かけよう?」
「はいっ」
先ほどよりも元気になったのかと思わせるくらいに、イレーナのテンションが上がっているように感じる。
たたたっと駆け寄ってきて、オレの腕にしがみ付いてくる彼女に、ある程度慣れてきてはいるがドキドキしてしまう。
「まずは魔法具用の水晶から補充してもいいかな」
「はい大丈夫です。もう無くなりそうですか?」
「ああ、ヨーファとカフィンのためにも使ったしな。ルーファーにも渡したし」
「それもそうですね。確かあっちでしたよね」
そうしてオレたちは、これからの事なんかを話しながら久しぶりのデートを楽しんだ。
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