第百四話 返還
ここ数日と同じように、夕食を食べみんなで遊び眠る。
いつも通りだけど、明日にはヨーファとカフィンは孤児院に行ってしまうことになる。
「なんだかんだ、一番寂しがってるのはオレかもしれないな」
「どうしたんですか…?」
オレの隣には、すやすやと眠っているカフィンと反対にはイレーナがいる。
彼女がまだ起きていることに気付かず、つい声に出てしまっていたみたいだ。
「ああ…、二人と別れるのは寂しいなって」
「信希なら会いに来るのも簡単ですよ?」
「そうだね、二人ともいい子だから一緒に居れたらいいなって」
「定住を決めれば、お二人を招くこともできるかもしれませんね」
イレーナの言う通りだ。
元をたどればオレたちが旅を続けることが前提で、この街に孤児院を作り二人を助けるのが目的だった。
これから先の旅は、神様たちが準備してくれる魔法具で簡単に移動することが出来るようになるから、早く定住地を決めてしまった方がいいのかもしれない。
「イレーナはどんなところに住みたい?」
「ん-…、特にないかもしれません。信希と一緒ならどこでもいいです」
「……」
なんか、めっちゃ嬉しいことを言われてないか?
寝る前だからか、いつもと少しだけ話し方が違うのも新鮮な感じ…。
「早く見つかるといいですね」
「ああ、そうだね」
そんな会話をしているうちに、いつの間にか眠っていた。
──。
翌朝、朝食を済ませて二人を送る準備をする。
「二人とも忘れ物は無い?」
「うんっ!」
「大丈夫!」
「皆さんは行きますか?」
「大勢で行く必要もないじゃろ。変に目立つしの?既に幾名かの孤児を城へ連れてきていたのじゃ」
「そうか、それならワシも留守番していよう」
そう言いつつ二人はオセロをしている…。説得力が…。
「確かにな、あんまり目立ちすぎるのも良くないか」
「そうですね」
結局二人を送っていくのは、オレとイレーナに加えてユフィだけで行くことになった。
ユフィが馬車を用意してくれていたけど、ユリアのアドバイス通りに目立たないことを優先して歩いて行くことにした。
──。
「では、お二人を責任もって預からせていただきます」
「よろしくお願いします。二人とも、いい子にしてるんだよ?そうしたら、オレもまた会いに来るよ」
「うん!」
「絶対だよ!?」
少しだけ泣きそうになっている子供たちを抱きしめる。
「頑張れよ。ツラくなったらオレに言ってくれ」
「「うんっ」」
必死に堪えている二人に、ここで自分が泣くわけにはいかないと言い聞かせ、励ましの言葉を伝える。
「お二人ともお元気で、信希が会いに来るときはワタシも一緒に来ますね」
「うんっ!絶対だよ!?」
「ええ、もちろんです」
そうして二人は孤児院の係と思われる人物と一緒に、先日オレが作った建物の中に入って行き、ここで別れることになった。
「なぁ、ユフィ。少しお願いがあるんだけど、王様に会えないかな?」
「すぐに確認してまいります。客間をご用意しますので、そちらでお待ちいただければ」
「わかった。行こうか」
二人と別れてすぐだが、ここに来たオレの目的は他にもある。
ユフィに案内されるまま、何度か訪れた客間に通された。
いつもよりは時間が掛かってはいたが、お茶とお菓子も出してくれる。
「信希?他にも用事があるんですか?」
「ああ、とても大切なことだよ」
「…?」
「ユフィのことだ。彼女をこのまま連れて行くわけにはいかないと思ってるから、ここに戻ってもらおうと思って」
いつかは解決しないといけないと思っていたことでもある。
「理由を窺ってもいいですか…?」
「単純に信頼できないってことと、彼女が何を考えているのかオレには理解できないんだ」
「なるほど…」
イレーナは何かを思案しているのか、お茶を飲みながら動きが固まったりしている。
「気になることでもあるの?」
「い、いやっ…信希でもそんなことを言うんだなと思って…」
「ははっ、女性なら誰でもいいと思ってた?」
「正直思ってます…」
「そんなことないよ。むしろ、オレは人付き合いが苦手なんだ。そんな中で生まれたみんなとの関係を大切にしたいと思ってるからね」
「そうですか…」
そんな話をしているとユフィが戻ってきた。
「信希様、ルーファー王はもうすぐ来ることが出来ます」
「それは助かる」
「少々お待ちください」
そうして十分ほど経過したころに、ルーファーは部屋に入ってきた。
「すみません、信希さん。お待たせしました」
「いやいや、突然呼び出してごめんね」
「構いませんよ。そして、用事というのは?」
「ユフィーナのことだよ。彼女をここに戻してもらおうと思ってね」
「なるほど、理由を窺ってもよろしいですか?」
「ん-、特に難しいこともないと思うけどな。単純にオレたちの中に一緒に居てもらうには信用が足りないといった感じだね」
「信用ですか…?」
「うん。詳しい話はユフィに聞いてみたらいいんじゃないかな。とにかく、あんたらのことを少し信頼できなくなったといったところだ」
「…そうですか……かしこまりました」
「うん、じゃあオレたちは帰るから」
ルーファーは自分の考えがオレに伝わっていることを察したのか、明らかに動揺している表情を浮かべ顔色が悪くなっていく。
「あ、あのっ!信希様っ──」
「いや、いろいろ言わなくていいよ。あんたには感謝もしてるからね。じゃあ行こうか、イレーナ」
「は、はいっ」
オレが怒っていると思ったのか、イレーナも少し動揺しているようだった。
当人のユフィーナは言葉を発さなかったが、オレの怒りを買って自分の信用がなくなっていることを理解したのか、その表情はいつもより曇っているように見えた。
──。
いつもありがとうございます!
昨日の朝早くに投稿しているつもりでいたのですが、投稿出来ていませんでした…(汗)
今日は2本投稿します。
お昼ごろに次話を投稿します。
これからは投稿されてるか確認しておきます!
これからもよろしくお願いします。